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茨城県の橋本知事、他都県に先がけて八ッ場ダム増額に同意表明(上毛新聞)

 国交省関東地方整備局は8月12日に八ッ場ダム基本計画の変更案(事業費720億円増額)を発表しました。
 八ッ場ダム事業に参画する利根川流域一都五県は都県議会での議決を経て、各都県知事が関東地方整備局に負担金増額を受け入れるかどうかを回答することになっていますが、早くも茨城県の橋本知事が同意を表明したとのニュースが今朝の上毛新聞一面に大きく掲載されました。

 記事の元になった昨日の橋本知事の記者会見要旨です。
 橋本氏は平成5(1993)年に知事就任、すでに6期目です。八ッ場ダムの基本計画はこれまで4回変更されてきましたが、橋本知事はそのすべてに同意してきました。平成今回の事業費増額の大きな要因となっている地すべり対策、本体工事の問題などについて、橋本知事の発言では触れられていません。

 知事定例記者会見における発言要旨 2016年8月30日
 ○八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更について
 http://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/hodo/press/p160830.html##3

 茨城(新聞):八ッ場ダムの建設について伺います。今回の議案にもありますが,基本計画の見直しで,建設費が増える結果になりましたが,知事としてどのように受け止められていますか。

知事:八ッ場ダムについては,我々,早期完成,それから,費用を増加させないようにということを言ってきているところでありますが,今回,いろいろな状況を踏まえると,どうしても費用を上げざるを得ない。特に労務単価,資材費の上昇,消費税のアップ,その他いろいろな要因があるわけでありますが,そういったことを踏まえると,ぎりぎりこれだけ上げなければいけない。前にいろいろな提案もあったものですから,関係県の課長さんなどが集まってしっかり数字については検証させていただいて,その結果が720億円という今回の金額に落ち着いたところなのですが,我々としては,一応,検証して,この金額はやむを得ないなということで,今回,議会に議案を提出させていただきたいと思っておりますが,もうこれ以上は絶対増やしてほしくないし,今回増えたことについては大変遺憾に思っているところです。

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 関連記事を転載します。
 上毛新聞の記事中、群馬県特定ダム対策課は「本県も関係都県と実施した(増額変更に対する)検証を基に判断する」と語っているとのことです。関係都県はこれまでの計画変更の際、議会開会に先駆けて合同職員チームを作り、国交省と質疑を行ったり、国交省八ッ場ダム工事事務所の案内で現地を見学し、8月中に計画変更に同意する旨の現地調査報告書をまとめています。今回も特定ダム対策課が合同チームに参加し、同様の作業を行ったことを”検証”と称しているようです。

◆2016年8月31日 上毛新聞一面
ー八ッ場事業費の増額計画 茨城知事ー

 長野原町で建設が進む八ッ場ダムの総事業費を増額する基本計画が示されたことについて、茨城県の橋本昌知事は30日の定例会見で、国土交通省からの意見照会に「同意」する考えを明らかにした。同県の判断に対し、群馬県特定ダム対策課は「本県も関係都県と実施した(増額変更に対する)検証を基に判断する」とした。

 事業費の一部を負担する6都県(群馬、埼玉、東京、千葉、茨城、栃木)で、増額変更への同意の意思を明らかにするのは初めて。茨城県は9月5日開会の県議会第3回定例会に関連議案を提出する。

 国交省は今月12日、労務単価の上昇や、ダム本体建設場所の基礎強化費用が新たに必要になったことなどを理由に事業費を約720億円増額し、総額約5320億円とする計画変更を6都県に提示、意見照会の手続きを始めた。

 本県の負担分は従来より約33億8千円増え、約249億4千万円となる見込み。

 意見の回答には都県議会の議決が必要となる。茨城県が議会に提出する議案では「徹底したコスト縮減を図る」「早期完成に向けて工期短縮に努める」の2点を意見として付し、同意するとした。
 橋本知事は会見で「検証してこの金額はやむをえないということで、議会に議案を提出する」と説明した上で、「これ以上、絶対に増やしてほしくないし、今回増えたことについては大変遺憾に思っている」と苦言を呈した。

◆2016年8月31日 東京新聞茨城版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201608/CK2016083102000169.html
ー八ッ場ダム建設費 県負担分42億円増 知事「大変に遺憾」ー

 国土交通省は今月十二日、八ッ場ダム(群馬県長野原町)の建設事業費を従来の約四千六百億円から約五千三百二十億円に増額する基本計画の変更を発表した。これに対し、橋本昌知事は三十日の定例会見で「数字は関係都県で検証した。やむを得ないが、これ以上は絶対にやってほしくないし、大変遺憾に思っている」と、さらなる増額に警戒感をあらわにした。
 国交省は、人件費の高騰などを理由に事業費を約七百二十億円増額した。事業費の一部は流域六都県で負担している。県の負担分は5・84%で、事業費の増額に伴い、県の負担額は約四十二億円増え、二百六十九億円から三百十一億円に膨らむ。増額分は二〇一七年度以降の予算に反映されることになる。
 県は、九月定例会で県議会の同意を得て、コスト縮減の徹底とダムの早期完成を求める意見書を国交省に提出する方針。
 ダムは一九年度に完成する予定で、県企業局も水源として利用する。 (酒井健)

—転載終わり—

 前回、第四回計画変更の直後、2013年12月9日に国交省関東地方整備局が開催した事業評価監視委員会の配布資料29ページには、関係都県の意見が以下の1ページにまとめられています。関係都県が毎回同じような意見を述べて計画変更(工期延長と事業費増額)に同意していることがわかります。

資料1「再評価における関係都県への意見聴取」(平成25年12月9日関東地方整備局事業評価監視委員会配布資料)

☆参考記事 「八ッ場ダム計画変更案(事業費増額)についての国交省資料から読み取れること」
https://yamba-net.org/wp/?p=17167