八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業による付け替え道路全通

 八ッ場ダム事業では、ダム本体工事より道路建設費の方がはるかに大きな予算が割り振られています。
 ダム事業における道路建設の多くは、水没補償として建設される「付け替え道路」です。補償の対象となる水没予定地の道路や橋の「付け替え」という意味ですが、「付け替え」という言葉からは想像できないほど、規模が大きなものです。

白砂川橋写真右=付け替え県道の一つ、県道長野原線の長野原諏訪大橋。今月24日に開通式が行われた。白砂川に架かっていることから、工事中は「白砂川橋」という仮名がついていた。2016年4月18日撮影。

 八ッ場ダム事業による「付け替え道路」が6月24日に全線開通することは、5月の上毛新聞で予告されていましたが、昨日、同紙一面に、県道長野原線の長野原諏訪大橋の開通式のカラー写真とともに、改めて関連記事が掲載されました。

 「付け替え県道」は、川原湯温泉街の坂道を上る一キロ足らずの「川原湯川原湯停車場線」が八ッ場ダムに沈むことから建設されましたが、以下の上毛新聞の記事にあるように、「付け替え県道」は林岩下線(8.5㌔)、県道林長野原線(3.8㌔)、県道川原畑大戸線(1.3㌔)の三本があり、総延長は13㌔を越えています。

諏訪大橋-2 長野原諏訪大橋は八ッ場ダム完成後、ダム湖の上流端となるJR吾妻線・長野原草津口駅から徒歩1~2分のところにあります。
 駅前広場から旧国道沿いを吾妻川の上流方向へ歩いていくと、右手に巨大な橋が見えてきます。ここは、草津白根山の方から流れてくる白砂川が吾妻川に注ぐ地点です。旧国道をそのまま歩いていくと、長野原町役場や商店街があるのですが、町役場は長野原草津口駅の前に移転することになっており、商店街は人口減少によって寂れてしまっています。
 諏訪大橋の脇には真田氏ゆかりの長野原諏訪神社や長野原城址があり、いずれも長野原合戦(1563年)の古戦場跡ですが、観光資源として歴史が顧みられることは殆どないようです。

 付け替え道路の全通を伝える以下の上毛新聞の記事には、「八ツ場の生活再建前進」というタイトルがついています。ダム事業における道路建設は、すべて「生活再建」が名目であるからですが、過剰な道路建設は「生活再建」のイメージからは程遠いと言わざるをえません。
(右写真=中央に建設中の長野原諏訪大橋。長野原城址より2016年4月19日撮影)

◆2017年6月25日 上毛新聞
http://www.jomo-news.co.jp/ns/1914983510554798/news.html
ー八ツ場の生活再建前進 付け替え道路24.4キロ全通 ー

 八ツ場ダム(長野原町)の建設に伴う生活再建事業で、「付け替え道路」として整備が進められてきた県道林長野原線が24日、開通した。

 整備が続いた国道と県道の4路線の総延長24.4キロが全線開通となり、同日開通の町道長野原向原線と合わせて式典が開かれ、関係者約50人が完成を祝った。

 開通したのは県道林長野原線の長野原諏訪大橋ー町役場付近の約500メートルと向原地区を結ぶ町道長野原向原線の約800メートル。

 町民広場で開かれた式典で、萩原睦男長野原町長は「水没5地区の生活再建事業に、さらにスピード感を持って取り組みたい」とあいさつ。県道林長野原線の長野原諏訪大橋でテープカットが行われた=写真。

 付け替え道路は、1995年度に着工。今回の開通区間を合わせ、国と県は国道145号八ッ場バイパス(10.8㌔)、県道林岩下線(8.5㌔)、県道林長野原線(3.8㌔)、県道川原畑大戸線(1.3㌔)を整備し、総工費約1200億円が投入された。