八ッ場ダム予定地の土地を強制収用することが可能になる事業認定の手続きが始まり、4月12日から27日までの二週間、群馬県が事業認定についての意見を受け付けています。群馬県に提出された意見は、群馬県から国土交通省に送られます。
意見は八ッ場ダムの利害関係者である国民どなたでも提出できます。意見と共に提出するタイトル、宛先、お名前などの様式は、次のページからダウンロードできます。
クリックするとダウンロードできます。 ⇒ 意見書の様式例
(住所と電話番号は必須ではありません。)
意見書の提出方法については、こちらのページでお知らせしています。
https://yamba-net.org/wp/?p=10962
提出されるご意見は、八ッ場ダムについて日頃お考えのことをご自由にお書きいただいてかまわないのですが、ご参考までに例文を掲載します。
・地元の方の土地を強制収用することに反対です。
・名勝・吾妻渓谷をこれ以上破壊するダム事業に反対です。
・ダム予定地のかけがえのない土地を未来に残すために、ダム建設を中止して下さい。
・将来世代への負の遺産となる、無駄なダムを造らないで下さい。
・貴重な動植物の棲家である自然の宝庫をダムに沈めないで下さい。
・代替地の安全性が確認されていない状態で、強制収用を可能にして住民を水没予定地から追い出すのは、住民の方々への人権蹂躙です。
・治水、利水の両面で不要な八ッ場ダムに公共性はありません。
・ダム湛水による地すべり等が心配です。地質調査を実施しているとのことですが、調査結果や対応策を公表しないまま、ダム本体工事を進めるのはおかしいと思います。
・国土交通省が説明する八ッ場ダムの必要性には、科学的な裏付けがありませんので、国民が納得できる説明を求めます。
・縄文時代から江戸時代まで、たくさんの遺跡があるダム予定地を沈めることは、貴重な文化遺産をないがしろにするものです。
・八ッ場ダム事業については、公表されていない情報が多く、国民はダム事業についてよく知ることができません。情報開示の徹底を求めます。
・事業認定申請書などの書類や意見提出の宛先、意見受付期間など重要な情報はインターネット上に公開し、国民誰もが見られるようにするべきです。
★こちらは、少し詳しい意見書の例です。
八ッ場ダムは利水面においても治水面においても必要性がなくなっており、且つ、かけがえのない自然を壊し、災害誘発の危険性をつくり出すダムです。八ッ場ダムは私たちの子孫にとって巨大な負の遺産となるダムですので、中止すべきです。
このような公益性のない八ッ場ダム事業について、住民を無理やり追い出す土地の強制収用を可能にする事業認定を行うことに反対します。
1 首都圏の水需要の縮小で八ッ場ダムの水源開発の必要性は皆無になっている
首都圏の水道の給水量は最近20年間、ほぼ減少の一途を辿っており、最近20年間の減少量は八ッ場ダムの開発水量の1.5倍以上になっています。首都圏の工業用水も減り続けています。一方で、ダム等の水源開発が次々と完成してきたことにより、首都圏では水余りが年々進行しています。
八ッ場ダムの最大の利水参画者である東京都の水道給水量も、最近20年間に八ッ場ダムの開発水量に匹敵する水量が減っています。ところが、東京都は給水量が現状の1.3倍まで急増していくという架空予測を行って、八ッ場ダムの水源が必要だという虚構をつくり上げています。八ッ場ダムの利水事業に参画する他県(埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県)も同様です。
これからは首都圏の人口も減少傾向になりますので、水道用水が縮小の一途を辿っていくことは必至であり、水余りがますます顕著になっていきます。このように水余りが一層進む時代において八ッ場ダムによる水源開発が不要であることは明白です。
2 利根川の河川改修の進捗で治水対策として八ッ場ダムは無意味になっている
八ッ場ダムの構想の始まりは1947年のカスリーン台風洪水にありますが、利根川はカスリーン台風後に河川改修がどんどん進められ、今は十分な流下能力があります。河川改修の進捗により、利根川では洪水時の越流がなくなり、大きな洪水が来ても、堤防よりはるかに下の方を流れるようになっています。
八ッ場ダムの治水効果は利根川では最も効果がある場合でも十数cmの水位低下しかありませんので、利根川の治水対策として八ッ場ダムは何の意味もありません。
さらに、カスリーン台風時にたとえ八ッ場ダムがあっても、ダム集水域は雨量が少なかったので、その効果がゼロであったことも国土交通省のデータにより明らかになっています。
国の財政事情が悪化している現在、無意味な八ッ場ダムに巨額の河川予算を投じている場合ではありません。利根川の流域住民の安全を確保するために、その予算を利根川の喫緊の治水対策である内水氾濫対策や脆弱な堤防の強化対策に回すべきです。
3 八ッ場ダム予定地は地質が脆弱であるので、地すべり等災害を誘発する危険性が高い
八ッ場ダム貯水池予定地は、上流域に活火山である浅間山と草津白根山がある火山地帯であるので、その影響で脆弱な地層が広く分布しています。そのため、ダム完成後に貯水して水位を上下させると、地すべりを誘発する危険性が十分にあります。
国交省の10年以上前の調査でもダム貯水池予定地で地すべりの可能性があるところが22か所に及んでいます。しかし、八ッ場ダムの地すべり対策費は現在はたった6億円しかなく、国交省は安全性を犠牲にしてダム建設にまい進しています。
