八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

全国のダムの維持管理(堆砂等)に関する会計検査院の発表

 かつて、ダム建設の主目的は水力発電や都市用水の供給でしたが、水力発電は国のエネルギー政策の主力ではなくなり、都市用水も供給過剰の状態に陥っており、最終的にダム建設の目的として残るのは洪水防止(治水)とされます。八ッ場ダムも治水を主目的の一つとしています。

 しかし、ダムには多くの問題があります。
 10月21日、会計検査院が全国の多くのダムにおいて、土砂流入が想定以上に多いために、想定した治水機能が発揮されていないことや、地震、停電などの緊急時の対応が疎かになっているダムがある、との調査結果を発表しました。
 ダムは水を貯める目的で建設されますが、ダムができると上流から必然的に土砂が流入し、歳月が経つにつれて土砂量は増大していきます。これに対して、土砂の浚渫、穴あきダムの建設、ダム下流に更なるダムを建設するなどの対策がとられてきましたが、抜本的な対策にはなりえておらず、これらの対策に付随して更に新たな問題が発生しているのが現状です。今後、全国各地に造られたダムが老朽化していきますので、堆砂の問題は防災上、財政上、これまで以上に深刻な問題として顕在化してゆくでしょう。

 八ッ場ダムは上流に浅間山、草津白根山というわが国有数の活火山がある場所に建設される予定です。火山性のもろい地質は堆砂の速度を速めます。また、土砂はダム上流部からたまっていきますが、八ッ場ダムの場合、ダムの上流端に長野原町の中心部があります。ダム湖畔に草津温泉の玄関口であるJR「長野原草津口駅」があり、さらに町役場も近い将来、ダム上流端に造られる予定です。
 八ッ場ダムは関連事業、建設事業に膨大なお金がかかるだけでなく、完成後の維持管理にも国交省の想定よりはるかに多くの予算が必要となりそうです。

「全国ダムの堆砂データ」と解説はこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/?p=8339
 
 会計検査院のホームページに調査結果が公表されています。
 http://www.jbaudit.go.jp/

●「ダムの維持管理について」 
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/26/pdf/261021_zenbun_03.pdf

 会計検査院が問題を指摘したダムの中には、たとえばダム貯水量全体の半分以上が土砂で埋まった北海道の二風谷ダムが含まれておらず、十分な調査とは言えないようですが、それでもこれまで注目されてこなかった多くの問題が指摘されています。

 (上記より一部抜粋します。)
 「河川法等に基づいて定められた操作規則等によれば、ダムの維持管理を行う者(以下「ダム管理者」という。)は、ダムの堤体及び基礎地盤の安全性等を評価する上で必要な漏水量、変形、揚圧力等(以下「漏水量等」という。)の計測及びダムの堤体、貯水池、ダムを操作するために必要な機械等に係る設備(以下「設備」という。)等を良好な状態に保持するために必要な点検を定期的に行うこととされている。そして、点検の結果、不具合等が生じていた場合は、修繕等を行うことになる。」
キャプチャ

「本院は、合規性、有効性等の観点から、ダムの維持管理に必要な計測、点検等は適切に行われているか、貯水池における堆砂への対策は適切に行われているか、ダムが緊急時に機能するよう体制が整備されているかなどに着眼して、昭和15年度から平成24年度までに建設された8地方整備局等管内の15事務所等が管理する29ダム(建設費計1兆2402億余円)及び21道府県が管理する182ダム(建設費計2兆6661億余円、国庫補助金等計1兆2487億余円)、計211ダムを対象として、上記の地方整備局等において、26年3月31日現在の貯水池における堆砂等の状況等に関する書類や現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。」
・・・(中略)・・・
「検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 漏水量等の計測、設備等の点検等の実施状況
 ダム管理者は、前記のとおり、操作規則等に基づき、漏水量等の計測や設備等の点検を行うこととなっている。
 しかし、9県が管理する25ダム(建設費計1914億余円、国庫補助金等計1017億余円)については、計測値に大きな変化が認められないことなどを理由として、一部の項目について計測が3年以上にわたり行われていなかった。
 また、3県が管理する5ダム(建設費計255億余円、国庫補助金等計125億余円)については、点検の結果、地震計等が故障していて使用できない事態が判明したにもかかわらず、修繕等が3年以上にわたり行われていなかった。

