「八ッ場ダム分譲基準交渉 川原湯地区が合意」(上毛新聞)

2005年5月2日
 地元紙、上毛新聞は、水没予定地、川原湯地区で開催された代替地交渉の会議について、5月1日、一面トップで記事を掲載。妥結に至るしか道がなかった川原湯の苦悩を詳しく報じています。
 住民が納得しないまま交渉が終了し、川原湯再建はどうなってしまうのでしょうか?

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上毛新聞(2005.5.1)より
『八ッ場ダム分譲基準交渉 川原湯地区が同意』
 長野原町の八ツ場ダム建設に伴う代替地の分譲基準交渉で、水没五地区(川原湯、川原畑、林、横壁、長野原)のうち川原湯地区のダム対策委員会が三十日夜、同町の八ツ場ダム総合相談センターで開かれ、川原湯地区が国土交通省提示の分譲価格に合意する意向を示した。これにより五地区が合意を了承した。五地区による代替地分譲基準連合交渉委員会(萩原昭朗委員長)は、近く委員会を招集し合意に向けた協議を進める。

 温泉地である川原湯地区は温泉街の価格が通常の住宅地の三割増になっている点に強く反発していた。協議では、出席会員で意見が分かれ結論が出ないまま多数決を行い、「合意了承」の意見が多数を占めた。同地区の豊田治明ダム対策委員長は、上毛新聞社の取材に対し「納得できる価格ではないが交渉も長期化したので、多数決の結果を受け、やむを得ず受け入れることにした」と語った。

 川原湯地区の合意を受け、連合交渉委員会は、委員会を招集し各地区の意思を確認した後、同省に分譲価格に同意する意思を伝える。

 今後、個別交渉と分譲する土地の面積の上限や分譲の条件などを定める分譲基準交渉が進められる。

 二〇〇三年十二月から進められてきた分譲価格交渉が妥結する見通しとなり、各地区では代替地移転後のまちづくりの協議が具体化する。

 同省は本年度中に予定される代替地への移転開始のため移転希望者対象に意向調査を実施。川原湯地区は代替地の一つ、打越地区でのまちづくりプランをまとめている。

◎解説

 二〇〇三年十二月から続けられてきた八ツ場ダム代替地の分譲価格交渉がようやく合意にこぎ着けた。目前に迫る代替地への移転開始とゼロ回答が示された価格交渉の限界。半世紀にわたるダム問題に疲弊する水没住民には、妥結という選択肢しか残されていなかった。

 水没住民が納得したうえでの妥結ではない。要望の価格とは数万円の開きがある。各地区ダム対策委員会幹部は合意の姿勢を示した会議で「価格は不満。でも価格が下がらないなら前向きにまちづくりに取り組むしかない」と本音を語った。

 計画浮上から長い年月が経過し、地権者の多くが高齢となった。「生きているうちに代替地に移りたい」と漏らす人もいる。交渉の限界に達し、「これ以上延ばしても意味がない」という雰囲気が覆った。

 転出者増加も妥結に影響した。移転対象者四百二十二世帯のうち百八十六世帯が町内外に移転。地域の機能を維持できるか疑問視する声が出ており、妥結で転出者を減らそうとする意図もあった。

 今後、本年度中に代替地への移転が始まり、生活再建に向けまちづくりが本格化する。水没住民が代替地を新たな“ふるさと”と一日でも早く思えるよう、地元、県、国が一体となりまちづくりを進めてほしい。

(新井)