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八ッ場ダムをストップさせる茨城の会、県議会に事業費増額不同意求める請願提出

 8月に国交省関東地方整備局が公表した事業費増額案について、茨城県の橋本知事は真っ先に同意の意向を記者会見で示しましたが、県内の市民団体が県議会に事業費増額に不同意を求める請願を提出しました。

 茨城県は利根川水系八ッ場ダムの関係都県の一つで、現在の八ッ場ダム基本計画では建設事業費4600億円のうち、約227億円を負担することになっています。227億円の内訳は、治水負担金が約126億円、茨城県水道の負担金が約91億円です。八ッ場ダム事業は建設事業以外にダム予定地域の振興事業もあり、これらを含めた八ッ場ダム3事業における茨城県の現計画での負担金は約269億円です。

 八ッ場ダム事業における各都県の負担割合は、1986年の基本計画策定の時点で決められています。茨城県の負担割合は5.84%です。今回の計画変更により、茨城県は約42億円の増額となり、八ッ場ダム3事業の負担額は311億円に膨らみます。

 茨城県内では昨秋、利根川水系の鬼怒川水害により大きな被害があり、被災地の常総市では今も200人が避難生活を送っています。茨城県における八ッ場ダムの治水効果は殆どありませんが、茨城県は他の利根川流域都県と同様、巨大ダム建設を優先し堤防強化を怠る国交省の言いなりです。

 「八ッ場ダムをストップさせる茨城の会」が請願に添付した右の資料には、茨城県水道にとって八ッ場ダムが不要であることが詳細なデータで示されています。⇒ 請願添付資料 水問題要約

 請願は、「八ッ場ダム基本計画が立てられ、茨城県が参加の意思を示した1986年、茨城県は、八ッ場ダムの完成年度2000年の人口を420万人と想定」しながら、2011年の「平成23年度茨城県基本計画は、八ッ場ダム完成年度である2020年の人口を285万人」としており、「茨城県の長期水需給計画は当初より体をなしていなかった」と指摘しています。

 茨城県の人口は2000年の299万人をピークに減少し始めました。平成28年3月1日現在の茨城県の人口は約291万人です。
 茨城県は都市用水の開発という視点から見ても、人口増大による右肩上がりの水需要の増加を前提とした八ッ場ダム事業への参加が説明不能となっていることがわかります。

〈参考〉茨城県資料 「茨城県の人口動向分析と将来人口推計」の概要

 関連記事を転載します。

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◆2016年9月 茨城新聞 
ー八ッ場ダム基本計画変更へ不同意求める 市民団体 県議会へ請願へー

 八ッ場ダム(群馬県)の建設事業費を増額する基本計画変更を巡り、市民団体「八ッ場ダムをストップさせる茨城の会」(浜田篤信、船田寛代表)は5日、計画変更に同意しないよう求める請願を県議会に提出すると発表した。
 
 請願では、県内の水余りの実態などを示し、利水、治水両面で八ッ場ダムは不要と主張。県庁で記者会見した神原礼二事務局長は「更なる工期延長や増額が今後必ずまたある。県議会として本気でこの問題に向き合ってほしい」と訴えた。

 本件負担分の増額を含む今回の基本計画変更について、県はコスト縮減と工期短縮を求める意見付きで同意する方針で、同日開会した県議会第三回定例会に議案を提出した。

◆2016年9月9日 毎日新聞茨城版 2016年9月6日 
http://mainichi.jp/articles/20160906/ddl/k08/010/149000c
ー県議会 開会 「八ッ場」増額の同意案など提出 /茨城ー

 県議会第3回定例会が5日開会し、県は88億9400万円の補正予算案や、八ッ場ダム(群馬県)の建設費を増額する国の基本計画への同意案など16議案を提出した。

 八ッ場ダムをめぐっては、国土交通省が8月に建設費を現行の約4600億円(当初は2110億円)から約5320億円に変更する方針を示し、費用負担を行う1都5県の意見を聞いていた。

 県負担分(5・84%)は約42億円増額の311億円となる見込みで、橋本昌知事は8月30日の定例記者会見で「労務単価、消費税のアップなどの要因がある。この金額はやむを得ない」として、同意する意向を示していた。増額分は2017年度以降の予算で対応する。

 一方、市民団体「八ッ場ダムをストップさせる茨城の会」はこの基本計画に同意しないよう求める請願を提出。請願は「八ッ場ダムは県にとって利水、治水の面から無用になった」として基本計画案への不同意決議を求めている。【山下智恵】

◆2016年9月9日 朝日新聞茨城版
ー八ッ場ダムの事業費増額に県が同意意向 負担42億円増え311億円ー

 国土交通省が八ッ場ダム(群馬県)の建設の事業費を増額する基本計画変更を示したことについて、橋本昌知事は8日の県議会本会議で「やむを得ないと判断した」と述べ、同意する意向を示した。県負担分は、42億円増えて約311億円となる見込みだ。

 利根川支流に建設中の八ッ場ダムは1986年に基本計画が策定された。昨年1月に本体工事が始まり、2019年度までに完成予定だ。これまで事業費の増額や工期の延長が繰り返されており、国交省は先月、総事業費を720億円増やして、5320億円に増額する計画に変更した。増額の理由を「労務費や資材単価の上昇」などとしている。事業費は、国のほか利根川流域を中心とした治水の効果や利水の便益の大きさに応じて負担することになっている。

 橋本知事は「国に強くコスト縮減を要望してきており、大変遺憾」とした上で、「治水・利水の両面から必要不可欠な施設で、県としても早期完成を求めてきた」と説明。今議会で計画変更に同意する「国宛ての意見の議決」を得たい考えだ。

 八ッ場ダムの計画変更をめぐっては、県内の市民団体が「県にとって利水・治水ともに不要」として、変更に対して不同意の決議をするよう求める請願を提出する方針だ。(酒本友紀子)