八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムの本体工事の関連予算

2013年1月30日  

 昨日、国土交通省が平成25年度予算決定概要を公表し、ホームページに掲載しました。
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002641.html  

 公共事業の推進を前面に打ち出した自公政権の復活により、八ッ場ダム本体工事の行方が注目されています。
 ダム事業に関する情報は、この中の水管理。国土保全局のデータにあります。  

 水管理・国土保全局   http://www.mlit.go.jp/common/000986328.pdf  

 上記1ページの水管理・国土保全局関係予算(一般会計国費) 6,704 億円の殆どを占めるのがダム事業に関連する治水事業等関係費 6,122 億円です。2ページの下の方には、「八ッ場ダムについては、『早期完成に向けて取り組みを進める』との基本的方針に沿って、本体工事の準備に必要な関連工事を進めるための予算を計上」という曖昧な説明があります。  

 民主党政権では2012年度の予算に「八ッ場ダムの本体工事費」が計上されましたが、予算執行の条件とされた利根川水系の河川整備計画の策定が滞り、今年度の予算は事実上、不可能な状況です。
 昨年、八ッ場ダム問題に取り組む民主党の国会議員連盟が国交省担当者へヒアリングを行った際には、今年度計上された本体工事の中身は、実質的には「工事用道路や資材置き場の設置工事などの本体工事の準備工事」であるという説明でした。 
 実際のところ、八ッ場ダムの本体工事予定地である吾妻渓谷には今もJR吾妻線が走っており、線路の付け替えはまだ先のことですから、岩盤掘削などの本格的な本体工事にすぐに着手するのは無理な話です。しかし、たとえ準備工事であっても、名勝・吾妻渓谷のさらなる破壊は免れず、そのまま本体工事着手となれば、ダム予定地は観光の面からも壊滅的な打撃を受けることは必至です。  
 ネット上で配信されている記事を見ると、ダム本体工事の着工時期についての記述はまちまちです。

 関連記事を転載します。朝日新聞の記事では、太田国交相が利根川水系の河川整備計画策定とは関係なく、八ッ場ダム本体工事の早期着工をめざす考えを示したことを伝えています。河川整備計画というハードルをなくすことで、八ッ場ダムの本体着工は民主党政権下より容易になります。ただ、「(八ッ場ダムの)本格着工が始まる」とするのは、現地の工事の状況からして時期尚早に思われます。
 NHKは自公政権になっても終わりが見えない八ッ場ダム事業に苛立つ地元の声を取り上げています。現在、八ッ場ダムの完成予定年度は2015年度とされていますが、国交省はダム本体工事に着工してから7年以上かかると試算しており、たとえ来年度に本体工事に着工し、その後の工程が順調に進んだとしても、八ッ場ダムの完成は2020年以降となります。

◆2013年1月29日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/TKY201301290431.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201301290431

 -八ツ場ダム本体関連工事、13年度着工 太田国交相表明ー

 【村田悟】太田昭宏国土交通相は29日、八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の本体関連工事を来年度に着工する考えを明らかにした。これまでも予算は計上されていたが、利根川水系の河川整備計画案がまとまり、本格着工が始まる。

 太田国交相は閣議後の会見で、ダムの着工時期を問われ、「基本的には予算が成立した後だと思う」と話した。来年度予算案には関連の事業費98億円が計上されている。このうち、本体工事のための工事用道路や作業場の建設費18億円は、今年度の未執行分がそのまま繰り越された。

 また、国交省は同日、本体工事着工の条件となっていた利根川水系の本流などの河川整備計画の原案を公表。利根川の洪水対策として、基準点の目標流量を毎秒1万7千トンとし、必要な施設として八ツ場ダムを位置づけた。

 八ツ場ダムは、民主党への政権交代直後の2009年にいったん建設中止が打ち出されたものの、治水や利水のために建設継続することが11年12月に決まった。この際、藤村修官房長官(当時)の裁定で、河川整備計画の策定が本体工事の条件とされ、予算が計上されても執行できない状態が続いていた。

 太田国交相は「(裁定には)縛られるものではない。早期の完成を目指したい」と話した。

◆2013年1月29日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130129-OYT1T01123.htm  

