八ッ場ダムの水没予定地である長野原町の川原湯地区には、カザグルマの自生地があります。
カザグルマは、園芸植物として人気のあるクレマチスの原種です。環境省レッドデータでは、カザグルマは絶滅危惧Ⅱ類とされており、群馬県では絶滅危惧ⅠA類に分類されています。
群馬県公式ホームページ 植物レッドリストより
http://www.pref.gunma.jp/04/e2300022.html
新緑輝くこの季節、川原湯の自生地では毎年カザグルマが開花します。(昨年5月撮影)
川原湯で生まれ育った豊田政子さんは、民宿雷五郎の女将さんとして観光客に親しまれてきました。かざぐるまの自生地は、今はもう解体されてなくなった民宿の近くにあり、政子さんにかざぐるまを見せてもらった花好きの人も少なくありませんでした。
ひとりゆく雑木林は群生の かざぐるまいま たおやかに咲く 豊田政子
「最初に見た時は、白色の普通のカザグルマで驚きもしなかった。ところがそのうち、うす紫色の花が咲きだし目を見張った。雑木林の枝にからまって伸び、うす紫色のカザグルマが点々と咲きだしたら、あまりの美しさにその場へ座りこんでしまった。・・・」
(「あがつまの花」 安原修次 ほおずき書房)
国立科学博物館の筑波実験植物園では2010年、川原湯のカザグルマを保全のために移植したものを公開しました。民主党政権下の当時は、八ッ場ダムの建設は中止されることになっていましたので、国立科学博物館のプレスリリースでは、「ダム水没予定地であった群馬県川原湯温泉産」として紹介されました。その後、自公政権の復活により、八ッ場ダムの本体工事が今年から始まり、川原湯温泉は再び「ダム水没予定地」となってしまいました。
国立科学博物館プレスリリース 平成22年4月27日 (4ページ目に川原湯温泉産のカザグルマの写真が掲載されています。)
https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/26584.pdf
現在、自生地は、ダム本体工事により、立ち入りが制限されています。
詩集「ダムに沈む村」(豊田政子、上毛新聞社)より
カザグルマ
少女の頃
小さな雑木林に
名も知らぬ 大輪の美しい花が咲くことを
祖母から 母から 教わった
幻のような美しい花は
紫 うす紫 白 うす緑 八重咲きと
一面に波を打っているように咲く
くる年も また くる年も
私は この雑木林に立つ
そしてこの花が
鉄線の仲間
カザグルマであることを知ったのは
ずっと後になってである
この凛として清楚な カザグルマの群生も
いつの日か ダムの湖底に沈むのだ
私は とても やりきれない
淋しい気持ちで
今年も カザグルマの咲く雑木林に
立ちつくす
写真下=川原湯温泉の廃墟の中に咲くカザグルマ(5/15撮影)
☆八ッ場ダムによる自然環境の破壊を解説した以下のページに川原湯のカザグルマに関する新聞記事を転載しています。
ダムによる損失と危険性 ― 水没予定地のカザグルマ