八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

水底に消えるダム論議(天声人語)

2013年3月14日

 今朝の朝日新聞、「天声人語」が八ッ場ダムのことを取り上げていますので、全文転載します。

◆天声人語)水底に消えるダム論議

 春の光に誘われて、寅さんで知られる東京の柴又を訪ねた。帝釈天の墓地にある石碑に「天明三」の字が浮かぶ。
 230年前に、浅間山大噴火の犠牲者を弔ったものだ。泥にのまれ、利根川や江戸川に流された遺体はこの辺りまで運ばれた

▼泥流に埋まった村が、群馬県で発掘された。悲劇の跡をとどめる家屋、酒蔵、磁器や煙管(きせる)が見つかっている。専門家は「貧しい山村という先入観が覆された」と評価するが、この遺跡も八ツ場(やんば)ダム建設で水没する

▼民主党政権の下、八ツ場は公共事業のあり方を問い直す現場となった。だが、華々しい「中止宣言」は工事続行を求める声にかき消され、ぶれる民主党のシンボルと化す。難読の地名を全国区にした騒ぎは、ずいぶん昔に思える

▼住民が甘んじて水没に従うほどの過疎や、60年前の計画をだらだら進めることの是非は深く論じられなかった。ダム本体は未着工でも、6千億円に近い費用の大半は周辺工事や補償に消えた。止めるには大きすぎる、ということか

▼水の確保も、大雨への備えもこれさえあれば安泰。そんな「ダム神話」が息を吹き返したかにみえる。古い付き合いの有識者を頼みに、国交省は公聴会などでガス抜きと宣伝に余念がない。原子力に負けず、こちらのムラもしぶとい

▼「ダムから日本のポンペイを守れ」。先日、学者や文化人が遺跡の保存を訴えたが、大きな広がりはない。血税の使い道を考え直すチャンスが、天災の歴史もろとも水底に沈もうとしている。

 ~~~転載終わり~~~

 記事で取り上げられている遺跡保存の呼びかけについては、こちらに掲載しています。

◆「科学者の会」、文化庁長官と国交大臣に八ッ場ダム予定地の遺跡保存を要望
 https://yamba-net.org/wp/?p=2323

◆文化関係者らアピール、八ッ場ダム予定地の遺跡保存もとめる科学者の会に呼応
 https://yamba-net.org/wp/?p=2326