八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業費の増額要因

 八ッ場ダム事業の計画変更について、関係都県議会で審議が行われています。ダム完成を四年先延ばしにする今回の計画変更は、八ッ場ダム事業では四回目の変更になります。いずれの議会でも八ッ場ダムを推進してきた自民党が優勢ですので、国交省の方針はすんなりと議会で認められる流れです。来年度予算に八ッ場ダムの本体工事の予算を盛り込むためには、工期延長の計画変更に開会中の議会が同意する必要があります。

 八ッ場ダムは「利根川の洪水調節」と「都市用水の供給」を主目的としています。本当に八ッ場ダムが必要であれば、事業開始から半世紀たっても本体工事が始まらず、完成がさらに遅れるダム事業には、関係都県から批判が上がる筈ですが、八ッ場ダムは必要とされていませんので、完成が遅れても関係都県は困りません。
 ただし、事業費増額については反発があります。八ッ場ダム事業は増額が必至な情勢ですが、国交省関東地方整備局は今回は下流都県の反発を避けて計画変更手続きをスムーズに進めるため、工期延長のみの計画変更を提示しました。けれども事業を進める為には、いずれは増額のための五度目の計画変更をしなければなりません。

 当会では、昨日、群馬県庁記者クラブにおいて、八ッ場ダム事業費の増額要因に関する分析結果を報告しました。
 報告内容の要約をこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/?p=5748

 詳細な解説と資料はこちらに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/problem/meisou/zougaku/

 関連記事を転載します。
 〔注〕以下の上毛新聞の記事では「東電の水力発電量が一時的に減る補償」と書かれていますが、八ッ場ダムができれば、発電量が「一時的」ではなく、「永続的」に減ることになります。そのために減電補償の金額が大きなものになるのです。

◆2013年10月4日 朝日新聞群馬版
 http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20131004100580001.html
 ー事業費500億円増額と試算 あしたの会ー

  八ツ場ダム(長野原町)の事業費は4600億円のまま、完成を4年先送りして2019年度とする国の基本計画変更案について、見直し派の市民団体「八ツ場あしたの会」は3日、県庁で記者会見し、「少なくとも500億円程度の事業費増額が生じる」とする試算を公表した。

 同会は、代替地の整備費用負担で80億円程度、流域で水力発電をしている東京電力への補償で130億~200億円以上、「吾妻川の流量維持」というダムの目的の一つがなくなることで97億円の負担が生じると主張。さらに民主党政権時代の国土交通省による再検証で安全対策などで事業費が183億円増えるとの試算があるとした。水問題研究家で同会の嶋津暉之さんは「事業費増額は下流都県の了解が得られないので問題を先送りした」と国を批判した。(小林誠一)

◆2013年10月4日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20131004/CK2013100402000170.html
 -八ッ場ダム「増額400億円にも」 市民団体が事業費を試算ー
 
予定より増額が見込まれている八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の事業費について、市民団体「八ッ場あしたの会」の運営委員の嶋津暉之さんらが三日、県庁で会見を開き、少なくとも四百億円の増額になるとの試算を発表。「国の試算は小さすぎる」と指摘した。

 国土交通省は、基本計画で定めた総事業費四千六百億円より、工事中断や地滑り対策などの影響で百八十三億円増えると見込んでいる。

 これに加え、あしたの会は、水没予定地の住民のための移転代替地の整備費用が、地形の悪条件のため、八十億~百億円上乗せされると指摘した。

 またダムの完成後、下流の吾妻川などの流量が減って東京電力の水力発電所の発電量が減れば、東電への補償額が百三十億~二百億円に膨らむとした。国交省が発電量の減少はわずかと試算していることには、「発電量の少ない時期のデータを用いて電力量の減少を低く見積もっている」と主張した。

 増額ではないが、ダムの目的の一つである「吾妻川の流量維持」で、流量の試算が見直された関係で、当初は国と本県だけが負担する予定だった九十七億円を、ほかの関係都県も分担して支払う必要が出るとも付け加えた。 (伊藤弘喜)

◆2013年10月4日 上毛新聞
 -流量維持負担金「合理性がない」 八ッ場建設であしたの会ー

 八ッ場ダム建設の見直しを求める市民グループ、八ッ場あしたの会は3日、記者会見し、「吾妻川の流量維持」のために国が7割、本県が3割支払う負担金97億円について「支払いの合理性がない」との見解を示した。

 計画当初と現在で水利権の仕組みが変わり、吾妻川で水力発電する東京電力側に流量維持の放流が義務づけられたことから、「国や県が負担金を出す必要はない。その分を再計算すれば群馬県の負担額は減り、他の都県は増える」とした。
 また総事業費4600億円に関して、同会は「599~600億円増える」と主張してきたが、今回は①代替地整備に80億円 ②東電の水力発電量が一時的に減る補償に130億円以上ーの2点にしぼって事業費増額の可能性を指摘した。地滑り対策は内容が確定していないことから、現段階での試算は見合わせた。

◆2013年10月4日 読売新聞群馬版
ー八ッ場反対市民団体「事業費210億円以上増」

 八ッ場ダム建設に反対する市民団体「八ッ場あしたの会」は3日、県庁で記者会見し、ダム建設の総事業費が代替地の整備費負担などによって国の試算より210億~280億円増えるとの見方を示した。
 総事業費は4600億円だが、国土交通省は2011年度に行った検証で、地滑り対策や工事遅延に伴う人件費増加で183億円増加すると試算している。
 同会は、代替地の地形条件が悪く整備費用がかさむため約80億円が上乗せされると試算。さらに、国の試算は東京電力への減電補償額を過小評価している可能性があるとして、実際には130億~200億円膨らむと予測した。

◆2013年10月4日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20131004ddlk10010156000c.html
 -八ッ場ダム建設:事業費、393億円の増額必要−−市民団体試算 /群馬ー

 八ッ場ダムの見直しを求める市民団体「八ッ場あしたの会」は3日、総事業費を少なくとも約393億円増額する必要があるとの試算を発表した。

 国土交通省は、2011年の事業検証で、工事の遅れに伴う人件費増加や地滑り対策拡充などで、約183億円の事業費増の可能性を提示。同会は今回、代替地の整備費用などで、最低でもさらに約210億円の増額が必要だとしている。

 同省は今年8月、完成時期を15年度から19年度に延期する方針を示し、1都5県に同意を求める一方、総事業費は4600億円で据え置いていた。県議会の総務企画常任委員会は2日、工期延長について、「さらなる工期延長は行わない」「総事業費の圧縮に最大限努力すること」などの意見を付した上で同意する議案を賛成多数で可決。同議案は8日の本会議で可決される見通しだ。【塩田彩】