(2) 貯水池における堆砂等の状況等
ア 計画堆砂量を上回る堆砂の状況
 貯水池に計画堆砂量を上回って土砂が堆積すると、有効貯水容量のうち実際に利
用できる貯水容量が減少することに加えて、堆砂の状況によっては、貯水池の上流部に土砂が堆積することにより貯水池上流の河川等に影響を及ぼすおそれがある。
 そこで、貯水池における堆砂の状況についてみたところ、9府県が管理する20ダム(建設費計939億余円、国庫補助金等計429億余円)において、計画年数が経過していないにもかかわらず、堆砂量が既に計画堆砂量を上回っていた(表参照)。
 そして、これらのダムのうち、計画堆砂量に対する堆砂量の割合が200%以上300%未満となっているダムが4ダム、300%以上となっているダムが2ダムとなっていた。

イ 洪水調節容量内における堆砂の状況
 貯水池に流入する土砂は、計画堆砂量に達していなくても、洪水調節容量内に土砂が堆積した場合には、洪水調節容量のうち実際に利用できる貯水容量が減少して洪水時に本来貯留できる水量が貯留できなくなるため、堆砂の状況によっては、ダム下流の河川等に影響を及ぼすおそれがある。
 そこで、洪水調節容量内における堆砂の状況についてみたところ、9事務所等が管理する14ダム(建設費計6047億余円)、16道県が管理する92ダム(建設費計1兆2598億余円、国庫補助金等計5557億余円)において、洪水調節容量内に土砂が堆積していた(表参照)。
 また、3事務所等が管理する7ダム(建設費計2632億余円)、11道県が管理する48ダム(建設費計8372億余円、国庫補助金等計4364億余円)については、洪水調節容量内における堆砂量が算出されていないなどのため、洪水調節容量内における堆砂の状況が不明となっていた(表参照)。」
・・・(中略)・・・

(改善を必要とする事態)
 県が管理するダムにおいて計測、修繕等が3年以上にわたり行われていない事態、事務所等、道府県が管理するダムにおいて堆砂量が計画堆砂量を上回っていたり、洪水調節容量内に堆砂していたり、洪水調節容量内における堆砂の状況が不明となっていたり、設定貯水量について堆砂測量の結果を反映していなかったりする事態、道府県が管理するダムにおいて地震が発生した際にダム管理者にその情報が適時に通報されなかったり、予備発電設備について所要の連続運転可能時間が確保されているか明らかでなかったりする事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)
 このような事態が生じているのは、県においてダムの維持管理に必要な計測、修繕等を適切に行うことについての認識が欠けていること、事務所等、道府県において貯水池における堆砂への対策を適切に行うことについての検討が十分でないこと、道府県において緊急時にダムを機能させるための体制が整備されていないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置
 近年、突発的に起こる局地的な豪雨により全国的に洪水が多発しており、下流域における洪水による災害発生の防止を図るダムの維持管理はますます重要となってきている。
 ついては、貴省において、ダムの有する機能を長期にわたり有効に発揮させるために、ダムの維持管理が適切に行われるよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア ダムの維持管理に必要な計測を適切に行ったり、点検の結果、修繕等が必要な設備等についてその重要度を考慮した上で適切な優先順位を設定するなどして修繕等を行ったりするよう、ダムの維持管理を行う道府県に対して周知すること
イ 堆砂量が既に計画堆砂量を著しく上回っている場合及び洪水調節容量内に堆砂している場合における対策等を行うことについて検討したり、洪水調節容量内における堆砂の状況を把握したり、堆砂測量の結果を反映した貯水位に対応する貯水量の情報を制御処理設備に設定することを検討したりするよう、ダムの維持管理を行う事務所等及び道府県に対して周知すること

ウ ダム地点における地震が発生した際に速やかに臨時点検が行える体制を整備するよう、また、予備発電設備について燃料補給の難易度等の現状等を踏まえて所要の連続運転可能時間が確保されているか検討するよう、ダムの維持管理を行う道府県に対して周知すること

—転載終わり—

 これに対して、太田昭宏国交大臣が反論したと報道されています。

◆2014年10月21日 朝日新聞
 http://www.asahi.com/articles/ASGBP3DTWGBPUTIL00H.html
ーダムの土砂「排除している」国交相、機能低下指摘に反論ー

 国土交通省所管のダム約210カ所を会計検査院が調べたところ、100カ所余りで土砂がたまり洪水を防ぐ機能が弱まっていたとされる問題で、太田昭宏国土交通相は21日、「土砂の排除は常にやっている」と述べ、洪水を防ぐ機能は損なわれていないと反論した。

 太田国交相は「検査院から現時点で正式な文書は届いていない」としたうえで、ダムは100年でたまる土砂の量を予想して計画・建設しているが、洪水を防ぐ層にも砂がたまることがあることは認めた。

