八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業による付替え国道の変形に関する群馬県議会の質疑(2/27)

 八ッ場ダム事業によって建設された付替え国道に地すべりが原因とされる変形が生じている問題について、2月27日、群馬県議会本会議の一般質問で取り上げられました。

 一方、27日当日、昨年10月に当会より国交省関東地方整備局にこの問題について送った公開質問の回答が届きました。国交省の回答と当会のコメントは後ほど公表します。

地すべり法面s 県議会では、酒井宏明議員(共産)の質問に対して、県土整備部長が「現地踏査の結果、道路の下部の地山の一部が変質したためと考えている」と答えました。翌日の上毛新聞では、「安全性に問題なし」としていますが、国道の変形は進行しており、安全性を危惧せざるをえません。(右写真=付替え国道と法面。川原畑地区代替地。周辺一帯に熱水変質帯が広がっている。)
 
 国道145号線は関東と草津温泉、嬬恋村などを結ぶ地域の幹線道路です。八ッ場ダムに沈む吾妻川沿いの国道の代替として、山の中腹に付替え国道が建設され、2010年から供用を開始しました。
 本来であれば、変形している付替え国道は通行止めにして、抜本的な対策を講じる必要がありますが、もともとの国道は八ッ場ダムの本体工事のために昨年11月から通行止めとなっており、対岸を並行して走っている付替え県道は、川原湯地区の背後の山の砂防工事の影響で、完成のメドが立っていません。未完成の付替え県道は大型車が通行できないこともあって、八ッ場ダム予定地域を通過するほとんどの車両は付替え国道を利用しています。

 県議会の質疑を取り上げた記事と質疑の要旨をお伝えします。
 上毛新聞の記事は、地元の住民や道路の利用者の不安を封じるためか、「安全性に問題ない」ことを強調しているようです。
 県議会での酒井県議による質問は、付替え国道で発生している地すべりの要因が熱水変質帯であることから、近くで進められようとしている本体工事の安全性にも疑問を投げかけるものでしたが、県はこの質問に答えませんでした。代わりに、国は湛水による地すべりの誘発への対策を行うことになっているという従来の説明を繰り返したのですが、熱水変質帯による地すべりはダム湛水が始まっていない現在起こっていることです。

◆2015年2月28日 上毛新聞
ー道路下の変質原因 安全性に問題なし 八ッ場バイパス 段差や亀裂ー

 県は27日、八ッ場ダム(長野原町)建設事業に伴い付け替えられた国道145号八ッ場バイパスの一部で見つかった段差や亀裂について、道路下の変質が原因とみられると明らかにした。現時点で安全性に問題はない年、今後も定期的に点検するという。
 県議会一般質問で酒井宏明氏(共産)に対し、古橋勉県土整備部長が答えた。市民団体が昨年、道路の変形を指摘していた。

 一方、県はダム湖周辺の地滑り対策について、国から従来対策が必要とした3カ所に加え、新たに8カ所で対策が必要になる可能性があると説明を受けたことを明らかにした。

~~~転載終わり~~~

平成27年第1回定例会 平成27年2月27日(金) 本会議(一般質問)酒井宏明議員(共産)

6.八ッ場ダム対策について (約6分)
(1)国道145号に生じている亀裂等について 
(2)地すべり対策について
http://www.gunma-pref.stream.jfit.co.jp/?tpl=gikai_result&gikai_day_id=240&category_id=3&inquiry_id=3111

(以下、質疑の要旨 酒井議員=酒、県=古橋勉県土整備部長)
酒:八ッ場ダムの本体工事の現場からほど近い付替え国道145号の路肩で約50メートルにわたり亀裂がある。茂四郎トンネルの西側、川原畑地区の付替え国道に亀裂が入って、車道側に傾いている。大変危険な状況だと思うが、この原因は何なのか、またどのような対策を講じているのか?

県:現地踏査の結果、道路の下部の地山の一部が変質したためと考えている。車道部の舗装を行い、走行を確保している。引き続き、現地踏査や定期的なパトロール等を行って、現地の安全を確認するなど、今後も適切に対応していきたい。

酒:この道路の斜面(法面)の中段にも同様に亀裂があって、道路を舗装し直した跡があり、コンクリートや鋼材が赤茶色に変色している。熱水変質帯が道路の建設工事で露出して、酸化して弱くなり、地すべりが始まっている可能性が専門家から指摘されている。「円弧すべり」というそうだが、上の地盤がすべって下に圧力が加わって盛り上がった、典型的な地すべりだという。しっかりと対策を講じるべきだ。
 八ッ場の一帯は、まさに地すべり地帯。基礎掘削工事によって変質帯、低角度の割れ目が大きく広がる可能性がある。まさに本体工事を根本から見直す必要があるのではないか?
 2007年3月、応用地質株式会社による川原畑地区ほかの地質調査報告書では、変質帯がダムサイト周辺に広がっていることが確認されている。この地すべり対策について、調査の状況はどうなっているのか、本体工事を中止して地すべり調査を行うべきと考えるが、どうか?

県:湛水に伴う地すべり等の対策についてだが、八ッ場ダムの検証において、その時点で得られている技術情報をもとに、当時考えられる最大限の地すべり等の範囲を想定して検討した結果、従前から対策を予定していた3ヶ所に加え、新たに8ヶ所で対策が必要となる可能性があることが判明した。国は対策の必要性の有無を調べるため、平成25年7月からボーリングによる地質調査等を順次実施している。今後、地質調査等の結果を踏まえ、必要に応じて設計等を行うと国から聞いている。
 いずれにしても、県としては湛水に伴う地すべり等の対策については万全を期するよう、従来より国に強く求めている。

酒:八ッ場ダムはダム湖水位の上下の変化による地すべり誘発の危険性がきわめて高いと指摘されている。大滝ダムや滝沢ダムのように、地すべり対策工事に追われて完成が何年も延びる可能性がある。八ッ場ダムは夏の間、洪水対策として水位を下げる、結果的に年間を通じて水位を大きく上下させる。こうした大変危険な地すべり地帯にあるということを認識していただきたい。
 先日、増田川ダムの中止が決定した。かなり時間がかかったが、必要のないダム事業からの撤退は、まさに時代の要請である。熊本県では荒瀬ダムが日本で初めて撤去され、清流がよみがえったという。改めて八ッ場ダムの中止を強く求める。

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