東日本大震災で決壊した藤沼ダムが復旧し、水の供給が再開されました。
藤沼ダムの決壊による大きな犠牲は、津波や福島原発事故などの陰に隠れて、あまり知られていませんが、老朽化した全国のダムの今後を考える上で重要です。
◆2017年4月25日 毎日新聞福島版
https://mainichi.jp/articles/20170425/ddl/k07/040/024000c
ー東日本大震災 決壊の須賀川・藤沼ダム、7年ぶりに水供給再開 800世帯の水田に豊かな水 /福島ー
東日本大震災で決壊し、復旧工事が進んでいた須賀川市の農業用ダム「藤沼ダム」で24日、7年ぶりに水の供給が再開された。関係者は、田植えを前にした下流域の水田に再び豊かな水が送られ始めた様子にほっとした表情を見せながら、震災直後の惨状を振り返り、安全な運用を誓った。【笹子靖】
7年ぶりに給水が再開された農業用水
市所有の藤沼ダム(貯水量150万トン)は2011年3月11日の震災で、堤防(高さ約18・5メートル、長さ約133メートル)に亀裂が入って決壊した。鉄砲水が下流域を襲って7人が死亡、1人が行方不明となり、民家など22棟が全壊する被害が出た。
県が代行したダムの復旧工事は13年10月に着工し、約68億円をかけてダム本体の耐震強度も高めた。今年1月からはダム湖を満水にして安全性を確認する試験を実施していた。県によると、24日現在の貯水率は86%で満水にはならなかったものの、ダム本体や周辺に異常はなかった。
この日は農業用水の供給を受ける江花川沿岸土地改良区や県中農林事務所、須賀川市の関係者らがダムの堤防上に集まった。午前10時過ぎ、取水ゲートを開く操作盤のスイッチを担当者が押すと、間もなくダム湖の水が堤防下の用水路から勢いよく流れ出て、給水が再開された。
農業用水は9月ごろまで、下流域にある須賀川市内のコメ農家など約800世帯、837ヘクタールに供給される。震災後、下流域のコメ栽培は雨水などを頼りに行われてきたが、給水再開で安定した水が得られるようになり、多くの農家が大型連休に田植えをするという。
ダムの決壊時、現場で対応に追われた江花川沿岸土地改良区の事務局長、安田勝男さん(70)は給水再開を喜びながら「これで安定した水を確保できるめどが立った。災害で犠牲になった方々のことも改めて心に留め、安全安心なダムの運用に努めたい」と話した。