 その一方、「浚渫(しゅんせつ)や迂回(うかい)トンネル建設などで(土砂を)できるだけ早く取り除いている」とした。

—転載終わり—

 太田大臣による反論は、21日の記者会見での質疑の中で行われたものと思われますが、質疑の内容はまだ国交省ホームページには掲載されていません。
 http://www.mlit.go.jp/page/daijin141021.html

会計検査院の調査については、10月16日付の朝日新聞、読売新聞等が取り上げられたことを以下のページでお伝えしました。
 https://yamba-net.org/wp/?p=9121

 会計検査院の調査結果の発表について、昨日、今日と多くのメディアが報道しました。関連記事を転載します。

◆2014年10月21日 NHK
 http://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20141021/5480741.html

ーダムや調節池 機能低下を指摘 ー

 洪水を防ぐために整備されたダムや調節池について会計検査院が調べたところ、河川から流れ込んだ土砂が想定を超えて堆積するなどして、20か所のダムと76か所の調節池で、洪水を防ぐ機能が低下しているおそれがあることがわかりました。

 会計検査院は、国土交通省に改善を求めました。
 会計検査院は、洪水対策として国土交通省が全国に整備しているダムや調節池の状況を調べました。
 その結果、ダムは河川から流れ込む土砂の量を100年分推計して設計されていますが、実際には、長野県の松川ダムなど20か所のダムで、流入した土砂が想定を超えてダムの底に堆積し、洪水を防ぐ機能が低下しているおそれがあることがわかりました。

 松川ダムは、建設から40年近くで、想定の1.4倍の土砂が堆積したということです。
 一方、76か所の調節池では、堤防の高さのチェックなど具体的な点検の方法を定めた管理マニュアルが作成されておらず、雨水をためる機能が維持されているかどうか十分に確認できていないということです。

 高知県の仁淀川に整備された岡花調節池では、堤防の高さが計画よりも最大で1.5メートル低くなっていて、想定した7割ほどの雨水しかためられない状態になっていました。

 会計検査院は、洪水を防ぐ機能が低下しているダムや調節池について改善を急ぐよう国土交通省に求めました。

◆2014年10月21日 時事通信
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201410/2014102100650&g=soc 
ーダム200カ所で管理不備=土砂堆積、治水機能低下も-検査院ー

 洪水を防ぐため建設された治水ダムのうち、全国200カ所以上で適切な管理が行われず、大雨に備えた貯水容量が想定より不足するなどしていることが21日、会計検査院の調査で分かった。
 局地的豪雨や台風に対処できない恐れがあるとして、検査院は国土交通省に適切な対応を求めた。

 検査院は全国約500の治水ダムのうち、2012年度までに建設され国交省と21道府県が管理する211カ所を調べた。

 検査院によると、ダム建設では100年間で底部にたまる土砂の量を想定して貯水容量などを決めるが、20のダムは完成後20~60年で堆積量が計画を上回り、容量が減少。想定の2倍以上の土砂が堆積しているダムも6カ所あった。

 また堆積量が想定内でも、106カ所ではダムの斜面など底部以外に土砂がたまり、洪水に備え空けておくべき容量が不足。多い所では容量が約2割減少していた。55カ所では堆積量を算出しておらず、容量の減少を反映せず放水や貯水の計画を立てていたダムも152カ所あった。
 このほか5カ所では地震計などの故障を放置。通報装置や非常用電源など災害への備えが不十分なダムも多数あった。

 維持管理費の不足などが背景にあるとみられ、何らかの問題があるダムは約95%の201カ所に上った。検査院は「4兆円近い建設費が掛かっており、日常から適切に管理すべきだ」と指摘した。
 国交省は「内容を精査していないが、一般的には設計には余裕を持たせてあり、直ちに機能に支障が生じることはない」としている。

◆2014年10月21日 毎日新聞
 http://mainichi.jp/select/news/20141022k0000m040068000c.html
ーダム機能低下:106カ所で水門より高くまで土砂堆積ー

 全国106のダムで想定を超えて土砂が堆積(たいせき)し、洪水を防ぐ機能が低下していることが会計検査院の調べで21日、分かった。検査院は、土砂を取り除くなどの対策を取るよう国土交通省に求めた。
 ダムは100年間に河川から流れ込む土砂量を予測して設計。底面から水門付近までが飲み水などに使う利水用の層、それ以上が洪水を防ぐための層になっており、大雨が降ると水門より上部まで貯水して洪水を防ぐ。

 こうした治水機能を持つダムは全国に543あり、検査院は1940?2012年度に建設された211ダムの土砂堆積状況を調べた。
 その結果、国交省管理の14ダムと16道県管理の92ダムの計106ダムで、土砂が水門の高さよりも高い位置まで堆積し、洪水を防ぐ機能が低下していることが分かった。

