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大戸川ダムをめぐる集会と公聴会

 滋賀県の大戸川ダム計画は、起業者である国交省近畿地方整備局が2005年に中止方針を発表しましたが、その後の河川行政の逆流により、2月8日、同じ近畿地方整備局によって推進の姿勢が打ち出されました。

 この大戸川ダム計画をめぐって、ダム中止を支持してきた前・滋賀県知事の嘉田由紀子氏が代表を務める団体による集会と国交省による公聴会がそれぞれ開催されました。
 関連記事を転載します。

◆2016年2月28日 京都新聞
 http://kyoto-np.co.jp/politics/article/20160228000137
 -「ダム生態系影響重視を」 大戸川「継続」チームしが反対集会ー

 国が検証手続きで事実上の事業継続方針を示した大津市の大戸川ダムについて、政治団体のチームしが(代表・嘉田由紀子前滋賀県知事)が28日、同市内で集会を開いた。

大戸川が注ぐ瀬田川と下流の宇治川には固有種が生息しており、ダム建設が与える生態系への影響を重視すべきとの研究者の報告があった。

河川生態学が専門の竹門康弘・京都大准教授は、琵琶湖から流れ出る瀬田川から宇治川ではカワニナやトビケラの固有種が確認されていると説明。

「流域に貴重な生態系があり、すでに堤防や洗堰(あらいぜき)の運用で劣化しているとの認識で改善策を検討すべき」と述べた。

その上で、治水対策は「川の流下能力よりも、どれだけ被害を軽減できるかで考えるべき」として、下流の流量を重視する国の方針に批判的な見方を示した。

知事時代にダム凍結を主張した嘉田氏は「検証はダム建設のコストを重視したが、環境への影響で失われるコストも評価すべき」と指摘した。

かつて専門家会議の淀川水系流域委員会で委員長を務めた今本博健・京大名誉教授は、近畿地方整備局が検証で示した流量の前提について「だましのテクニックを使っている」と批判し、「技術的に考えてもダムは要らない」と中止を求めた。

◆2016年2月28日 朝日新聞滋賀版
 http://www.asahi.com/articles/ASJ2T6FQXJ2TPTJB017.html
 -大戸川ダム計画「有利」案巡り聴取会ー

 2009年に建設が凍結された大津市南部の大戸川ダム計画を検証している国土交通省近畿地方整備局は27日、治水案では「ダム建設が最も有利」とした報告書(素案)についての住民意見を聞く会を市内で開いた。意見を述べた8人全員が推進を求め、異論は出なかった。

 整備局が冒頭、ダムとダム以外の代替策8案を比較し、総事業費が約3500億円と最も安くなることなどをふまえて総合的にダム案が最も有利とした素案の内容を説明。その後、8人が登壇した。

 地元住民でつくる「大戸川ダム対策協議会」の元持吉治会長(65)は「抜本的な治水対策が必要と確信している。前進を歓迎する」と述べ、早期の着工を求めた。「今も大雨のたびに洪水の恐怖にさらされる」「近年の台風被害は、ダムがあれば軽減された」などの声もあった。

 国の予備調査が始まってから48年。1990年代後半、建設のための集団移転に応じた集落の住民も登壇した。「集落は賛成、反対に二分され、言い表せない苦痛を味わった。苦渋の選択をした人々がいることを考慮してもらいたい」。素案の中身に踏み込んだ意見は出なかった。

 約70人が傍聴。嘉田由紀子前知事の脱ダム方針に賛同していた大津市中心部の無職男性(74)は「何がベストか分からなくなってきた。見極めようと足を運んだが、賛成ばかりで物足りなかった」と話した。

 整備局は28日も大阪市中央区で住民聴取会を開き、29日には同区で学識経験者の意見を聞く場を設ける。その後、関係する自治体にも意見を求め、検証報告書の原案をまとめる。

