八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

『見え始めた終末』(川村晃生著)

 当会のアドヴァイザーである川村晃生さんより、近著『見え始めた終末』をお送りいただきました。

キャプチャ 川村先生は慶応大学で日本文学を教える傍ら、環境問題に取り組んでこられました。きっかけは専門としていた和歌の枕詞として詠われた景観が破壊されてゆくさまを目の当たりにしたことだといいます。

 八ッ場ダムに関しては、ダム建設による名勝・吾妻渓谷の景観破壊がいかに大きな損失であるかを訴え、ダム予定地の遺跡保存を求める文化関係者のアピールでもお力添えをいただきました。現在は、リニア新幹線に反対する訴訟の原告団長を務めておられます。

 取り返しのつかない自然破壊に対して、不感症になっている人、見て見ぬふりをする人が多い中、現実を直視し、言行一致の姿勢を貫いている著者は稀有な存在といえます。本書では、古人が和歌に詠んだ枕詞や焼き畑の風景、旅に生きた西行や芭蕉の人生観、近代文明に直面した夏目漱石の苦悩などを題材として、日本文学の視点から現代社会を痛烈に批判しています。

 三弥井書店のホームページより
 http://www.miyaishoten.co.jp/main/003/3-11/miehajimetasyuumatu.html
 見え始めた終末 「文明盲信」のゆくえ

 科学と経済に支配され、人間の退化が始まった。
 いま問われる「正しく絶望する力」とは?
 そして「文学の力」とは?

序章 見え始めた終末

第一章 「自然」と生きる──古典文学に学ぶこと
一 「自然」と生きる
二 焼畑のうた
三 西行と芭蕉

第二章 壊れゆく景観
一 破壊される「歌枕」
二 景観の力とは何か
三 蝕まれる水辺

第三章 〈文学〉から〈近代〉を問う
一 科学から来る不安
二 祝島から仙崎へ──〈文学〉から〈近代〉を問う旅──
三 スピードの原罪──文明論としてのリニア──
四 文学から原発を考える──文学の危機──
五 リンゴ村から──近代都鄙史の一断面──

第四章 エッセイ雑纂
一 なまよみの甲斐の大雪
二 過疎と景観 生業軸に再生へ
三 金に喰われた国
四 戦車と月見草
五 「敗北」は抱きしめられたのか
六 夢か破局かリニア新幹線のゆくえ

終章 文学が描く未来社会
三つのユートピア──安藤昌益の夢──