 さらに、これらの一部を含む9府県の20ダムで、完成から13?63年しか経過していないのに、既に100年分の予測量を上回る土砂が堆積。このうち4府県の6ダムで予測量の2倍を超えていた。

 106ダムのうちの一つで、宮崎県中央部にある渡川(どがわ)ダムでは、運用を開始した56年に予測量(197万立方メートル)を超え、現在は4.4倍の859万立方メートルが堆積している。

 県は今年1?2月、4000万円をかけ約1万5000立方メートルの土砂を取り除いており、県河川課は「近年大雨の頻度が高まり、土砂の流入量が増えている。すべて除去するにはどれぐらいの時間と費用がかかるか分からない」と話す。

 検査院は今回、付帯設備の整備状況も調べた。その結果、長野県の湯川ダムで地震計が07年9月に故障したままになっているなど、3県の5ダムで不備が見つかった。

 国交省河川環境課は「堆積土砂についてはある程度余裕を持って設計しており、ただちに危険性があるとは考えていないが、必要に応じて対策を講じる」としている。【武内亮、戸上文恵】

 ◇洪水を防ぐ機能が低下している106ダム(数字はダム数、カッコ内はダム名)
 【国交省管理分】
 14(大分県の耶馬渓など)

 【自治体管理分】

 北海道11(有明など)

 青森1(遠部<とおべ>)

 栃木5(三河沢など)

 神奈川2(城山など)

 新潟16(三面<みおもて>など)

 石川5(我谷<わがたに>など)

 長野12(古谷<こや>など)

 岐阜4(阿多岐など)

 静岡1(太田川)

 和歌山2(二川<ふたがわ>など)

◆2014年10月22日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO78712200R21C14A0CR8000/
ーダム106カ所の治水低下 会計検査院調べ、土砂流入で貯水量減ー

 治水機能を持つ全国のダムを会計検査院が調べたところ、23道県の106カ所で流入した土砂が堆積し、洪水に備え空けておくべき貯水容量が減っていることが21日、分かった。局地的豪雨などにより河川が氾濫する恐れもあり、検査院は所管する国土交通省に土砂を取り除くなどの対策を講じるよう求めた。

 国交省などによると、治水機能を持つダムは全国約550カ所。ダムには水だけではなく、土砂も流入するため、稼働から100年後の土砂の堆積量を予測して設計されている。

 検査院は1940年度から2012年度までに建設された211カ所のダムを抽出し、土砂の堆積状況などを調べた。

 ダムは土砂は底部にたまるとの前提で建設されるが、洪水時の調整に使う斜面上部など、底部以外に土砂がたまっているダムが106カ所に上ることが判明。洪水時に備えて空けておくべき貯水容量が不足するため、河川の氾濫など治水機能の低下が懸念されるという。

 また、完成から20~60年しか経過していないのに、当初の予測量を超えて土砂がたまっていたダムが20カ所あることも分かった。土砂が予測量の3倍以上に及んでいたケースもあった。20カ所のうち11カ所は、貯水容量不足の106カ所と重なっており、残る9カ所は、貯水容量自体に問題はなかったという。

 一方、ダムは河川法などに基づき少なくとも1年に1回、漏水量の計測や設備点検を行うことが必要だが、25カ所のダムで3年以上にわたり実施されていなかった。

 検査院は「近年、突発的な局地的豪雨による洪水が多発している。災害発生を防ぐには、ダムの適切な維持管理が欠かせない」と指摘する。

 これに対し、国交省は「ダムの容量には設計上、一定の余裕を持たせている。(堆積した土砂などが)直ちに影響を及ぼすことはないが、状況に応じて必要な対策をとりたい」としている。

◆2014年10月22日 上毛新聞 (共同通信配信、紙面記事は冒頭部分のみ)
 http://www.jomo-news.co.jp/ns/2014139090983743/news.html
ー群馬県3カ所ダム 治水力低下 土砂堆積、災害の恐れー

 大雨による洪水を防ぐため建設された全国のダムのうち本県を含む23道県に所在する106カ所で、上流の川から流れ込んだ土砂が堆積し、増水分をためる容量が減っていることが21日、会計検査院の調べで分かった。群馬県は国所管の藤原(みなかみ町)、相俣(同)、薗原(沼田市)の3ダム。治水機能が低下し、局地的な豪雨などの場合に下流域での災害につながる恐れもあり、検査院は国土交通省に土砂を取り除くなどの対策を求めた。

