昨日4月24日、安倍首相、太田国交大臣宛ての署名5,262筆を内閣府と国交省に提出しました。署名の趣旨は以下の二点です。
1.かけがえのない自然景観と文化遺産を破壊する八ッ場ダム本体工事の中止を求めます。
2.自公政権の復活により廃案となった「ダム中止後の生活再建支援法」の再提出、制定を求めます。

 署名活動は昨年11月17日の高崎での集会を機に開始し、今回はこれまでに集約した署名5,262筆を提出しました(ネット署名746筆含む)。署名活動は今後も続けます。第三次集約は6月末の予定です。
 今回の署名提出にあたっては、阿部知子衆議院議員に仲介の労をとっていただきました。

 本日、群馬県庁記者クラブ(刀水クラブ)で会見を行い、署名提出の報告とともに、「八ッ場ダム本体準備工事が吾妻渓谷の観光に及ぼす影響」等について、説明しました。

 記者クラブ配布資料と説明を掲載します。
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1. 現在、吾妻渓谷の八ッ場ダム本体工事予定地周辺では、下図の地点で四つの本体準備工事が進められています。仮締切工事、本体左岸および右岸の山の掘削造成工事、および右岸上部工事用道路工事です。
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2. 名勝・吾妻渓谷の地形を改変し、自然を破壊しつつあるこれら本体準備工事について、現場の状況を写真で説明します。
 下の写真は、吾妻渓谷の上流端にある八ッ場大橋から、下流側の滝見橋周辺の吾妻川の状況を写したものです。中央に見えるのが滝見橋です。滝見橋の後ろにあるコンクリートの構造物は、八ッ場ダム事業でつくられた仮排水トンネルの呑み口です。
 仮排水トンネルは2009年7月に完成しました。その直後、八ッ場ダム中止を掲げる民主党政権の発足によりストップしていた仮締切工事は、今年に入って本格的に再開されました。
 仮排水トンネルは、本体工事予定地の吾妻川の水をバイパスさせるトンネルです。トンネル呑み口周辺に石垣が造られ、吾妻川の流れが堰き止められ、水が淀んでいます。
 現在、吾妻川の水は、すでにダム予定地地点では仮排水トンネルを流れています。仮締切工事によって、仮排水トンネルの呑み口の背後に高さ29メートルの小ダムが建設される予定です。
 
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3. 下の写真は、八ッ場ダム本体工事予定地付近の吾妻川の状況です。上の写真にあるように、吾妻川の流れを石垣で堰き止めてしまったため、吾妻川のもとの流路には水が殆どなくなってしまいました。

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4. 水が枯渇している上の写真の地点で昨年(2013年)10月31日にカヤッカー(群馬県高崎市在住)によって撮影されたのが下の写真です。
 景観に魅せられて吾妻渓谷を訪れるカヤッカーは全国におり、海外のカヤッカーが撮った吾妻渓谷の映像は世界に発信されてもいます。
 八ッ場ダム本体工事予定地の下流側はダムに沈むことはありませんが、谷が深いため吾妻川に下りられません。吾妻渓谷におけるカヤックの川下りは、八ッ場ダムの本体工事が中止されない限り永遠に不可能です。

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 吾妻渓谷におけるカヤックの川下りの映像は、YouTubeでご覧いただけます。
 http://yamba-net.org/?p=6266

5. 滝見橋と渓谷遊歩道の入り口には、3月末から4月初めにかけて、通行止めの看板が次々と掲げられました。
 国土交通省関東地方整備局が当会の公開質問書(昨年8月22日送付)に今年3月25日に7ヶ月ぶりに送ってきた回答によれば、滝見橋を含む渓谷遊歩道は冬期間の閉鎖を延長し、閉鎖を継続するとのことでした。
 看板が掲げられている場所は八ッ場ダムの水没予定地です。八ッ場ダムは現在の計画では平成31年度に完成する予定ですから、看板に書かれている全面通行止めの期間は「平成32年3月31日まで」ですが、正確にはダム事業が進む限り永遠に閉鎖となります。

 渓谷遊歩道は毎年、積雪や凍結により安全が確保できないことから冬期間は閉鎖されており、昨年12月より冬期間閉鎖となりました。
 閉鎖前の11月時点で、ダムの工事のためにこれから永遠に観光客を締め出すことは決まっていた筈ですが、国交省関東地方整備局(ダム事業者)はこれを事前には明らかにせず、公開質問書への回答を引き延ばしてきました。国の名勝を破壊するダム事業が広く国民の反発を招くことを恐れ、目立たずに工事を進めたいというダム事業者の意図は理解できますが、事前の説明なしに突然観光客を閉めだすやり方は、あまりに傲岸であり、姑息です。
 渓谷遊歩道と共に冬期間閉鎖とされた滝見橋は、冬期間も開放されていました。ダム事業者は吾妻渓谷最大の観光スポットである滝見橋を渓谷遊歩道と共にどさくさにまぎれて閉鎖することで、国の名勝を破壊する八ッ場ダムへの反対世論が広がることを封じたかったのでしょう。

