2013年3月19日
国交省関東地方整備局は、八ッ場ダム計画の上位計画に当たる利根川水系河川整備計画に八ッ場ダムを位置づける為、河川整備計画の策定作業を進めてきました。その一環として開かれてきた利根川・江戸川有識者会議が、昨日の会議をもって打ち切られることになりました。
有識者会議には民主党の推薦により、昨年9月以降、これまでの河川行政に批判的な有識者二名(大熊孝新潟大名誉教授、関良基拓殖大准教授)が加わり、八ッ場ダムなどをめぐり、国交省の方針を支持する委員らと激しい議論が続いてきました。しかし、有識者会議を招集してきた国交省関東地方整備局は、これまでの方針を見直す気配はなく、決定権はあくまで行政にあるという姿勢を崩していません。
関連記事を転載します。
◆2013年3月19日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130319100580001.html
ー八ツ場巡る有識者会議、打ち切り方針ー
「意見は出そろった」。八ツ場ダム(長野原町)を含む利根川・江戸川河川整備計画の原案を議論する有識者会議について、国土交通省関東地方整備局は18日、打ち切る方針を示した。ダム見直し派の委員や市民団体は「八ツ場ダムを造るための見切り発車」と猛反発している。
利根川・江戸川有識者会議(21人)は1月29日に整備局が原案を公表後、18日を含め4回開催。18日は委員12人が出席し、専門の立場から発言したが、座長の宮村忠・関東学院大名誉教授らは「同じ議論の繰り返し」と早期終結を求めた。
これを受け、整備局の泊宏河川部長は終了時、「原案への意見は出そろったと考える。追加の意見は書面でいただきたい」と発言。整備局幹部は会合後の取材に「有識者会議は終了する方向で整備局としての対応を検討する」と、打ち切りの方針を明言した。
原案は、70~80年に1度起こりうる洪水に耐えるとし、基準地点(伊勢崎市八斗島)の目標流量を毎秒1万7千トンに設定。他の河川より厳しい値にして八ツ場ダムの必要性を強調する内容で、事業費を負担する群馬など6都県は大筋で支持している。長野原町や地元住民には、ダム本体の早期着工を求める声が強い。
整備局は「有識者会議は学識経験者の意見を聴く場で、何かを決めるわけではない」とし、整備計画の早期策定を目指す考えを繰り返してきた。河川法に基づき、関係住民の意見聴取や公聴会は実施済み。今後、整備局が修正案を示したうえで、群馬を含む関係6都県知事らの意見を聴き、策定する方針だ。
自公政権は、民主政権とは異なり、河川整備計画を八ツ場ダムの本体着工の条件にしていない。だが、河川整備計画は八ツ場ダムの上位計画に当たり、整備局は着工前に策定する手順を踏むことで、批判をかわす狙いがあるとみられる。
ダム見直し派は、この状況に反発を強めている。
終了後の会見で、見直し派委員の大熊孝・新潟大名誉教授は「整備計画でかかる事業費にスーパー堤防を含めていないなど問題点はたくさんある」、関良基・拓殖大准教授は「国交省は八ツ場ダムを造るために民主主義のプロセスを壊している」と批判。34の市民団体でつくる「利根川流域市民委員会」の嶋津暉之・共同代表も「有識者会議を設置した2006年当時、整備局は『繰り返し議論して修正する』と発言した。約束違反だ」と主張した。
今後、見直し派の市民団体と学者で抗議声明を出し、賛同者で「代替案」を作るなどして世論に訴えていくという。(小林誠一)
◆2013年3月19日 上毛新聞
-河川整備計画原案 有識者会議を終了 国交省方針ー
利根川水系の河川整備計画策定に向け、国土交通省関東地方整備局は18日、都内で有識者会議を開き、八ッ場ダム建設を盛り込んだ計画原案について意見を聞いた。同局は「原案に対する意見が出そろった」として、会議を終了する方針を示した。
同局は今後、有識者会議や公聴会などで寄せられた意見を踏まえながら計画案を作成し、関係6都県に示す考え。
八ッ場ダム建設に反対する市民団体「利根川流域市民委員会」は同日、反対派の有識者とともに記者会見した。共同代表を務める嶋津暉之さんが「計画策定をなぜ急ぐのか。八ッ場ダム本体関連工事の早期着工のためとしか考えられない」と批判した。