 検査院によると、国や都道府県はダム建設の際、100年間に流入する土砂の量を想定。その上で、工業や農業に使う利水用の容量と、大雨などによる増水分である「洪水調節容量」を確保している。豪雨などの影響で利水用の容量を超えた分が、洪水調節容量内にある水門に達すると、河川の状況を確認しながら水門を開けて下流に放流し、洪水を防ぐ仕組みになっている。

 検査院は今回、こうした機能を持つ全国約500カ所のダムのうち約200カ所について、土砂対策などが適切に行われているかといった観点で抽出調査した。その結果、国が管理する14ダムと16道府県管理の92のダムで、洪水調節容量内の、河川が流れ込む斜面上部に土砂が堆積している状況が判明。大雨の際に貯水できる量が減っていることが確認された。

 国交省は取材に「洪水調節容量内も、ある程度土砂が堆積してもいいように余裕を見込んでおり、ただちに問題があるとは考えていない。支障があれば取り除くなどの対策を取る」としている。

 
—転載終わり—

 以下は、ダムの堆砂対策について国交省の考えを紹介した建設通信新聞の記事です。米国では、抜本的な対策としてダム撤去が行われるようになってきており、その技術開発が重視されていますが、いまだに巨大ダム事業を建設し続けるわが国では、「ダム撤去」は脇に置き、堆砂対策を技術の進歩で補う道が模索されています。

◆2014年10月22日 建設通信新聞
  http://www.kensetsunews.com/?p=39310 
ー「ダム再生」技術を国際展開/国交省/貯水容量拡大、堆砂対策を高度化ー

【現場、地域特性に合う切り口で】
 ダムの建設に適した「サイト」の減少で既設ダムの機能維持・機能強化を目的にした「ダム再生」がより重要度を増している。国土交通省は、コストや工期、環境負荷を抑えながら、既設ダムを有効活用につなげる「ダム再生」を推進。

 日本が持つ先進技術である「ダム再生技術」の海外への展開も見据える。貯水容量の拡大や洪水調節能力の増強といった機能強化、堆砂対策の高度化を軸にした機能維持など「ダム再生」をキーワードに動向を追った。 =1面参照
(一面記事→「初弾10施設、年内にも公募/15年度から民間資格活用拡大/国交省」 http://www.kensetsunews.com/?p=39304

 近年、ゲリラ豪雨という言葉をよく耳にするようになった。8月に発生した広島市の豪雨災害を始め、近年の雨の降り方は確実に激しさを増している。こうした全国各地で頻発する水害防止にも寄与するインフラの1つがダムだ。

 激甚化が増している水害への対応に焦点を当てれば、洪水被害を軽減するダムの機能維持あるいは機能強化は重要課題。「機能維持」と「機能強化」を目的にしたダム再生への取り組みはより一層その重要性を増す。

 しかし、「ダム再生」と一口に言っても、その取り組み方策はさまざま。一品生産である構造物の特性から、現場の状況や地域特性などに合わせた多種多様な切り口がダム再生には存在する。

■機能強化
 一例が鹿児島県・鶴田ダムで工事が進む洪水調節機能の増強だ。

 この鶴田ダム再開発事業は、既存の放流管の下部に新たな放流管を増設、「死水容量」を吐きだすことで、貯水池内の水位を下げ、洪水調節容量を増大させるプロジェクト。既存ダムの水位を維持しながら、ダムの堤体に穴を開ける大水深施工技術は日本が持つ最先端の技術だという。

 これ以外にも堤体のかさ上げや既設ダムの直下(下流)にダムを再構築する「貯水容量の拡大」、下流側に向けて水路トンネルによる洪水吐を新設する「放流能力の拡大」も機能強化の代表的な方策になる。

■機能維持
 一方、機能維持の代表例となるのが洪水の際に流入・堆積していく土砂への対応だ。

 国交省がダム再生技術に位置付ける土砂バイパス・トンネルによる排砂抑制技術もその1つ。一般的な堆砂対策として知られる「浚渫」に比べて、トンネルによる排砂抑制技術は、貯水池から下流側へ、排砂用のトンネルをつなぎ、洪水時に貯水池にたまった土砂を下流へ運ぶ、効率的な対応策といえる。

 「堆砂対策はダムが抱える共通の問題意識」という声があるように土砂の堆積はダムの宿命。堆砂対策を始め、ダム再生の取り組みは既存インフラを「賢く使う」ことにもつながる。

 こうした「ダム再生」の方策はまだまだ緒についたばかり。抜本的な対応策として体系的に整理・確立されているとは言い難い。日本が世界に先んじて持つダム再生技術が本当の意味で確