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鉄鋼スラグ事件 大同特殊鋼など不起訴

 大同特殊鋼渋川工場の有害な鉄鋼スラグ事件について、昨日、前橋地方検察庁は有害スラグを排出した一部上場企業(株)大同特殊鋼など三社を嫌疑不十分を理由に不起訴としました。
 八ッ場ダム事業を含む群馬県内の公共工事現場で大量に投棄・使用された鉄鋼スラグ事件を巡っては、群馬県が昨年、大同などを刑事告発、群馬県警が今年4月に書類送検していました。
 さる12月5日、国交省関東地方整備局は上武国道の工事現場で大同のスラグがみつかったことを発表、12月15日には群馬県が新たに大同のスラグ使用が判明した34工事(公共工事12ヵ所、民間工事22ヵ所)を発表しており、被害は拡大する一方です。
 (参考ページ➡「拡大するスラグ使用箇所(国交省と群馬県による12月の報道発表と関連記事)」

 この問題を追及してきた市民オンブズマン群馬は「健康被害を与えるかもしれないスラグの問題で、不起訴というのは無責任だ」と不満を述べ、検察審査会に申し立てる意向を示した、ということです(12/23 毎日新聞群馬版より)。

 大同の有害スラグ問題と八ッ場ダム事業については、ホームページのこちらにこれまでの経緯をまとめています。
 

◆2016年12月22日 18時28分 NHK前橋放送局
 http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1065510661.html
ー鉄鋼スラグ大同特殊鋼を不起訴ー

 鉄鋼の製造工程で出た有害物質を含む鉄鋼スラグの処分を無許可の業者に委託したとして、廃棄物処理法違反の疑いで書類送検された大手鉄鋼メーカーの「大同特殊鋼」などについて、前橋地方検察庁は、「鉄鋼スラグを廃棄物と認定するのは困難だ」などとして嫌疑不十分で不起訴にしました。
 名古屋市に本社がある大手鉄鋼メーカーの「大同特殊鋼」は、平成23年3月からおよそ1年間にわたって、渋川市にある工場から鉄鋼の製造工程で出た有害物質を含む鉄鋼スラグおよそ2万8300トンの処分を無許可の関連会社に委託したなどとして、関連会社など2社やそれぞれの会社の役員らあわせて5人とともに廃棄物処理法違反の疑いでことし4月に書類送検されました。
 これについて前橋地方検察庁は、「鉄鋼スラグを廃棄物と認定することや、故意だったとすることが証拠上、困難だ」として22日、嫌疑不十分で不起訴にしました。
 大同特殊鋼の広報室は、取材に対して、「弁護人を通じて全員の不起訴の連絡を受けた。皆様のご心配やご懸念に対して引き続き誠実に対応したい」とコメントしています。
 告発した群馬県の大沢知事は「不起訴処分は意外で、理由をよく確認し、今後の対応を決めたい。県としては鉄鋼スラグの使用場所や環境への影響の調査を進め、県民の安全と安心の確保に努めたい」というコメントを発表しました。

◆2016年12月22日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20161223/k00/00m/040/054000c
ー鉄鋼スラグ問題 大同特殊鋼など5人不起訴処分 前橋地検ー

 大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、前橋地検は22日、廃棄物処理法違反容疑で書類送検されていた大同特殊鋼など法人3社と、各社の役員ら計5人を不起訴処分(容疑不十分)にした。地検は「スラグは廃棄物だと立証するには疑義が残った」と説明した。

 スラグは鉄を精製する際に発生する副産物で、有害物質が含まれていなければ再生利用できる。群馬県は関係先を調査した結果、大同がスラグに環境基準を超えるフッ素が含まれていることを把握していたことや取引形態から、再生資材を装った廃棄物処理だったと判断。処理に必要な許可を受けていない会社に処理を委託したなどとして昨年9月に3社を刑事告発し、県警が今年4月に書類送検した。一方、大同は「再生資材だ」と主張していた。【尾崎修二、山本有紀】

◆2016年12月22日 読売新聞社会面
http://www.yomiuri.co.jp/national/20161222-OYT1T50092.html
ー鉄鋼スラグ処分、大同特殊鋼など不起訴にー

 鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)が、渋川工場(群馬県渋川市)から製鉄の過程で出た鉄鋼スラグを不正に処分していたとして、廃棄物処理法違反容疑で書類送検されていた同社など3社と、同社役員(57)ら5人について、前橋地検は22日、不起訴(嫌疑不十分)とした。

 同地検は「鉄鋼スラグを廃棄物と認定するには疑義がある。関係者の故意を認定することも証拠上、困難」と説明した。

 ほかに書類送検されていたのは、愛知県東海市の同社子会社「大同エコメット」と、渋川市の建設会社「佐藤建設工業」の2社、大同エコメットの役員(66)と元従業員(68)、佐藤建設工業の役員(73)、従業員(65)。

◆2016年12月23日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/articles/20161223/ddl/k10/040/153000c
ー大同特殊鋼 鉄鋼スラグ「廃棄物の証拠不十分」 大同など不起訴 地検「故意性」認めず /群馬ー

 「再生資材」か「産業廃棄物」か--。大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場から出たスラグ問題で、前橋地検は22日、書類送検された大同などを容疑不十分で不起訴とした。「廃棄物」と認定した県や県警に対し、大同側は「製品としての再生資材」と主張。地検の判断が注目されたが、不起訴の理由を「廃棄物だと立証するには証拠不十分だった」と説明する一方、「廃棄物では絶対ないという言い方はしない」と歯切れの悪いものとなった。【尾崎修二】

 不起訴になった法人は、大同のほか、佐藤建設工業(渋川市)と大同特殊鋼の子会社、大同エコメット(愛知県東海市)。

 廃棄物処理法で扱う「不要物」の定義をめぐっては、過去の最高裁の判例で、その物の性状▽排出の状況▽通常の取り扱い形態▽取引価値の有無▽事業者の意思--などを総合的に勘案して決めるのが相当と示された。

 県は、廃棄物処理法を所管する環境省と1年以上協議を重ねた上で、大同側が、スラグを環境基準を超える有害物質「フッ素」が含まれていると知りながら出荷▽販売額以上の金額を「販売管理費」名目で支払う「逆有償取引」だった--などの観点から「廃棄物」と認定。昨年9月に大同など3社を刑事告発した。

 県警も、これら2要素のほか、「製品」にもかかわらず流通経路が送検された3社間のみで完結していた点などから「廃棄物」と認定し、4月に書類送検した。

 県や県警は有害性や取引形態に着目したのに対し、地検の築雅子次席検事は、「関係者の故意性(廃棄物との自覚)の認定は、証拠上困難」とした。さらに、副産物の有効利用などを促す資源有効利用促進法に言及し、「有用な副産物は材料として利用できる、という視点もある。それらの法の趣旨に鑑みて、総合的に判断した」と述べた。

 県内では400カ所以上の工事現場でスラグ使用が発覚し、130カ所以上で環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されている。大同は「不良製品への対応」との名目で、調査や被覆工事の費用を負担している。大同の本社広報室は「皆さまのご懸念、心配に対し、引き続き誠実に対応したい」とのコメントを発表した。

関係者、驚きと落胆の声
 地検の不起訴処分に、関係者の間では驚きと落胆の声がもれた。

 県警に告発していた県の大沢正明知事は「不起訴処分は意外だ。不起訴の理由をよく確認して今後の対応を決めたい。県としては、引き続き鉄鋼スラグの使用箇所や環境への影響について調査を進め、県民の安全・安心をしっかりと確保していきたい」とコメントした。

 スラグを廃棄物と認定し、書類送検した県警生活環境課の幹部は「検察の判断について何も話すことはない」と言葉少な。ある捜査関係者は「地検が疑義があるとしたのは、大同など当事者が故意性を否定していることが大きかったのではないか。残念だが、仕方がない」と無念さをにじませた。

 スラグ問題を追及してきた「市民オンブズマン群馬」の鈴木庸事務局長は「健康被害を与えるかもしれないスラグの問題で、不起訴というのは無責任だ」と不満を述べ、検察審査会に申し立てる意向を示した。【鈴木敦子、杉直樹】

