「代替地交渉の終了」

2005年5月11日
 水没予定地では、代替地価格をめぐって、紛糾してきた国との交渉が、連合交渉委員会の発表によって終了しました。
 遅れる代替地の造成工事、周辺地価をかるく2~3倍は上回る分譲価格ー国と地元との40年にわたる交渉の結末は、ダム事業の重要な柱である生活再建計画が、住民に大きな犠牲を強いる実態を改めて露呈しました。
 今後、「意向調査」が実施されますが、長年、ダム計画によって被害を蒙ってきた、水没予定地の地域再生に向けての真の公共事業は、いつになったら実施されるのでしょうか。
 
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讀賣新聞群馬版(2005.5.1)より転載

「交渉委、合意を確認 1年5か月、正式妥結へ 」

八ッ場ダム代替地分譲
 長野原町の八ッ場ダム建設に伴う水没住民の移転代替地分譲で、水没5地区の連合交渉委員会(萩原昭朗委員長)は10日夜、国土交通省が提示した分譲基準価格に合意する方針を確認した。今後、細部の調整をしたうえ同省と協定を結び、1年5か月にわたった住民側と同省との交渉は正式に妥結する。
 同町とダム下流の吾妻町がともに国と合意している用地補償と併せ、同ダムを巡る国と住民団体側との交渉はすべて収束し、個別の交渉だけとなる。
 分譲基準価格を巡っては、5地区のうち最後まで難色を示してきた川原湯地区のダム対策委員会が4月30日、総会で無記名投票を行った結果、賛成多数で受け入れを決めた。10日夜の連合交渉委の会合で、川原湯地区役員が結論を報告。5地区の総意として基準価格の受け入れを決めた。
 2003年12月に同省が最初の基準価格を提示して以降、住民側は引き下げを求め再三、同省側に要望。川原湯地区を除く川原畑、林、横壁、長野原の4地区は、05年3月までに合意していた。
 萩原委員長は「不満が相当ある中で、各地区がよくまとめてくれた。生活再建に向けた大きな一歩」と話した。
 同省の安田吾郎・同ダム工事事務所長は「早期に代替地を整備し提供する過程に移りたい。(移転希望者の)意向調査も丁寧に行い、しっかりとした生活の礎をつくっていく」とした。

●残る不満、進む住民流出
「現地再建」見直し必至

~解説~
 5地区の連合交渉委が分譲基準価格に合意したことで、八ッ場ダムは2010年度完成へ一つの「区切り」を迎えた。
 だが、住民側がすべて納得した上での合意ではない。川原湯地区は、温泉街を抱える事情も絡んで最後まで反発が残った。
 30日の川原湯地区総会では、「穏便に話し合いでまとめたかった」(役員)との考えに対し、「現状の価格では生活再建は難しい」との声がやまず、多数決に踏み切らざるをえなかった。賛成多数で地区としての合意は取り付けた形だが、不満はくすぶる。
 豊田治明・川原湯地区対策委員長は「ダムで犠牲を強いられるのに、価格は一般の土地取引より割高だ。到底満足できないが、生活再建へ、やむを得ず受け入れを決めた」と”苦渋の選択”だったと説明する。
 交渉長期化の陰で、住民の地区外流出は確実に進んでいる。川原湯地区はかつての約200世帯が約70世帯に減少した。30日の総会に出席したのは約40人に過ぎず、11人が反対だった。
 価格への不満が流出に拍車をかける懸念もあり、実際に代替地に移転するのは当初見込みをはるかに下回るとみられる。「現地再建」に向けた計画見直しも必至となっている。(武田泰介)