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長崎・石木ダム 著名人「計画の見直しを」

 今朝の東京新聞社会面に、石木ダムの建設に反対する地元住民への支援の輪が広がり、著名人が次々と声をあげ始めていることが大きく報じられています。伊藤せいこうさんへのインタビューは、大変わかり易く、この記事を見てインターネットで石木ダムのことを調べる人が大勢いるのではないでしょうか。

 八ッ場ダムをはじめとする全国のダム予定地では、ダム計画に反対する住民運動がこれまでもありましたが、石木ダムの反対運動では、地元住民と地元以外の多くの人々が連携するという新しい運動が展開されています。
 故郷をダムに沈めることに反対するという訴えは、その土地に代々住み暮らしてきた人々にとって、心の底からの叫びでしたが、当事者以外にはなかなか共感の輪が広がりませんでしたし、住民自体も地元以外の支援を受け付けずに内に閉じこもる傾向にあり、政官財によるダム推進に抗することができませんでした。
 石木ダムの反対運動では、ダムが利水の上でも治水の上でも不要であることを地元の人々が共有しており、行政側のダム必要論には説得力がありません。しかし、ダム行政は事業推進に都合の良い法律に守られており、反対運動を推し進めるには世論を味方につけるしかありません。

◆2017年1月9日 東京新聞
ー長崎・石木ダム 著名人「計画の見直しを」ー

DSCF9463 長崎県の石木ダム計画(川棚町)の見直しを求める活動に、作家のいとうせいこうさんや音楽家の小林武史さんといった著名人が加わっている。環境問題に取り組むアウトドア用品メーカー「パタゴニア」も新聞に意見広告を出すなどして議論を呼び掛け、水没予定地に残って反対を続ける住民へ力添えの輪が広がっている。

 水没地住民へ力添えの輪
 石木ダムは石木川が流れ込む川棚川の洪水防止と、川棚町に隣接する佐世保市の安定した水源の確保を主な目的として、二〇一三年に国が事業認定した。
 だが、予定地の十三世帯約六十人は「河川改修で治水対策はできる上、人口減少で水需要も減り、ダムは必要ない」として移転を拒否。美しい棚田やホタルが舞う清流など「日本の原風景」と呼べるような山あいの集落の抵抗は、少しずつ共感を集めてきた。

 いとうさんは、十五年に反対運動のことを聞いて現地を訪れて以降、ラジオ番組などで発信している。
「エネルギーや環境の問題など、石木ダムには日本各地が抱える課題が象徴的に含まれている。ダムに多額の税金をかけるのは非合理だと思う」と話す。
 小林さんは昨年十月、水没予定地で「失われるかもしれない美しい場所で」と題した野外ライブを催した。趣旨に賛同した歌手SaiyuさんやTOSHI-LOWさんらがステージに立ち、約七百人の観客が県内外から足を運んだ。小林さんは「同じ日本人としてつながっている。人ごととは思えなかった」と協力した理由を語る。

 パタゴニアは、ダムや水問題を取り上げたシンポジウムを長崎や東京で定期的に開いている。辻井隆行日本支社長は「ダムの建設費や維持費、環境への影響についてオープンな場でもっと議論すべきだ」と指摘する。

 シンポジウムには、いとうせいこうさんのほか俳優の伊勢谷友介さんやラジオDJのロバート・ハリスさんらも参加。インターネットのブログで言及するタレントも出てきている。いとうさんは「いろんな人が発言を始めたことは心強い。賛否にかかわらず、まずは問題に目を向け、一緒に考えてもらいたい」と呼び掛けている。

 活動に参加 いとうせいこうさん「無駄のない暮らしこそ正しい選択」

 いとうせいこうさんに話を聞いた。
ー石木ダムに関わるきっかけは。
「二〇一五年、知人から反対運動のことを聞き、現地を訪れた。住民の話では水は足りていて、人口は減っているという。ダムを造って水を確保するのではなく、今ある資源を有効に使えばいい。無駄のない暮らしこそ消費者として正しい選択だと思った」

ー建設予定地で感じたことは。
「住民はいつ立ち退かされるか分からず悲愴感があるはずなのに、みんな笑顔でいる。この問題を知らずにいたことに罪悪感を覚え、今からやれることをやりたいと思った」

ー石木ダムの反対運動は、まだ全国であまり知られていない。
「なるべく多くの人に目を向けてもらいたい。現地に行けなくても、インターネットで調べられる。意見がどうであれ、考えてもらうことが大事だ」

ー芸能界にいて、社会問題に関する発信を続けるのは大変では。
「豊かな自然は失ったら取り戻せないし、予定地の住民は先祖代々の土地や歴史を奪われてしまう。そういう不条理を前にして、知らないふりをするほうがよっぽど名誉が落ちる時代になっていると思う」

石木ダム 長崎県と佐世保市が川棚川支流の石木川に計画する多目的ダム。一九七二年に県が調査を始めたが、水没予定地域の反対で停滞。規模を縮小し、二〇一三年に国が事業認定した。これまでに約8割の用地取得が済んだが、13世帯は応じず、県は14年から強制収用の手続きに入った。住民側は15年、事業認定の取り消しを求めて長崎地裁に提訴。県側は工事現場での住民の抗議行動を禁じようと、地裁佐世保支部に仮処分を申し立てている。

—転載終わり—

 上記の記事と殆ど同じ内容の記事が1月12日の佐賀新聞に共同通信配信として掲載されました。
 http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/394632