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6. 下の図は、当会の公開質問に国交省関東地方整備局が回答してきた当日、地元、長野原町のホームページにアップされた通行止めの説明図です。この説明図の掲載は、国交省関東地方整備局の指示に従って長野原町が行ったものです。
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7. 名勝・吾妻渓谷に八ッ場ダムを建設することについて、国交省関東地方整備局は以下のホームページで「吾妻渓谷の上流端の一部はダムにより水没してしまいますが、吾妻渓谷の中でも主要な観光スポットである鹿飛橋や八丁暗がりなどを含む、下流側のほとんどの範囲は水没することなく保全されます。」と説明し、ダム事業が名勝に最小限の影響しか与えないことをアピールしています。しかし、水没しないだけでは、「保全」されるとは言えません。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/faq/answer7_2.htm
 
 国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所のホームページ

 現在の吾妻渓谷の観光スポット「鹿飛橋(しかとびばし)」と、同じく国の名勝でありながら、下久保ダムができたために景観がだいなしになってしまった三波石峡の写真を並べてみました。
 群馬県と埼玉県の県境を流れる利根川支流の神流川に半世紀近く前(昭和43年)に完成した下久保ダムは、八ッ場ダムと同時代に利根川上流ダム群の一つとして計画された巨大ダムです。
 青緑色の三波石は庭石として珍重され、三波峡は時折おとずれる洪水によって岩肌が洗われ、美しい景観を保っていました。けれども、下久保ダムができてからダム下流の景観が変化し、今では観光客はほとんどいません。
 八ッ場ダムで洪水が貯留されるようになると、ダムに沈まない吾妻渓谷の下流部も、三波石峡の二の舞になってしまうでしょう。

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8. 次に吾妻川の両岸で進められている山の掘削工事の写真です。地形を破壊する凄まじい自然破壊が進められている同地では、今、ムラサキツツジと山桜が咲き乱れ、芽吹きの時を迎えています。
 左岸の工事は、掘削量約10万㎥と、山を丸ごと削ってしまうような大規模な工事です。
 右岸の工事は川原湯温泉の移転代替地のある打越地区の下流側で今月から本格的に始まりました。
 
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9. 八ッ場ダムの本体工事が始まると、川原湯温泉から吾妻渓谷へ行く道が閉ざされるため、下の図に描かれている遊歩道が使われることになる予定ですが、現在はこの遊歩道の入り口も上記の右岸の工事のために閉鎖されています。

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10. 工事が進められている吾妻渓谷は、地形が急峻なため、人の手が入らず、自然林が保全されてきました。このため、新緑、紅葉の時期には多くの観光客が自然の織りなす繊細な美しさに魅せられてきました。

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11. 現在は通行できる吾妻渓谷の国道も、八ッ場ダムの本体工事が始まるとダム予定地周辺は閉鎖されます。国交省関東地方整備局は下の図に示されているように、それまでに渓谷沿いの国道を撤去し、JR吾妻線も水没線より標高の高い場所に付け替える予定です。
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12. 八ッ場ダム本体工事を始める前に必要とされるJR吾妻線の付け替え工事の中で、最も難航しているのは、川原湯温泉新駅周辺の整備工事です。新駅の駅舎は今年3月に完成しましたが、駅に通じるアクセス道や駅前広場はまだできていません。
 下の計画図によれば、川原湯温泉の新駅から川原湯温泉の移転代替地に町道と県道がつながることになっていますが、町道はいまだ着工しておらず、県道も工事中です。

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13. 昨年11月の八ッ場ダム基本計画の変更により、八ッ場ダムは2020年3月完成予定となっていますが、工事の難航、地質の問題などにより、工期がさらに延びる可能性があります。

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 今シーズン、吾妻渓谷では長野原町の花、ムラサキツツジが例年になく多く咲いています。岩場や山裾を薄紫に染める妖艶な花の姿は、滅ぼされることを知っての必死の狂い咲きではないかと、地元では言われています。
 現在の名勝指定では、川原湯温泉の下流のみが吾妻渓谷とされていますが、川原湯温泉や堂岩山、丸岩のあるダム予定地は吾妻渓谷の自然の繋がりの中にあり、その景観は渓谷に勝るとも劣りません。上の写真は川原湯温泉街、下の写真は吾妻渓谷のダムサイト予定地の風景です。

温泉街のムラサキツツジ2shukuトリミング2ダムサイト予定地のムラサキツツジshukuトリミング2

 
 八ッ場ダムの本体工事の中止を求める反対署名へのご協力を引き続きお願いいたします。
 ネット署名も受け付けています。
 http://yamba-net.org/shomei/