2005年10月1日 讀賣新聞群馬版より転載
「県が一部先行取得 八ッ場ダム代替地、造成急げ
-補正予算案9億円計上 国交省予算減受け」
長野原町の八ッ場ダム建設計画で、県は水没住民の移転代替地の一部を今年度、事業主体の国土交通省に代わって先行取得する方針を決めた。取得費用として、9月定例県議会に提出した補正予算案に約9億1000万円が盛り込まれた。同省の今年度予算減額に伴う異例の措置で、代替地造成を急ぎ、事業の遅れなどから加速する住民の地区外転出を食い止める狙いがある。取得用地は来年度以降、同省に売却する。
同省や県特定ダム対策課によると、移転代替地は水没5地区約160世帯などを対象に、ダム予定地の高台に10か所ほど計52・7ヘクタールの造成を予定している。しかし、買収済みは今年3月末現在、11・5ヘクタール(21・8%)にとどまっている。
同省と住民側は9月7日、代替地の分譲基準を正式に合意した。2006年3月にも分譲が開始される予定で、同省は今年度と来年度で造成予定面積のほとんどを買収したい考えだ。
だが、八ッ場ダム事業に関する国の今年度予算は、同省が要求した300億円に対し、20億円少ない280億円にとどまった。減額分には代替地の買収費用の一部が含まれ、同省だけでは来年度までの目標面積の取得が困難と判断。同省側が、県に用地の先行取得を要請していた。
県も、水没地区住民の「現地生活再建」の早期推進を図るため、同省への協力が必要と判断した。
代替地取得は、県土地開発公社が銀行から融資を受けて行う。県は同公社に対する債務負担行為を行い、補正予算案に「用地先行取得」名目で計上した。
代替地は最大6・4ヘクタール分の取得を予定。取得場所は、10月中にもまとまる住民意向調査の結果を踏まえて判断する。
水没地区住民の代替地移転を巡っては、計画浮上から50年以上が過ぎ、建設の遅れや分譲価格への不満から、現地居住に見切りをつけた住民が次々と町外へ転出。計画当初の約340世帯が今では半数以下に減っている。住民意向調査次第では、造成地区や面積の見直しも迫られる状況だ。
県特定ダム対策課は「県は国と(水没地区の高台への)『ずり上がり方式』による現地再建を進めてきた。今は住民をいかに地元にとどめるかが最大課題。そのためにも短期間で用地買収を行う必要があり、緊急性から(先行取得を)決めた」と説明している。