 -八ッ場ダム、13年度中着工目指す…河川整備案ー  

 国土交通省関東地方整備局は29日、八ッ場ダム(群馬県長野原町)の建設に向け、利根川水系の河川整備計画の原案を公表した。  
 同省は2012年度予算に本体工事の関連事業費18億円を計上していたが、計画策定が遅れているため、12年度内の着工は見送り、13年度中の早期着工を目指す。  
 八ッ場ダムは、09年9月の政権交代でダム建設が中断。その後、民主党政権が建設継続に方針を転換し、12年度予算に本体工事の関連事業費が計上された。同政権が、河川整備計画の策定を着工の条件としたことから、地元が求める12年度中の着工は困難となっていた。  国交省では、13年度予算に前年度と同額を再計上しており、太田国交相は「計画の早期策定を指示した。着工に向け、まず早期の予算成立に努める」と話した。

◆2013年1月29日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130129/fnc13012917350018-n1.htm  

 -八ツ場ダムは本体工事費計上せず 関連で49億円ー  

 八ツ場ダム(群馬県)は本体の工事費が計上されず、着工は平成26年度以降の見通しとなった。建設予定地の集落移転に伴う道路整備や、資材置き場などの関連工事費は、国費ベースで49億円が13年度予算案に盛り込まれた。  
 本体工事を始められないのは、利根川水系の洪水規模の再検証に手間取り、関連工事が進んでいないため。八ツ場ダムは民主党政権が事業中止を打ち出した後、再開を決定。自民党政権は建設方針を継承したが、完成にはさらに時間がかかりそうだ。  
 国による直轄事業と地方の補助事業を合わせたダム事業の国費全体は、24年度からほぼ横ばいとなる1073億円だった。  
 民主党政権から始まった全国のダム事業見直しは、対象83事業のうち、これまでに18事業が中止、35事業が継続となった。  

◆2013年1月29日 NHK前橋放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1065008511.html?t=1359456276104

 -ダム本体工事関連に約18億円ー

 平成25年度の国の予算案が閣議決定され、建設か中止かで揺れた群馬県の八ッ場ダムには本体工事の関連でおよそ18億円が盛り込まれました。
 こうした事業の着工は先の民主党政権が河川整備計画の策定などを条件としていましたが、自民・公明の新政権が今後、着工をどう判断するか地元は注目しています。政府は29日の閣議で平成25年度の予算案を決定しました。

 このうち県関係は八ッ場ダムに総額でおよそ98億円が計上され▼住民の移転や道路の付け替えなど生活再建事業の費用におよそ80億円、▼現場でコンクリートをつくるプラントの建設などダム本体工事の関連におよそ18億円が盛り込まれました。

 ただ、本体工事の関連については先の民主党政権が、利根川水系の河川整備計画の策定などを着工の条件としていて、29日、国土交通省関東地方整備局がその原案を発表しましたが、いつ策定に至るのか見通しは立っていません。
 本体工事の関連は今年度予算にも盛り込まれていましたが着工は見送られています。

 一方でダム湖をまたがる橋の建設や鉄道を付け替える工事など周辺の整備は進んでいて、群馬県や地元の自治体はダム本体の早期着工を国に要望するとともに自民・公明の新政権が今後、どう判断するか注目しています。
 八ッ場ダムは洪水の防止や首都圏への水の供給を目的に、国が計画を進めているもので3年余り前、当時の前原・国土交通大臣が建設中止を表明しましたが、その後、一転して建設の継続が決まっています。

◆2013年1月29日 NHK前橋放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1065103091.html?t=1359456491397

 -八ッ場ダム 地元の反応はー

 八ッ場ダムの地元、長野原町の高山欣也町長は「建設が遅れている分を取り戻す予算配分にしてほしかったので、がっかりしている。早くダムを完成させることが住民の信頼を勝ち得ることだと思っている」と話していました。
 長野原町で温泉旅館を経営する65歳の男性は「ダムを早く着工してもらって湖の湖畔にある川原湯温泉を実現してほしいです。新政権に期待したいが本当に建設が進むのかふたをあけてみないとわかりません」と話していました。
 また、温泉街で土産物店を経営する83歳の女性は「建設構想が始まってからの60年は私たちにとって長すぎました。1日も早いダムの建設をのぞんでいます」と話していました。