八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

拡大するスラグ使用箇所(国交省と群馬県による12月の報道発表と関連記事)

 さる12月5日、国交省関東地方整備局高崎河川国道事務所は、上武国道の工事現場(前橋市)で有害スラグが使用されていたことを発表しました。また、12月15日には、群馬県が新たに大同特殊鋼のスラグ使用が判明した34工事(公共工事12ヵ所、民間工事22ヵ所)を発表しました。

〇国土交通省関東地方整備局ホームページより、記者発表資料 12月5日
「国道17号 上武道路 工事現場から発見された鉄鋼スラグに類似する不純物等の分析結果及び今後の対応」
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/takasaki_00000290.html
  
〇群馬県ホームページより、報道発表
【12月7日】国道17号上武道路の工事現場から鉄鋼スラグに類似する不純物が発見された件に関する調査結果について(廃棄物・リサイクル課)
 http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1700097.html

【12月15日】大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル課)
 http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1700096.html

上湯原への道 鉄鋼スラグ 大同特殊鋼の有害スラグは八ッ場ダムの事業用地でも大量に使用・投棄されたことが2014年8月に大きく報道されています。その後も次々と新たな被害が判明し、群馬県は昨年、大同など三社を刑事告発、群馬県警が今年4月に書類送検していましたが、12月22日、前橋地方検察庁は大同などスラグ事件に関わった三社を不起訴としました。不起訴のニュースはこちらにまとめています。
 八ッ場ダム予定地では、吾妻川の河川敷(ダム水没予定地)に大量に投棄されたスラグや、温泉配湯管や水道管の埋め戻し材に使用されたスラグの撤去が行われていますが、今も地表にスラグが転がっている場所(写真右上=JR川原湯温泉駅周辺)もあり、問題解決からほど遠い状況にあります。

 関連記事を転載します。

◆2016年12月18日 毎日新聞群馬版
 http://mainichi.jp/articles/20161218/ddl/k10/040/069000c
ー大同特殊鋼 有害スラグ問題 使用、新たに34カ所 計407カ所に 県調査 /群馬ー

  大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」の渋川工場から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていた問題で、県は9月末現在で新たに県内34カ所の工事でスラグが使用されていたと発表した。今年3月までの判明分と合わせ、使用箇所は計407カ所になった。新たに見つかったのは、林野庁▽渋川市▽東吾妻町--発注の公共工事12カ所と、民間工事22カ所。全使用箇所のうち環境調査を終えたのは318カ所。うち134カ所のスラグ、86カ所の土壌で、フッ素などの含有量が環境基準を超えていた。地下水への影響は見つかっていない。【鈴木敦子】

◆2016年12月16日 朝日新聞群馬版
ー新たに34カ所でスラグ使用確認 県内の工事 /群馬県ー

 大同特殊鋼渋川工場(渋川市)から排出された鉄鋼スラグをめぐる問題で、県は15日、今年度に入って9月末までに、県内で新たに公共工事と民間工事の計34カ所でスラグの使用が確認されたと発表した。これでスラグが使用された現場は計407カ所に上り、スラグが環境基準を超えたのは134カ所、土壌では86カ所に上った。

 県廃棄物・リサイクル課などによると、新たにスラグの使用がわかったのは、林野庁発注の林道9カ所、渋川市の市道と公園計2カ所、東吾妻町の1カ所、民間工事22カ所。このうちこれまでに環境調査の結果が出ている19カ所のうち17カ所で、スラグから六価クロムなどの有害物質が基準を超えていた。

 ただ、周辺の地下水への影響は確認できず、課は「生活環境にただちに影響がでる状況にない」としている。残りの15カ所は「調査中」としている。

 県のまとめでは、これまでにスラグが使われた現場は、公共工事で337カ所、民間工事は70カ所ある。しかし、環境調査が済んでいないのはそれぞれ61カ所、28カ所あり、県は工事主体や大同に調査結果を求めている。

◆2016年12月11日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201612/CK2016121102000172.html
ー鉄鋼スラグ問題 前橋の国道工事でも検出 県、業者に適正処分指示ー

 大同特殊鋼渋川工場(渋川市)が排出した有害な「鉄鋼スラグ」が公共工事で使われた問題で、国土交通省高崎河川国道事務所は、前橋市日輪寺町一帯の国道17号・上武道路の工事現場から鉄鋼スラグが見つかったと発表した。これを受け、県は鉄鋼スラグを工事現場に出荷した佐藤建設工業(同市)を廃棄物処理法に基づいて立ち入り検査し、再発防止を行政指導した。 (菅原洋)
 同事務所によると、十月上旬から中旬にかけ、工事現場約五万六千平方メートルの盛り土表面を調査した結果、十五個の不純物を確認した。不純物を分析したところ、このうち十一個が鉄鋼スラグと分かったが、土壌は環境基準値以下だった。
 県は十月下旬に佐藤建設工業に立ち入り検査し、同社の採石場から出荷された天然砕石に鉄鋼スラグが混入した可能性が高いとみている。鉄鋼スラグは同社の資材置き場二カ所でも見つかった。県は鉄鋼スラグを一部含む土砂・砕石を合計で約三百立方メートル確認し、同社に適正に処分するように指示した。
 佐藤建設工業は取材に「担当者が不在のため、コメントできない」としている。
 鉄鋼スラグは精製時に排出される砂利状の副産物。この問題では、県が二〇一五年に両社などを廃棄物処理法に違反したとして県警に刑事告発。県警は今年四月に両社などを同法違反容疑で書類送検している。
 県は八月、同法に違反したとして、佐藤建設工業が産業廃棄物に関して受けていた処分業などの許可を取り消す行政処分をした。

