*7/1追記 〆切日を過ぎた本日、安永候補より回答が届きましたので、回答結果を更新しました。
参院選に際し、八ッ場ダムに関する群馬県選挙区の候補者の見解を明らかにするために実施した公開アンケートは、本日が〆切でした。
三候補のうち、野党統一候補の堀越けいにん候補からいただいた回答は、「八ッ場ダムの本体工事をこのまま進めるべきではない」と、八ッ場ダム建設に反対の立場を鮮明にしたものでした。八ッ場ダム推進の立場を明らかにしている中曽根ひろぶみ候補(自民党)と安永陽候補(幸福実現党)からは回答がありませんでした。
これまで国政選挙の際に行ってきた公開アンケートでは、自民党からも回答がありましたが、中曽根事務所に問い合わせたところ、「候補者は選挙公約に、”八ッ場ダムを早期完成させ、水資源の活用・確保を図る”、と明記していることをご理解いただきたい」との説明がありました。
中曽根候補と堀越候補の見解は、すでに憲法や経済政策で真っ向から対立していますが、八ッ場ダムにおいても反対の意見であることを確認しました。
自民党は国交省と共に何十年も八ッ場ダムの早期完成を目指してきましたが、八ッ場ダム事業は工期延長と事業増額を繰り返し、治水・利水の役割を果たしていません。ダム事業が実際に進みだしてからは、地すべりの危険性、代替地の安全確保など、新たな問題が次々と浮上しています。与党の立場では具体的な個々の問題に回答するのは難しかったのかもしれませんが、責任ある立場にあるからこそ、ダム事業が直面している問題についての見解を有権者に明らかにしていただきたかったと思います。
公開アンケートの各質問に対する堀越けいにん候補、安永候補の回答を以下に太字で掲載します。(質問2、3、4の質問の回答は、複数選択可となっていました。)
質問文の全文と回答の選択肢はこちらに全文掲載しています。
1. 八ッ場ダムは64年前に構想が発表されたのち、さまざまな問題により事業が長期化してきましたが、国交省関東地方整備局は2015年1月、ようやく本体工事に着手しました。国の名勝・吾妻渓谷では、さる6月14日、減勢工のコンクリート打設が開始されたと報道されています。
八ッ場ダムの本体工事をこのまま進めるべきだと思われますか?
堀越候補 イ 進めるべきでない
安永候補 ア 八ッ場ダムの早期完成を目指す
2. 今年は渇水年とされます。利根川水系ダムの水位低下を受け、国交省関東地方整備局は6月16日より利根川の10%取水制限を実施していますが、ダムから盛んに放流した時に利根川河口堰から河川維持用水を大幅に上回る流量が海へ流出しており、ダムの過剰放流の問題が指摘されています。
八ッ場ダム計画では、利水(都市用水の開発)が八ッ場ダムの主目的の一つとされます。ただし、八ッ場ダムの夏期利水容量は2,500万立方メートルですから、八ッ場ダムができても既設の利根川水系ダムの夏期利水容量34,349万立方メートルが7%しか増えません。
一方、利根川流域の都市用水の需要は、1990年代から減少の一途を辿っており、1992年度から2013年度までの21年間に232万立方メートル/日も減りました。この減少量は八ッ場ダムの開発水量143万立方メートル/日(通年換算)の1.6倍にもなります。さらに国立社会保障・人口問題研究所は、利根川流域一都五県でも八ッ場ダムが完成する2020年代には人口減少が顕著になると推計しており、利根川流域の都市用水の需要はますます縮小していくとされています。
八ッ場ダム事業に参画している東京都、群馬県などでは、ダム完成後、水道水源として利用してきた地下水を切り捨て、利根川からの取水量を増やすことになります。
「渇水」に対して、どのような備えが必要とお考えになりますか?
堀越候補
イ 利根川水系ダムからの過剰放流を見直す。
ウ 利根川流域の水需要の縮小傾向を踏まえた水行政を進める。
エ 水質のよい地下水を自己水源として使用し続ける。
安永候補
ア 八ッ場ダムの早期完成を目指す
3. 八ッ場ダムの主目的は「利水」とともに「治水」(利根川の洪水調節)です。
昨年9月の東北・関東豪雨では、利根川支流の鬼怒川が氾濫し、流域に甚大な被害をもたらしました。鬼怒川上流には2012年度に竣工したばかりの湯西川ダムを含む四基の巨大ダムがありますが、洪水時の雨の降り方は様々であり、上流ダムで洪水調節をしても、ダム上流域以外の流域での雨量が急増すれば、中下流は氾濫の危険にさらされます。今回の鬼怒川堤防決壊はその典型例でした
利根川の治水のために、どのような対策が必要とお考えになりますか?
堀越候補
イ 上流ダムの建設を優先するこれまでの河川行政を見直し、河川改修に力を注ぐ
ウ 国交省内ですでにお蔵入りとなっている堤防強化工法(耐越水堤防工法)を導入して、破堤を防止する。
安永候補
ア 八ッ場ダムの早期完成を目指す。
ウ 国交省内ですでにお蔵入りとなっている堤防強化工法(耐越水堤防工法)を導入して、破堤を防止する。
4. 八ッ場ダム事業では水没住民の生活再建策として「現地再建ずり上がり方式」を採用したことにより、ダム湖は多くの住宅に取り囲まれることになります。住民の移転代替地は20~50メートルの高盛土による人工造成地です。しかし、八ッ場ダム予定地は地質が脆弱であり、八ッ場ダム完成後、湛水による水位の上下が地すべりを誘発する可能性が懸念されています。八ッ場ダム湖の湛水について、どのようにお考えになりますか?
堀越候補
イ 湛水後の地すべり発生の危険性について徹底した調査を行う。
ウ 湛水を行うべきではない。
安永候補
ア ダム本体完成後、予定通り試験湛水を行う。
イ 湛水後の地すべり発生の危険性について徹底した調査を行う。
5. 2009年までの自公政権下では、ダム事業費に組み込まれていた地すべり対策費は6億円弱でしたが、民主党政権下の2011年、国交省は追加の地すべり対策と代替地の安全対策に約150億円必要と試算しました。
その後、国交省は八ッ場ダム湖の湛水に備え、地すべり対策と代替地の安全対策のためのボーリング調査を実施してきましたが、調査結果は公表しておらず、増額の可能性も明らかにしていません。
地すべり対策と代替地の安全対策の費用について、どのように思われますか?
堀越候補
エ その他
「八ッ場ダムの湛水後の地すべりの危険性について徹底した調査を行い、安全性が確認されない限り建設工事は中断すべきである。」
安永候補
イ 国交省が追加の地すべり対策と代替地の安全対策を実施すべきと判断した場合は、八ッ場ダム事業費の再増額はやむをえない。