「八ッ場ダム 生活再建計画見直し」-12/4

2006年12月4日 上毛新聞より転載

 長野原町の八ッ場ダム建設事業で、代替地に移転する水没5地区住民らと国、県、町などとの、生活再建計画をめぐる折衝が最終局面を迎えようとしている。移転希望者の減少から、国側は代替地の規模縮小や再建関連事業の一部見直しを提示。住民はこれをたたき台に要望の整理に着手した。
 ただ、住民の減少や高齢化で新たな課題が浮上、再建シナリオの再考を余儀なくされている。第一期分譲が年明けに迫り、早期決着を望む声は少なくない。八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会(萩原昭朗委員長)と水没5地区は、本年度末をめどに関連事業の最終案決定を目指す。

活性化へ魅力模索
年度内に最終案決定 集客や効果重視
 
〈八ッ場ダム生活再建関連事業の主な見直し項目〉
■農林業対策 
全地区 土地改良事業(畑地かんがい)
全地区 水源施設整備事業
全地区 造林及び造林作業道整備
全地区 農業経営近代化施設

■観光対策
川原湯  観光会館
川原湯  クアハウス(多目的温泉保養館)
横壁   冒険ランド
横壁・林 イベントスポーツゾーン整備

■社会生活環境対策
川原畑  公営住宅整備
全地区  地区公園

 生活再建関連事業の見直しは、全二百八十四事業のうち、六十八項目が対象となった。農林業対策が中心で、四十六事業中三十五事業で事業継続の是非を含めて再検討。レジヤー施設などの観光対策も、二十八事業中十三事業で規模の見直しや代替案を協議する。
 住民からは「見直しは仕方がない事業もあるが、その分の予算はほかに振り分けてほしい」と、歩み寄る姿勢の住民がいる一方で、「一つも減らさないで計画通り全部やってもらう」との反発の声も上がっている。
 見直しの理由には、ダム事業の長期化などに伴う移転希望者の減少と社会情勢の変化がある。国交省は昨年9月に行われた水没五地区との代替地分譲基準の調印を受け、水没三百四十一世帯を含む関係の約五百世帯を対象に代替地移転の意向調査を実施。希望者は水没世帯の四割程度にとどまった。

造成面積を縮小
 同省はこの結果を受け、造成計画面積を約五十四㌶から約三十四㌶に変更。縮小で事業地から外れた施設や事業などがあり、町づくり案再考の一因となった。
 さらに、農林業対策は、移転住民の減少と高齢化で、担い手不足や関連施設の維持管理の問題が新たに浮上した。土地改良などの事業は、耕作面積や人数に規定のある組合設立が必要だ。林業振興を目的とした「造林および造林作業道整備」など、採算性や需要を考えると実施が難しい事業もある。
 このため五地区や対策委員会は、施設規模や事業内容は現状に合わせ検討する一方、限られたスペースや人員でも活性化効果を生み出せる事業や施設内容を新たに要望する構え。
 代替地縮小で見直し対象となっている川原湯の観光会館やクアハウスは、立地や規模を再検討するものの集客拠点として重視する声が多い。横壁の「冒険ランド」は、内容を吟味してより集客力の高いものを提案する見通しだ。

地域の声集約
 今後の進め方について、萩原委員長は「近く開く会合で、五地区が見直し案に対する各地区の検討状況を始めて報告し合う。そこで、今後どのように協議を進めていくか対応を決める」と説明。国交省八ッ場ダム工事事務所は「移転する方々がよりよい生活ができるよう、さらに議論を重ね、真に必要なまちづくり案をつくっていきたい」と、柔軟に事業を検討する姿勢を示している。
 住民側にとっては短期間で生活再建事業の最終案をまとめなければならない困難がある。しかし、ダム計画浮上から半世紀以上を経て高齢化が進んでいるほか、道路や鉄路の付け替え、代替地造成工事が進む中で、住民からは「五地区全体が一つになって、ダムが生きた地域にしなくてはいけない」など、ダムをチャンスととらえる前向きな意見も出ている。(中之条支局 吉田茂樹)