水没予定地住民の移転代替地は八ッ場ダム貯水池の周りに造成されており、地すべりなどの災害はこれまでダム事業の犠牲になってきた住民の生活を脅かすことになります。
試験湛水による水位の上下で地すべりが誘発された場合は地すべり対策工事に追われ、大滝ダム(奈良県)や滝沢ダム(埼玉県)のように、八ッ場ダムの完成が5~10年延びることが予想されます。
4 国の名勝・吾妻渓谷が台無しになり、水没予定地のかけがえのない自然が失われる
名勝・吾妻渓谷は奇岩怪岩が立ち並ぶ3.5kmの渓谷で、その美しさから“関東の耶馬溪”とも称され、大勢の観光客が訪れてきました。
その上流部1/4がダム本体工事の予定地であって、現在進行中の工事で渓谷の様相が大きく変わりつつあります。
ダムができれば、破壊から免れる吾妻渓谷の中下流部も今の美しさを維持することができません。この渓谷の魅力は屹立する岩壁の美しさにあります。それは時折来る洪水が岩肌の表面を洗い流してくれるからですが、ダムが洪水を貯留するようになれば、その機会が激減し、岩肌をコケが覆い、草が生い茂って魅力が乏しい渓谷に変ってしまいます。
利根川水系の下久保ダムの直下にある三波石峡はかつては大勢の観光客が訪れる渓谷でしたが、下久保ダム完成後は渓谷の自然美が失われ、観光客が大幅に減ってしまいました。吾妻渓谷も同じ運命を辿ることになります。
吾妻渓谷だけではありません。ダム予定地は国の天然記念物・川原湯岩脈をはじめとする類まれな景観に恵まれた地域であり、鳥類の生態系の頂点に位置するクマタカをはじめとして、絶滅が危惧される貴重な動植物が数多く棲息していますが、これらの動植物を育んできた自然も、ダムができれば失われてしまいます。
5 水没予定地のかけがえのない歴史遺産が失われます
八ッ場ダム予定地は、縄文時代・草創期から江戸時代・天明期に至る遺跡の宝庫です。豊かな自然と湧き水に恵まれたダム予定地には古来から人々が集落をつくって住み暮らしてきました。江戸天明三年の浅間山大噴火で流化した泥流は、吾妻川沿いの集落を覆い、その結果、集落全体がタイムカプセルのような良好な状態で現在に蘇ることになりました。地域振興の核になりうるこれらの遺跡群も、ダムができれば失われてしまいます。
6 八ッ場ダム湖は水質の悪化が必至で、観光資源にはなりません
国交省は八ッ場ダムができれば、満々と水をたたえるダム湖が眼前に広がるから、それが観光資源になると宣伝していますが、八ッ場ダム湖はそのようなダム湖にはなりません。
利根川水系の既設ダムは上流部または最上流部にあるのに対して、八ッ場ダムは吾妻川の中流部に位置するため、その上流には大勢の人が住み、また、草津温泉など、観光地がいくつもあるため、大勢の観光客が訪れます。さらに、北軽井沢では酪農が営まれているため、沢山の栄養物がダム湖に流れ込んできます。そのような水を貯めれば、植物プランクトンの異常増殖が進行し、水質がひどく悪化することは必至です。
このダムは、洪水調節容量が大きいため、洪水を貯留できるように観光シーズンの夏季に水位を大きく下げるダムです。
そのため、八ッ場ダム湖は底の方にたまった水が植物プランクトンの異常増殖で異様な色を呈する湖になるに違いありません。とても観光資源にはならず、地元にも恩恵をもたらしません。
7 八ッ場ダム湖は計画よりはるかに堆砂が早く進行して機能が低下していきます
八ッ場ダムの上流域は地層が新しいので、土砂の流出が多く、計画よりはるかに早くダム湖は土砂で埋まり、八ッ場ダムの治水利水機能が早く低下していき、約50年で夏期の利水容量が半減します。八ッ場ダムは無理して造っても未来永劫使えるものではありません。
さらに、ダム湖上流側の堆砂の進行は、流入する吾妻川の河床を上昇させ、ダム湖予定地上流に位置する長野原町中心部で氾濫が起きる危険性を生じさせます。
8 ダム事業費の大幅増額は必至で、流域住民、国民の負担が増すばかりです
八ッ場ダムは今後、事業費の大幅増額が避けられません。2011年度に国交省が行った八ッ場ダムの検証でも事業費の増額が必要であることが示されました。追加的な地すべり対策などで、合わせて183億円です。
実際にはそれだけではすみません。地形条件の悪い中で代替地を無理してつくっているので、その整備費用がきわめて高額になっており、その大半が事業費に上乗せされます。
東京電力への減電補償もあります。現在、東京電力㈱の水力発電所が吾妻川の水の大半を取水しているので、八ッ場ダムで貯水するためには発電所への送水量を大幅に減らさざるを得ず、その発電量の減少に対して東電への減電補償が必要になります
そして、試験湛水中に地すべりが起きれば、大滝ダムのように地すべり対策費が膨張することも予想されます。
これらの要因も合わせると、500億円以上の増額になることが予想されます。
必要性が皆無で、様々な災いをもたらす八ッ場ダムのために流域住民と国民の負担がますます増えていくことは到底許されないことです。八ッ場ダム事業は直ちに中止べきです。
水没予定地の川原畑地区から川原湯地区を望む。強制収用を可能とする八ッ場ダムの事業認定は、全水没予定のこの二地区を最初に対象とすることになりました。事業認定手続きを不服として、公聴会開催を求める声、意見を提出する動きが地元からも上がっています。