◆2016年12月8日 朝日新聞群馬版
ー砕石搬入業者の施設からスラグ 上武道路問題 /群馬県ー

 前橋市で建設中の上武道路の盛り土から鉄鋼スラグが見つかった問題で、県は7日の県議会環境農林委員会で、砕石を搬入した「佐藤建設工業」(渋川市小野子)の関係各所を調べた結果、採石場など4カ所からスラグが見つかったと報告した。県はスラグの適正処理などの報告を求めていたが、同社は怠っていた。

 県によると、渋川市内にある同社の採石場の作業道路でスラグが見つかった。その道路の下で採掘している際にスラグが落ちて砕石にまじり、ダンプで上武道路に向かった可能性が高いという。同社は道路にスラグを使っていたことを県に報告しておらず、県の聞き取りに「使ったことをあまり認識していなかった」と答えたという。ほかに資材置き場2カ所や本社敷地内でも確認され、約304立方メートルが回収された。県は取材に、「じくじたる思い。こういうことがないようできる限りの調査はした」と説明した。佐藤建設工業は「担当者がいなくてコメントできない」としている。

◆2016年12月6日 朝日新聞群馬版
ー上武道路の不純物、鉄鋼スラグと判明 「環境影響ない」工事再開 /群馬県ー

 前橋市日輪寺地区で建設中の上武道路の盛り土から鉄鋼スラグに似た不純物が見つかっていた問題で、国土交通省高崎河川国道事務所は5日、この不純物の多くが鉄鋼スラグだったと発表した。工事現場の土壌検査ではフッ素や六価クロムなどの化学物質は環境基準値以下で、中断していた工事は同日再開された。

 事務所や市廃棄物対策課によると、天然砕石が使われるはずの現場でみつかった不純物15個のうち、11個がスラグだった。スラグに含まれる有害物質については「個体(2〜7センチ)が小さくて正確な評価ができない」として検査しなかったという。

 スラグが見つかった3工区の工事現場(計約5万6千平方メートル)の計15カ所の盛り土からは、土壌汚染対策法で定める環境基準を超える有害物質は検出されなかった。国や県の調査を受け、市が「環境保全上の影響はない」と判断したため、国は5日から3工区の工事を再開した。

 スラグが見つかった現場の請負業者への対応について、同事務所の永江浩一郎副所長は「混入経路が確認できない」などとして盛り土の入れ替えなどの責任を求めないと話す。

 県は10月の問題発覚以降、砕石を工区に持ち込んだ渋川市小野子にある運搬業者の資材置き場などを調べていて、敷地内からスラグを発見している。県廃棄物・リサイクル課は、業者が昔に扱っていたスラグが残っていたとみている。

 大同特殊鋼の渋川工場から出荷された有害物質を含むスラグが県内各地の工事に使われていた問題で、スラグは産業廃棄物とされ、同社とこの運搬業者などが廃棄物処理法違反の疑いで書類送検されている。(上田雅文)

◆2016年12月6日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/articles/20161206/ddl/k10/040/069000c
ー不純物 前橋の工事現場に鉄鋼スラグ 砕石に混入か /群馬ー

 前橋市日輪寺町の国道17号上武道路の工事現場で不純物が見つかった問題で、国土交通省は5日、不純物は鉄鋼スラグと判明したと発表した。このスラグは、大同特殊鋼渋川工場から排出されたスラグを巡る廃棄物処理法違反事件で県警に書類送検された佐藤建設工業(渋川市)が搬入した砕石に混ざっていた可能性が高く、国は今後、上武道路の関連工事に同社の搬入資材を一切使わないよう、元請け業者に指導した。

 国交省高崎河川国道事務所によると、分析の結果、不純物の塊11個がスラグと判明し、土壌からは環境基準を下回るフッ素が検出された。

 県は2014年に佐藤建設工業に立ち入り検査を行い、スラグの適正な処分を要請したが、今回の問題を受け、改めて同社の資材置き場などを調べたところ、スラグが新たに見つかったという。

 上武道路は今年度内の全線開通に向け、前橋市上細井町-田口町(3・5キロ)間で工事が進んでいた。スラグが混入した3カ所の工事は中止していたが、5日に2カ月ぶりに再開した。【尾崎修二】