 ■大同特殊鋼のスラグを巡る問題の経緯■

2002年4月   大同特殊鋼が大同原料サービス(現大同エコメット)と鉄鋼スラグの委託加工、売買契約を締結
  09年7月   大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業の3社で鉄鋼スラグを混ぜた路盤材の製造・販売契約
  13年10月  渋川市が市スラグ砕石対策調査委員会を設置
  14年1~2月 県が3社の立ち入り検査を開始
     8月   大同特殊鋼が内部調査の結果などを公表
          国交省が調査に着手
  15年1月   鉄鋼スラグ協会が再発防止ガイドラインを改正
     9月   県が3社を県警に刑事告発
          県警が3社の本社や工場を家宅捜索
  16年4月   県警が書類送検

◆2016年12月23日 上毛新聞一面(ネット記事は冒頭のみ)
http://www.jomo-news.co.jp/ns/6914824221894911/news.html
ー大同特殊鋼を不起訴 スラグ不正処理問題で前橋地検 ー

 鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場などが環境基準を超える鉄鋼スラグを不正処理したとされる事件で、前橋地検は22日、廃棄物処理法違反(委託基準違反など)の疑いで書類送検された大同など3社と役員ら5人を、嫌疑不十分で不起訴処分とした。 「スラグを廃棄物だと認定し、立証するのに疑義がある」と結論付けた。

 築雅子次席検事は会見で「刑事裁判で求められる合理的な疑いを超すだけの立証をするには(証拠が)不十分だと判断した」などと述べた。

 大同などが故意に廃棄物としてのスラグを処分したことを立証するのも証拠上困難だったとした。法が定めた生活環境の保全の重要性や、再生資源の必要性などを総合的に考慮したと説明した。

 不起訴になったのは、大同と子会社の大同エコメット(愛知県東海市)、佐藤建設工業(渋川市)の3社と男性役員ら5人。大同特殊鋼広報部は「皆様の心配や懸念に対し、引き続き誠実に対応したい」とした。

 事件を巡っては、県が2015年に刑事告発。県警が、今年4月に書類送検していた。

 大沢正明知事は22日、「県警は『被疑事実あり』として検察官に送致しており、不起訴になったことは意外」と受け止めた。県廃棄物・リサイクル課は「刑事罰と環境面のことは別の問題」とし、スラグの使用状況と、土壌や地下水への影響調査を続ける方針を示した。

◆2016年12月23日 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161223-00000010-san-l10
ー「鉄鋼スラグ」問題嫌疑不十分で大同特殊鋼など不起訴 群馬ー

 名古屋市の鉄鋼メーカー大同特殊鋼の渋川工場から出た有害物質を含む廃棄物「鉄鋼スラグ」が県内の公共工事などで使われた問題で、前橋地検は22日、同社など3社と各社役員ら5人を不起訴処分とした。残る2社は、大同特殊鋼の子会社の大同エコメット(愛知県東海市)、佐藤建設工業(渋川市)。

 前橋地検は判断のポイントとして(1)スラグは廃棄物と認められるのか否か(2)仮に廃棄物だとして、関係者が廃棄物であると、それぞれ認識していたのか否か-を挙げた上で、いずれの点も刑事事件として裁判において十分な証拠をあげて立証していくことは困難であり、「嫌疑不十分」とした。

 昨年9月、県が刑事告発し、県警が廃棄物処理法違反の疑いで捜査。その結果、大同特殊鋼は、平成23年3月1日から翌年3月31日まで、廃棄物処理の許可を受けていない2社に約300回計約2万8300トンのスラグの処分を委託。大同エコメットは無許可のまま処理し、佐藤建設工業も同様に約1万8500トンを収集したとして今年4月、同法違反の疑いで3社と役員ら5人を書類送検していた。

 不起訴処分について、県廃棄物・リサイクル課では「不起訴処分は意外だ。今後よく理由を確認したい」とした。また、大沢正明知事は「今後とも、鉄鋼スラグの使用箇所や環境への影響について調査を進め、県民の安全・安心をしっかりと確保していきたい」とコメントした。

 県は渋川工場などへの立ち入り検査で同工場から出た鉄鋼スラグを廃棄物と認定。県によると、9月末現在で県内の公共工事337カ所、民間70カ所の計407カ所で道路の舗装などに同社のスラグが使われている。うち318カ所の環境調査の結果、スラグ134カ所、土壌86カ所から
基準値を上回る有害物質が検出されたが、人体に影響するレベルではないという。