八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム建設地 住民が無縁仏移転

 上毛新聞社会面に掲載されていた記事です。

◆2014年10月19日 上毛新聞 (ネット記事は紙面記事の冒頭のみ)
http://www.jomo-news.co.jp/ns/5914136794222218/news.html
ー代替地で安らかに 住民が無縁仏移転 八ツ場ダム建設地ー

 八ツ場ダム(長野原町)の建設地で、無縁仏を代替地に移す作業が進められている。水没地にあったり、道路などの建設地に位置して“引っ越し”を余儀なくされているためだ。

 ダム事業を進める国から頼まれて作業するのは、無縁仏が置かれた共有地を管理する地域住民ら。血縁関係のない墓石だが、水没する故郷を高台から望ませることが供養につながると、心を込めて取り組んでいる。

 「ダム完成後も地域見守って」
 ダム湖の完成後は右岸になる川原湯地区。山肌近くに造成された代替地内の共有地に、まだ新しい複数の墓石がある。一角には「有縁無縁」と記した石塔が建ち、周りを水没地などから移した無縁仏が囲む。
 「無縁だけど、何かの縁があって関わった。成仏してもらえれば」。同地区の区長を務める美才治章さん(67)は手を合わせた。

 同地区内の水没地などには、管理者や血縁者が分からない無縁仏が、把握できただけで81基あった。国がダム事業を進める中で確認した。81基があるのは同地区7カ所の共有地ということも判明し、国は費用を出すことを条件に、管理する同地区に移転を頼んだ。

 美才治さんら同地区の役員は4月、町内の寺の住職に相談。今月上旬、7カ所で「魂抜き」と呼ばれる儀式を執り行った。同地区の役員や住民、国の職員が集まり、読経の中で水や花を供え、一つずつ供養した。

 年内にも、移転した無縁仏が囲む石等の前で、「魂入れ」の儀式を営むことにしている。81基という数の多さから、まだ行き先が決まっていない無縁仏もあり、その安置場所を決めていく必要がある。
 美才治さんは「無縁仏といっても、この地域をずっと見守ってきてくれた。ダムの完成後もそうあってほしい」と話している。

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所によると、無縁仏は川原湯地区以外にも点在している。ただ、地区の共有地以外でも、民有地にありながら血縁関係が特定できないケースなどがあり、さまざまな手続きで移転が進められている。
 八ッ場ダムは計画浮上から62年。今月16日から、本体工事を請け負った業者が初めての現場での作業となる測量を始めている。