八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

石木ダム 建設めぐり長崎県と地権者 対立激化

 長崎県知事が重要政策課題に掲げているという石木ダム。
 全国のダム予定地で、住民が泣き寝入りをさせられる中、石木ダム予定地の13世帯の住民は団結して反対を貫き、支援の輪が広がっています。ダム行政はメンツにかけても工事を進めたいのでしょうが、「ダムに反対する市民をごぼう抜き、カメラマンもぶん投げて、ケガ人が出てもシフトを組んで職員を大量に動員…」(石木川まもり隊!のツイート)とは、あまりに強権的です。
 テレビはローカル局しかこの状況を伝えていません。全国放送でこうした現場の状況を伝えれば、ダム行政の強引さを多くの人が知ることになり、なぜ八ッ場ダム予定地などで犠牲になる住民がダム事業を受け入れざるをえなかったかわかるでしょう。

 毎日新聞に現地の緊迫した状況を伝える記事が掲載されています。

◆2017年9月13日 毎日新聞
 http://mainichi.jp/articles/20170913/k00/00m/040/174000c
ー石木ダム 建設めぐり長崎県と地権者 対立激化ー

 差し止め申し立て却下を潮目に
 長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)で、県と、ダムに反対する建設予定地の地権者らとの対立が激化している。1975年に事業着手したが、反対運動で長年停滞。しかし昨年末に工事差し止めを求めた住民側の仮処分申し立てを裁判所が却下したため、県側は来年度からのダム本体工事着手を目指し、今夏から作業のペースを上げている。対して地権者は「古里を奪うな」と工事現場に入り込み、警察が出動する事態となっている。

 今月6日午前、川棚町のダム事業と関連する県道付け替え工事現場のショベルカー前で、地権者らと県職員がにらみ合いを続けた。地権者らは工事を阻止しようと重機の前に座り込み、昼食もその場で食べる。県職員は妨害をやめるよう説得にあたるが、時には数人掛かりで座り込む人を持ち上げて排除することもある。

 県職員との押し合いで地権者の女性が転倒し、頭などを打って病院へ。県職員が県警に連絡し駆け付けた警察官が仲裁に入ったが抗議活動は夕方まで続いた。夏以降、現場では、こうした衝突が連日繰り広げられている。

 県が作業ペースを上げたのは「裁判の結果が大きい」(県河川課)。地権者らは昨年2月、長崎地裁佐世保支部にダム工事を差し止める仮処分を申し立てたが、同支部は12月に「工事の続行を禁止する緊急の必要性はない」と却下した。地権者側は差し止めの本訴を起こしたが、県は来年度の本体工事に向け「今年度末までに道路工事に一定のめどをつける」と強行姿勢だ。

 来年3月に任期満了を迎える中村法道知事も今年1月の記者会見で県政の重要課題として諫早湾干拓事業、九州新幹線長崎ルートとともに石木ダムを挙げ「方向性だけは示したい」と語った。

 県は7月末、工事出入り口で監視する地権者がいない未明の時間帯に複数の重機を現場に搬入。地権者らは話し合いを求めたが、交渉決裂。「このままでは工事が進んでしまう」として、工事現場の中に入って阻止活動を展開している。

 法廷闘争を続ける地権者側の弁護士は「ダムを造ってしまえば、裁判で争う以前の話になってしまう。県はそうした状況に持ち込みたいのでは」と語気を強める。抗議活動に加わっている支援者の一人は「道路工事が進むと、ここまで造ったのならダムも造っていいのではと県民世論が傾く恐れがある。必要の無いダムを造らせないためにも抗議行動を続ける」と語った。【浅野孝仁】

ことば【石木ダム建設事業】
 佐世保市への水道用水の供給や洪水対策が目的。1982年に長崎県が機動隊を動員して強制測量を実施し地権者との対立が深刻化した。現在、水没予定地に13世帯53人が住む。建設差し止め訴訟で地権者側は「ダムは治水・利水面ともに必要ない」と主張している。県は土地を強制収用するため、県収用委員会に裁決申請し審理中。