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「節水・外食・・・減る家庭の水道使用」(朝日新聞)

 ダム建設は、過大な水需要予測に基づいて進められてきました。良質な地下水を切り捨て、ダムによる河川水を主流とした水道事業のせいで、水道水はまずくなり、消費者はミネラルウオーター(地下水)をペットボトルで買い求めるようになりました。そのツケは水道料金の値上げとなって消費者に跳ね返ってきます。

2006年3月18日 朝日新聞より転載
『節水・外食…減る家庭の水道使用 収入減の自治体に負担』

 首都圏で家庭での水道使用量が減っている。飲み水をペットボトルに頼る人が増えたほか、家電メーカーは洗濯機などで節水を競い合っているからだ。せっかく節水努力をしているのに、神奈川県は4月から家庭用の水道料金を2割弱値上げする。予測に反して水需要が落ち込む中、ダムの水を買う費用(受水費)の負担が重くのしかかるからだという。

 「夏場の渇水対策もあり、かつては県民に節水をお願いしてきた。水余りとはいえ、もっと使って欲しいとも言えないし……」。神奈川県水道局の大山扶美雄・水道企画担当課長は、ため息交じりに話す。

 県水道局の家庭用の水道料金収入は98年度から04年度までの6年間で14億5000万円も落ち込んだ。人口は増え続けているのに、家庭で以前のように水を使わなくなったからだ。21.55立方メートルあった1世帯当たりの月間使用量は19.29立方メートルへと1割減。各家庭で毎月、風呂にざっと10回入らなくなったほどの減りようだ。

 東京都と千葉県も落ち込みは同じだ。同じ98年度から04年度までの6年間でみると、世帯数の増加を受けて全体の水道使用量は東京、千葉ともわずかに増えたが、1世帯あたりでは東京が6%、千葉は9%落ち込んだ。埼玉県では市などが家庭用の水道事業をしているため、県は使用量については把握していない。

 全国の約1500の水道事業者が加盟する日本水道協会によると、工業用や事業用の水道利用も含めた全国の人口1人あたりの1日の平均水道使用量は、95年度の391リットルが03年度は363リットルに減った。協会の担当者は「節水や水の再利用の浸透で水需要は頭打ちの状態。特に首都圏や関西圏など、都市部の水道離れが目につく」と話す。

 東京と千葉は当面は現状維持だが、両都県より水道料金が比較的低かった神奈川県は値上げに踏み切った。01年から県西部の宮ケ瀬ダムが本格稼働し、年間約60億円の受水費負担増が重いことを理由に挙げている。最近では福島市や山形県鶴岡市などもダムの受水費の負担に伴い、料金を値上げしている。

 「手洗いの場合、1回あたり水を約150リットル使うのに、食器洗い機なら1回約11リットル」「ドラム式の洗濯機なら、使う水は従来の2分の1」

 家電量販店の売り場では、食器洗い機や洗濯機の節水効果を各メーカーが競い合っている。

 「ここ最近は、節水や節電をうたっている商品から先に売れていく」(松下電器の「ナショナル」広報担当)

 日本電機工業会によると、ドラム式の洗濯機は04年度に国内で46万5000台が出荷された。食器洗い機は、95年度の22万8000台から04年度には92万7000台と4倍に増えた。

 お酢のメーカーであるミツカン(愛知県半田市)が05年に大都市圏の約600人を対象に実施した生活意識アンケートでは、「節水や水の再利用をしている」との回答は66%に上った。「風呂のお湯を洗濯や掃除に使い回す、シャワーはこまめに止めるといった節水方法をしている人の割合は増えてきている」(ミツカン水の文化センターの新美敏之事務局長)という。

 住宅設備機器メーカーのINAX(愛知県常滑市)は4月から、洗浄水の使用量をほぼ半減させる便器の新商品を売り出す予定だ。4人家族の場合、2日で風呂1杯分の節水効果が期待できるとPRする。森岡忠文・マーケティング広報室長は「商品開発の際に、節水の観点は欠かせない時代になった」。

 飲み水としての水道水離れも加速している。全国清涼飲料工業会によると、国内の水のペットボトルの生産量は96年の39万2000キロリットルから、05年には131万9000キロリットルと3倍に増えた。

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 〈水道評論家の有田一彦さんの話〉 水道使用量は各地で減っている。料金の値上げも神奈川だけでなく、全国的な傾向だ。高度成長期のままの過大な需要予測で無駄なダムを造り続けたことのツケが表面化した。水洗トイレは70年代、1回20リットル以上の水が必要だった。今は10リットル前後で済む。使用者が節水を意識しなくても水が無駄にならない時代が来たことに、行政は鋭敏にならなければならない。