■大戸川ダム計画の主な経緯■

1968年 国が予備調査を開始

 89年 国が建設事業に着手

 98年 地元・大鳥居地区住民の集団移転が完了

2003年 淀川水系流域委員会が「原則建設すべきでない」と提言

 05年 国が建設凍結方針を示す

 06年 ダム凍結を掲げる嘉田由紀子氏が知事に当選

 07年8月 国が凍結方針撤回。治水専用ダムとして建設を目指すことに

 08年4月 流域委が「ダム建設は不適切」との意見書を近畿地方整備局へ提出

   11月 滋賀、京都、大阪、三重の各知事が「河川整備計画に位置づける必要はない」との共同意見を公表

 09年3月 国が再び計画を凍結

 15年10月 検証会議が4年9カ月ぶりに再開

 16年2月 国交省が「ダム建設が有利」との検討結果を公表

◆2016年2月28日 中日新聞滋賀版
 http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20160228/CK2016022802000005.html
 -8人中7人「着工を」 大戸川ダム計画で聴取会ー

 国のダム検証で淀川水系の治水には「建設が最も有利」とされた大戸川ダム(大津市)計画について一般から意見を聞く聴取会が二十七日、大津市黒津の水のめぐみ館「アクア琵琶」であり、意見を表明した八人中七人が「早期着工を」と訴えた。

 国土交通省近畿地方整備局が検証報告を作る参考にしようと開いた。滋賀、京都、大阪の各府県民が対象で、八十人が来場した。

 演台で意見を述べた八人のうち七人は大戸川沿い在住で、建設予定地に住んでいた男性は「元はダム反対だったのに国に求められて受け入れた」と経過に触れ、着工を求めた。

 一方、大戸川沿いではない同市神領の男性は「二〇一三年の台風18号で瀬田川洗堰(あらいぜき)が全閉されたが、ダムがあっても全閉は免れなかったと思う」と述べた。

 大戸川ダムは国の河川整備計画で事業の凍結が明記されている。関係府県知事の意見を踏まえて整備計画を変えない限り、着工されない。(井上靖史)

◆2016年2月27日 京都新聞
 http://kyoto-np.co.jp/politics/article/20160227000150
 -移転住民ら「大戸川ダム早期着工を」 大津で意見聴取ー

 国土交通省近畿地方整備局は27日、大津市の「アクア琵琶」で、大戸川ダムの検証結果をまとめた報告書素案について、市民の意見を聞く場を開いた。ダム湖予定地から移転した住民らが壇上に立ち、ダム建設を最も有利とした素案について「住民の気持ちに寄り添い、評価する。流域の安全のため本体工事の早期着工を」と求めた。

 市民約80人が参加し、希望した8人が意見を述べた。大戸川ダム対策協議会会長の元持吉治さん(65)は「住民は下流域の安全を考え、苦渋の選択で移転を受け入れた経過がある。国と地方が連携し、着工を進めてほしい」と語った。ほかにも2013年の台風18号で浸水被害に遭った地区の住民らが「二度とぶれずに建設に進んでもらいたい」などと話した。素案に反対する声はなかった。

 意見を聞く場は、28日午後2時から大阪市の大阪合同庁舎でも開く。その後、学識者や関係自治体からも聞き取りし、検証手続きに反映させるという。素案についてはパブリックコメントも募っており、3月14日まで受け付ける。

◆2016年2月27日 NHK
 http://www3.nhk.or.jp/lnews/otsu/2065970161.html?t=1456614276015
 -大戸川ダム 住民から意見聞くー

 建設計画が凍結されている大津市の「大戸川ダム」について国土交通省が示した流域の治水対策としてダム建設が「最も有利だ」とする検証結果について、流域の住民から意見を聞く会合が大津市で開かれました。

 大津市の「大戸川ダム」は、下流の洪水防止などを目的に建設が計画されましたが、平成20年に地元の滋賀県や下流の大阪府や京都府の知事らが建設に反対したことなどから、計画が凍結されました。

 その後、国土交通省近畿地方整備局が改めて検証し、今月8日、ほかの案と比べて費用が低く抑えられ、流域の治水対策としてダム建設が「最も有利だ」とする結果を示しました。

 これを受けて27日、大津市で開かれた会合には地元のほか、京都や大阪などからおよそ80人が参加しました。
 このうちダムの建設予定地から移転した大津市の男性は、「下流の治水のためにも早急に着工してほしい」とダムの建設を求めました。

 国土交通省近畿地方整備局は、学識経験者や3府県の知事からも意見を聞き、最終的な事業案をまとめることにしています。

 参加した大津市の74歳の男性は、「計画が凍結された当時から状況は変わってないはずだ。地元の思いは大切だが、今の時点では賛成出来ない」と話していました。