地元は国交省に不信あらわ

 群馬県内の新聞では、八ッ場ダム工期延長の関連報道が続いています。地元では、55年前のダム計画発表当初から、根強い建設省不信がありました。約20年前に実質的にダム計画が受け入れられてからは、国と県が提示した生活再建案を現実的な選択とする意見が強まり、表立って行政を批判する意見はほとんど封印されてきました。しかし、ここにきて不満が噴出してきています。現状では、ずさんなダム計画のツケは、すべて住民にかぶせられ、ダムの起業者である国が失政の責任をとる気配は微塵もないのですから、これは当然の流れです。
 人間不信の国策ー八ッ場ダム計画による犠牲はいつまで続くのでしょうか?

2007年12月17日 上毛新聞より転載

「生活再建広がる不安 財政にも影響必至 八ッ場ダムの完成五年延期」

 国土交通省が長野原町に建設中の八ッ場ダムの完成年度が、2010年度から15年度に5年間延期された。00年度完成とされた当初計画(1986年発表)から15年もの遅れ。水没地区の住民には「本当にあと8年でできるのか。また、延びるんじゃないか」「何度も延期されているので、将来の計画が立てられない」など、国への不信感が募り、進まない生活再建に不安が広がる。地元長野原町の街づくりや財政への影響も避けられない状況だ。
「住民は高齢化している。このままでは、完成したときには新しい生活が成り立たないことになりかねない。本当に住民のことを考えているのか」。
 十四日夜、国交省は水没地区の住民でつくる水没関係五地区連合対策委員会への説明会で、完成年度の延期を説明し理解を求めたが、住民は不信感をあらわにした。延期の理由は代替地計画やダム本体設計の見直し、工事時間の制限など。住民が納得でいる説明ではなかった。

 住民が最も懸念するのは、工事の遅延によって転出者が増えたり、高齢化が進み、生活再建への影響が出ることだ。川原湯温泉では、多い時で約二百あった世帯数がすでに四分の一ほどに減少。これ以上転出者が増えれば温泉街として成り立たなくなる、との危機感が強まっている。

 川原湯地区対策委員長の豊田廣士さんは「商売しているわれわれは毎日が勝負。完成が分かっていれば我慢できるが、何度も先延ばしにされると気持ちが切れてしまう」と先行きの見えない計画に憤慨。工期延長で設備投資の必要性が新たに生じ、経営の負担になると指摘する。

■国に要望書
 完成の遅れは、地元長野原町の財政にも影を落とす。住民の転出で固定資産税などの町税収入が減少。水没予定地に国有地が増えているが、ダム完成までは固定資産税の代わりとなる国有資産等所在市町村交付金を受けることができない。ダム関連の仕事に携わる職員も多く、ダム完成が延びれば延びるほど財政を圧迫していくという。

 事態を重く見た大沢正明知事は、工期延長の発表後ただちに「代替地整備を約束通り二〇〇九年度までに完成させること、JR付け替え事業など基幹施設整備を早期に終了させることの二点について、特に重点的に国に申し入れる」とのコメントを発表した。町と町議会も、住民に聞き取り調査をした上で、国に要望書を出す方針だ。

 観光や農業関連施設の整備など、生活再建関連事業への工期の遅れの影響はどうか。十四日の説明会では、事業内容について国交省と県、水没住民が大筋で合意。県は事業内容と事業額をまとめ、年明けにも資金を拠出する下流都県に提示する方針だ。川滝弘之県土整備部長は県議会一二月定例会で「本年度中に(下流都県の)大枠の合意を得たい」との見通しを示した。
 工期延長に関しては基金を支出する下流都県側も「治水、利水とも八ッ場ダムに大きな期待をしており、一日も早い完成を期待したい」(埼玉県)としている。

■事業見直しも
 ただ、各県は水没地区住民の苦労に理解を示すものの、生活再建事業の具体的内容については「真に必要な事業は何かをよく話し合ってもらいたい」と精査を求めている。工期の延期に伴い住民が減るようなことがあれば、事業の見直しを迫られる可能性が否定できない。
 ダム建設計画の浮上から半世紀以上が経過。生活再建案に希望を見いだし、ダム建設反対から賛成に回った住民も多い。
 国交省は説明会で、国道145号などの付け替え道路や代替地整備を〇九年度末、JRの付け替えを一〇年度末に完成させるとした。ダム完成は遅れるが、このスケジュールを踏まえ生活再建事業をどう円滑に進めていくかが当面の大きな課題となる。

○豆辞典 八ッ場ダム
総貯水量1億750万トンの重力式コンクリートダム。洪水調節のほか、本県含め1都4県に水道・工業用水を供給する。ダムサイトは吾妻渓谷につくられ、川原湯を含む長野原町の5地区の341世帯が水没する。総事業費4600億円のうち既に3000億円近くが執行された。来週には2008年度予算案が内示される。
 本年度までの事業進ちょく率は用地取得71%(322㌶)、家屋移転66%(309世帯)、鉄道付け替え81%(8.4㌔)、道路付け替え52%(11.8㌔)。代替地の第一期分譲は5地区中3地区で始まり、来春までには残る2地区でも分譲手続きを開始する予定。(報道部 石垣光広・中之条支局 吉田茂樹)

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毎日新聞群馬版 2007年12月17日より転載

「コンクリ減らせるのか 水源開発問題連の嶋津代表 八ッ場ダムの疑問講演 前橋」

 国が長野原町で進める八ッ場ダム建設工事の中止を主張し活動する市民団体「水源開発問題全国連絡会」の嶋津暉之代表が16日、前橋市大手町3の県女性会館で 講演し、国が13日に発表した同ダム工期の5年延長や、水没地域住民らに対する生活再建の進ちょく状況などにはらんだ問題点について説明した=写真
 
 嶋津氏は東京都環境科学研究所の元研究員。講演は八ッ場ダムの問題点を研究する県国会議員や県議らの集まり「八ッ場ダム研究会」(大塚一吉代表)が主催。嶋津氏は、国による同ダム工期の5年延長について「国交省は『コンクリート使用量の減量などにより延長による事業費増額はない』と言っているが、もともと
土壌の弱いとされる建設予定地でコンクリートを減量するなんてできるのか」と述べ、 疑問視した。
 
 計画から約半世紀たった現在、下流河川の改修などが進み、利水、治水面からの必要性は失われていることを強調した上で「建設を進めることは国民に多大な経済的負担を強い、周辺環境の破壊など災いをもたらす」と訴えた。【木下訓明】