八ッ場ダム事業など群馬県内の公共工事で大量に使用されていた(株)大同特殊鋼の有害スラグ問題に関して、昨年9月から強制捜査を行ってきた群馬県警は本日、大同など法人三社と各社の役員5人を前橋地検に産業廃棄物違反の疑いで前橋地検に書類送検したとのことです。
群馬県産業廃棄物情報(群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課)のサイトに詳しい説明が掲載されています。
http://www.gunma-sanpai.jp/gp26/003.htm
■大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について
各紙がこのニュースを大きく取り上げています。
(株)大同特殊鋼から排出されたスラグは、上記サイトに書かれているように、記録で確認できる2002年以降に限っても29万トンを超える膨大な量ですが、以下の報道によれば、今回の送検容疑は2011年3月から一年間にわたって排出したスラグ約2万8300トンを大同が廃棄物処理の許可を受けいない会社に委託して処理した廃棄物処理法違反の疑いとのことです。
写真右=八ッ場ダム予定地住民の移転代替地に今もある鉄鋼スラグ。
(2016年4月27日撮影)
◆2016年4月26日 毎日新聞東京夕刊
http://mainichi.jp/articles/20160426/dde/041/040/015000c
ー大同特殊鋼 有害スラグ問題 不正処理容疑、大同など書類送検 群馬ー
大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、群馬県警は26日、廃棄物処理法違反容疑(委託基準違反など)で、大同など法人3社と各社の役員ら計5人を前橋地検に書類送検した。県の刑事告発を受け、県警は昨年9月に大同など関係先を家宅捜索し、実態解明を進めていた。
送検されたのは大同と同社役員(56)のほか、子会社「大同エコメット」(愛知県東海市)と役員(66)、元従業員(68)▽建設会社「佐藤建設工業」(渋川市)と役員(72)、従業員(65)。
送検容疑は、2011年3月〜12年3月、大同は、廃棄物処理に必要な許可を受けていない「大同エコメット」にスラグ計約2万8300トンの処分を約300回にわたって委託して処理。佐藤建設工業が一部収集したとしている。認否については明らかにしていない。
スラグは鉄を精製する際に発生する副産物。県によると、大同はスラグに環境基準を超える有害物質「フッ素」が含まれていると知りながら出荷。販売額以上の金額を「販売管理費」名目で支払う「逆有償取引」で販売していた。県は環境省と協議し、こうした取引が建設資材を装った廃棄物処理に当たり、大同が排出したスラグは「廃棄物」と認定。昨年9月に大同ら3社を刑事告発していた。
県警はこれまで関係者約70人から事情聴取し、県と同様、スラグを「廃棄物」と認定した。書類送検の理由について「逃走や証拠隠滅の恐れがないため」としている。02〜14年に同工場から出荷されたスラグは約29万トン。【山本有紀、尾崎修二】
◆2016年4月26日 NHK 前橋放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1066951391.html
ー大同特殊鋼 産廃を違法処理かー
大手鉄鋼メーカーの大同特殊鋼が、県内の工場から出た有害物質を含む廃棄物の鉄鋼スラグの処分を許可をもたない業者に委託したとして廃棄物処理法違反の疑いで書類送検されました。
書類送検されたのは名古屋市に本社がある大手鉄鋼メーカー、大同特殊鋼と関連会社など2社、それにそれぞれの会社の役員ら合わせて5人です。
警察によりますと、大同特殊鋼やその役員らは平成23年3月からおよそ1年間にわたって、渋川市にある工場から出た有害物質を含む廃棄物の鉄鋼スラグおよそ2万8300トンの処分を廃棄物を処理する許可をもたない関連会社に委託したとして廃棄物処理法違反の疑いがもたれています。
大同特殊鋼の鉄鋼スラグを巡っては、県内の道路の舗装などに使われ環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されました。
警察は「鉄鋼スラグは建築資材ではなく廃棄物にあたる」などとする県からの刑事告発を受けて大同特殊鋼の本社や渋川市にある工場などを捜索するなど捜査を進めた結果、容疑が固まったとして書類を前橋地方検察庁に送りました。
警察は大同特殊鋼の役員らの認否を明らかにしていません。
大同特殊鋼は「鉄鋼スラグをめぐる処理について書類送検されたことを真摯に受け止めたい。関係する各方面に迷惑をおかけし深くおわびするとともに、今後検察の捜査に全面的に協力したい」と話しています。 4月26日 12時19分
◆2016年4月26日 朝日新聞社会面
http://www.asahi.com/articles/ASJ4V36M3J4VUHNB003.html
ー大同特殊鋼を書類送検 無許可の廃棄物処理に関与の疑いー
大手鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(本社・名古屋市)の群馬県渋川市の工場から、基準値を超える有害物質を含む鉄鋼スラグが出荷された問題で、県警は26日、廃棄物処理の許可を持たない子会社などにスラグ処理を委託したなどとして、大同特殊鋼や関連企業など計3社と、当時の工場長で現在、大同特殊鋼役員の男性ら5人を廃棄物処理法違反(委託基準違反など)の疑いで書類送検し、発表した。認否について「知らない」などと話しているという。
大同特殊鋼を家宅捜索 無許可で廃棄物処理関与の疑い
