本日、八ッ場あしたの会では、八ッ場ダム水没予定地の国道利用に関して、以下の要請書を国交大臣、群馬県知事に提出し、記者会見を行いました。
2014年7月9日
国土交通大臣 太田昭宏 様
群馬県知事 大澤正明 様
八ッ場あしたの会 代表世話人:大熊孝ほか
八ッ場ダム予定地の国道利用に関する要請書
吾妻川沿いの国道145号線は、長野原町川原畑から長野原町長野原までの区間が八ッ場ダムの建設によって水没するとされています。
この区間は”日本ロマンチック街道”と呼ばれる観光ルートであり、国指定名勝・吾妻峡、天然記念物・川原湯岩脈をはじめ、見所が各所に点在しています。吾妻川を国道の遊歩道や八ッ場大橋、新千歳橋、栄橋などから眺めれば、長い歳月をかけて自然がつくりだした繊細かつ雄大な景観が見る者を飽きさせることがありません。
ダム事業によって造られた付け替え国道や不動大橋も、周辺の丸岩や堂岩山などの景観が改めて注目されるところとなっていますが、水没予定地の国道から手に取るように見える吾妻川の流れと渓畔林の織りなす風景は、付け替え国道では味わうことのできないものです。春の芽吹きどき、夏の増水時、秋の紅葉、冬の雪景色、四季折々の変化に富んだ自然は、かけがえのないこの土地の奥深い魅力を語ってくれます。半世紀以上に及ぶダム計画さえなければ、この土地の自然、文化の価値は今よりはるかに注目されていたでしょう。
しかし、聞くところによれば、八ッ場ダム事業を進める国土交通省関東地方整備局は、本体工事開始後、この国道を本体工事専用道路とするため、現在、上湯原橋から吾妻渓谷までの区間を廃道とし、一般車両の通行止めを地元住民に了承するよう求めているということです。地元住民に約束してきた生活道路としての国道利用は、住民の意思を尊重して継続するのは当然のことです。国道の廃道化という重大な問題を公表することなく、少数の住民に圧力をかける形で進めるという手法に疑問を抱かざるをえません。
この間、八ッ場ダム事業では観光客への配慮は行われてきませんでした。観光立国を標榜し、2020年の東京オリンピック開催を控えながら、多くの観光客の願いを踏みにじって関東有数の名勝地をダムに沈める事業を進めるのであれば、観光へのダメージをできる限り少なくするよう努めるべきです。
八ッ場ダムによって永遠に水底に沈められてしまうなら、せめて工事期間中は通行止めの区間を本体工事現場に限るなど最小限とするよう、ダム予定地で生活をされている人たちと、観光に訪れる人たちに対してできる限りの配慮をお願いいたします。
ーーー転載終わりーーー
八ッ場ダム予定地の国道については、6月9日の群馬県議会で角倉邦良議員(リベラル群馬)が特定ダム対策課長と質疑を行い、さらにこの件に関して文書で質問した塩川鉄也衆院議員(共産)が国交省本省より文書で回答を受け取っています。
以下は、県議会の議事録、国交省の回答より該当部分を抜粋した記者発表資料です。
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記者会見配布資料
◆八ッ場ダム水没予定地の国道利用に関する群馬県議会における質疑
平成26年6月9日(月) 産経土木常任委員会(県土整備部関係)委員会記録(未定稿)
○角倉委員
(現国道の利用について)川原畑の住民の方々の了解がないまま、現道を廃止することはないという理解でよいか。
●岩下特定ダム対策課長
現国道145号の取扱いについては、関係機関と道路法等の関係法令などに基づき適切に対処して参りたい。
道路を利用している地域住民の方の生活には十分配慮してもらうよう、国には伝えていきたい。
工事の行程については、今後決定する請負業者の施工計画に基づき検討されると、国からは聞いている、県としても、一日も早くダムが完成することを施策で挙げている。ただ、県としては、吾妻渓谷が貴重な観光資源であることから、ダム本体工事中でもできるだけ散策できるよう国に働きかけていきたいと考えている。
◆塩川鉄也衆議院議員より国土交通省本省への質問(6/16)と回答(6/24)
【質問】現国道の利用について(2014年6月16日)
現国道は地域住民にとって生活道路であり、観光用道路としても活用されてきました。現国道の通行が禁止されることによる、地域住民の生活、観光への影響ははかりしれません。
① 国交省の職員が一部住民に「本体工事に入った場合、現国道145号の一部区間は通行できなくなることをご承諾いただきたい」と説明しているとのことですが、その範囲を具体的に示してください。
② 現国道の一部区間の閉鎖はいつ行われる予定なのかを明らかにしてください。
③ 工事用道路を一般車が走っているケースもあります。今回、現国道の一部区間について一般車の通行を禁止する理由を明らかにしてください。
④ 上記のとおり、「現国道145号の一部区間は通行できなくなることをご承諾いただきたい」という一部住民への説明に対して、住民は「生活道路が奪われることは到底承諾できない」と述べており、住民の承諾が得ることは困難と考えられます。住民の承諾がなくても、国交省は「現国道の通行禁止」という強引な措置を取るのか、国交省の見解を明らかにしてください。
【国土交通省からの回答】(2014年6月24日)
現国道の一部区間は、ダム本体工事の工事用道路として、大型車等が利用する状況になれば、安全上の観点より一般車の通行は難しくなります。その具体的区間および時期については、本体工事の受注業者が作成する施工計画によるため、現時点では確定しておりませんが、おおまかにはダム本体箇所から上湯原橋までの間が考えられます。このため、現在、関係機関及び関係する住民の方々と相談しているところです。
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国土交通省が通行止めを検討している「ダム本体個所から上湯原橋までの間」を以下の地図に示します。要請書にある国道沿いの観光スポットも書き込んであります。
【国道地図】
国道の問題については、以下のページに解説を載せています。
https://yamba-net.org/wp/?p=8093