八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

水没地住民の生活再建問題に関する公開質問書

2005年11月18日
 八ッ場ダムを考える会では、本日、以下の公開質問書を国土交通省現地事務所および群馬県特定ダム対策課に送付しました。
 
■八ッ場ダム水没地住民の生活再建問題に関する公開質問書■

 半世紀以上の歴史がある八ッ場ダム計画においては、当初より水没住民の生活再建が大きな課題でした。関係都県の水あまり現象、利根川治水計画の欠陥など、ダムの不要性について議論が高まる中、八ッ場ダム予定地の住民が置かれている状況は、多くの人々が懸念するところです。
代替地交渉が終了した今、様々な問題点が浮き彫りになってきています。これらの問題点について下記のとおり質問いたしますので、文書でご回答くださるよう、お願いいたします。
なお、ご回答は、本会のホームページに掲載すると共に、マスコミ各社にお伝えしますことをご了承下さい。誠意ある回答をお願いいたします。

【質問1】
ダム構想浮上以来、長年、水没予定地では反対闘争がありましたが、1985年、疲弊した地元が生活再建案を受け入れたことで、反対闘争は転機を迎えました。建設省と県が作成したこの案では、水没地区を山側の中腹に移転させる“現地再建ずり上がり方式”が採用されました。しかし、すでに6割以上の人が転出し、現地再建は当初の約束と大きく変わってきています。生活再建の現状について、地元では、「約束が違う」という声がしばしば聞かれます。当初の約束と大きく変わったことについてご見解をお示し下さい。

【質問2】
1990年代、ダム計画を受け入れた地元住民は、生活再建の基本となる代替地の早期完成を再三要望し、建設省と群馬県は補償基準妥結時には移転可能と言明しています。しかしながら、補償基準妥結から4年経た2005年現在、未だに代替地は完成していません。その理由をお示しください。

【質問3】
水没予定地では、代替地の分譲価格が高額であることも住民流出の原因と指摘されています。居住環境が極めて劣悪な八ッ場ダムの代替地分譲価格が、周辺地の地価、先行ダムの代替地価格より高額となったのは何故でしょうか?

【質問4】
代替地の意向調査では、移転の希望を調査し、その結果によって造成規模を縮小するとされています。通常の土地売買では、購入者は実際に分譲地を見てから購入を決定します。造成が終わらず、ライフラインが未整備の土地について、紙面上で希望を出させるという手法は住民軽視と思われます。このことについてご見解をお示し下さい。

【質問5】
水没予定地の最大集落である川原湯地区は、温泉街を抱え、当初、約200世帯ありましたが、代替地移転の希望は30世帯余にとどまっています。代替地は標高の高い北斜面を切り開いた所にあり、巨大なロックフィルの擁壁、防災ダムに囲まれ、自然環境が破壊された最悪の条件の中で再出発しなければなりません。吾妻渓谷の景観美に恵まれ、自然湧出の優れた泉質を誇る川原湯温泉が代替地で存続する見通しは厳しいものがあります。代替地での温泉の立地条件と、代替地の居住環境についてご見解をお示し下さい。

【質問6】
代替地分譲開始は今年度とされていますが、実際の分譲開始時期、造成規模について、現在の代替地計画の内容を明らかにして下さい。

【質問7】
盛り土した造成地が居住可能となるためには、相当の期間が必要と考えます。居住可能となるための年数をお示し下さい。

【質問8】
地質が脆いと指摘されている代替地があると聞きます。その代替地の安全性について、ご見解をお示し下さい。

【質問9】
八ッ場ダムの事業費には、多額の税金が投入されています。9月の群馬県議会では、代替地取得費用の不足を理由に補正予算が組まれ、県が国土交通省の代わりに一部先行取得をすることが決まりました。50年以上経ても完成しない八ッ場ダムのために犠牲を強いられてきた地元住民の生活再建をダム事業の最優先課題にするべきと考えますが、このことについてご見解をお示し下さい。

【質問10】
水没予定地の住民の中には、借地・借家層など、ダム事業の手当てだけでは生活再建の見通しが立たない人々も少なくありません。このような人々の生活再建が可能となるよう、改善策を講じることが必要ですが、この改善策について、ご見解をお示し下さい。

【質問11】
水没予定地では人口減少による地域の衰退が進んでいます。八ッ場ダム水没予定地の再生について構想がありましたら、明らかにして下さい。