書類送検された会社は、大同特殊鋼、子会社の大同エコメット(愛知県東海市)、佐藤建設工業(渋川市)。発表によると、大同特殊鋼は2011年3月~12年3月、大同エコメットが産業廃棄物の中間処理業の許可を得ていないことを知りながら、スラグ約2万8300トンの処理を依頼した疑いが持たれている。エコメットは県知事の許可がないのにスラグを処理した疑いがある。
県が15年9月、刑事告発していた。県によると、大同特殊鋼は02年11月から14年1月、スラグ約29万トンを排出。スラグは県や渋川市、国土交通省などが発注した公共工事225カ所で使われ、うち93カ所で有害物質が基準値を超えていた。3社は県の調査に「(出荷したスラグは)廃棄物ではなく商品として取引していた」などと説明したという。
大同特殊鋼の広報担当者は取材に「調べには真摯(しんし)に対応したい。地域の方々には迷惑をかけ、申し訳ない」と話した。
◆2016年4月26日 上毛新聞一面トップニュース
http://www.jomo-news.co.jp/ns/2014616031234787/news.html
ー大同特殊鋼を書類送検へ スラグ不正処理容疑で県警ー
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグが県内の公共工事で使われ、一部で環境基準値を超すフッ素や六価クロムが検出された事件で、同社などがスラグを不正に処理していた疑いが強まったとして、群馬県警が廃棄物処理法違反の疑いで、近く同社などを書類送検する方針を固めたことが25日、分かった。
関係者によると、同社は基準値を越すフッ素などを含んだスラグの処理に関して、県の許可を受けていなかった子会社や業者と取引した疑いが持たれている。
事件を巡っては、県が2014年に同工場などを立ち入り検査。取引形態など複合的な観点から、スラグが有価物ではなく実質的に廃棄物に当たると判断した。
県から告発を受けた県警は15年9月、同社と子会社の大同エコメット(愛知県)、佐藤建設工業(渋川市)の関係先を家宅捜索。押収した資料を分析、関係者に事情を聴くなどして、慎重に捜査を進めてきた。
3社は県の聞き取りに対し、「スラグは廃棄物ではなく、製品として取引していた」などと説明したという。
県の立ち入り検査までに計約29万トンのスラグが処理された。国発注の国道17号上武道路や八ツ場ダム(長野原町)の代替地など公共工事225カ所で渋川工場のスラグが使われ、うち93カ所で基準値を超すフッ素などが検出されている。
前橋、渋川両市などは、スラグを含む砕石の撤去や舗装などの対策工事を進める方針。
◆2016年4月27日 上毛新聞社会面
http://www.raijin.com/ns/5214616834959842/news.html
ースラグは「廃棄物」判断 大同など3社書類送検 県警 ー
鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグが県内の公共工事で使われ、一部で環境基準値を超すフッ素や六価クロムが検出された事件で、群馬県警生活環境課と渋川署は26日、廃棄物処理法違反(委託基準違反など)の疑いで、同社を含む3社と、その役員ら5人を前橋地検に書類送検した。
県警は県が告発した内容を捜査でほぼ裏付け、同工場から一時期に出たスラグを「廃棄物」と判断した。スラグの不正処理を巡る事件の立件は全国初とみられる。
県警はスラグを廃棄物と認定した経緯を「控えたい」と明らかにしていないが、取引形態などから総合的に判断したもようだ。捜査段階での認否も明かしていないが、3社は県の聞き取りに「廃棄物ではなく、製品として取引していた」などと説明していた。今後は前橋地検の判断が注目される。
ほかに送検されたのは同社の子会社の大同エコメット(愛知県)、佐藤建設工業(渋川市)、各社の役員の男性ら計5人。「契約などで中心的な役割を担った人物を立件した」という。県警は任意事件として容疑者名を公表していない。
送検容疑は、大同特殊鋼は2011年3月~12年3月、県の許可を受けていなかった大同エコメットに、計約2万8300トンのスラグの処理を約300回にわたって委託した疑い。同社はこれを請け負い、中間処理した疑い。佐藤建設工業は大同特殊鋼から、県の許可を受けずにスラグ計約1万8500トンを収集した疑い。
県警は15年9月に3社の関係先を捜索した。約70人の事情聴取を重ねる一方、スラグの運搬記録を精査、分析して、立件可能なスラグの排出時期や量を特定した。県警は「証拠品が膨大なことなどから相当に時間がかかったが、捜査は一区切りした。補充捜査の必要があれば対応する」としている。
大同特殊鋼総務部広報課は「送検された事実を真摯に受け止め、今後の地検の捜査にも全面的に協力したい」とコメントした。
—転載終わり—
写真下=八ッ場ダム予定地には、廃棄物処理法違反容疑で書類送検された佐藤建設工業の資材置き場が何か所もあった。オレンジ色の柵で囲まれた場所もその一つ。ここは八ッ場ダム本体工事開始後、工事見学者用の駐車場として開放されていたが、現在は一部のみ駐車場として一般開放されている。後方に八ッ場ダム本体工事現場。すでに有害スラグは撤去されたと国交省は説明してきたが、事実ではなかったか。(2016年4月27日撮影)
写真下=林地区・下田の八ッ場ダム水没予定地。吾妻川の川原のこの周辺には、1990年代から大量のスラグが投棄されてきた。国交省が大同特殊鋼からの聞き取りでスラグが使用されたことを確認した八ッ場ダム事業区域内の箇所のうち、環境基準を超える六価クロムやフッ素が検出された8か所の一つ。約7000立方メートルとされるスラグの撤去作業が昨年から今年3月を工期に行われてきたが、撤去作業が長引き、工期が6月末まで延長された。(2016年4月27日撮影)