◆2008年5月31日 朝日新聞群馬版より転載
「八ッ場ダム 準備工事へ」
国土交通省八ツ場ダム工事事務所は30日、ダム本体を造る際に吾妻川の流れを一時的に迂回(う・かい)させる「仮排水トンネル」の工事を、6月に始めると発表した。ダム本体を造る場所ではこれまで調査などは行われていたが、準備工事に着手するのは初めて。
仮排水トンネルは、ダムを造る場所で工事ができるように川底を干上がらせるためのもの。JR吾妻線や国道145号の地下に、川の水を流すためのトンネル(直径8メートル、長さ390メートル)を掘る。約7億5千万円をかけ、09年10月までに完成させる見通しだ。工事を受注した大成建設が、6月10日に安全祈願祭を開く。
当初、この工事は07年度からの2年間で実施される計画だったが、1年繰り越された。水没予定地区の住民が移る代替地の造成など、事業全体の遅れが影響したという。
ダム本体の完成は15年度の予定。藤田浩・同事務所副所長は「完成年度から逆算すると、10年か11年ごろには、川底と側面の掘削工事に着手しなければならないだろう」。大沢正明知事は「1952年の計画浮上から半世紀以上を経て、本体工事と密接な関係がある工事にようやく着手することは感慨深い」とコメントした。
一方、水源開発問題全国連絡会(東京都)の嶋津暉之共同代表らは「住民の意見を反映させた河川整備計画もできていない状態で、工事を始めることは問題だ」と指摘し、着工の中止を求める抗議文を冬柴鉄三・国交相あてに送った。
今年に入り、八ツ場ダムの必要性を検証する都県議連の結成など、ダムに批判的な動きが活発になっている。「国交省は、仮排水トンネルに着工することでダムはもう止まらないのだと示し、反対派を牽制(けん・せい)しようとしている」という見方を示す関係者もいる。
徳山ダム(岐阜県)、川辺川ダム(熊本県)など、仮排水トンネル工事に着手してから本体の着工までに10年近くかかったり、10年以上たってまだ本体工事に着手していなかったりする例もある。
八ツ場ダムに公金を支出するのは違法だとして、市民団体「八ツ場ダムをストップさせる群馬の会」(鈴木庸事務局長)が県に支出の差し止めなどを求めた住民訴訟の口頭弁論が30日、前橋地裁(松丸伸一郎裁判長)であり、原告側が申請していた証人尋問が9月にも行われる見通しになった。
原告側は「八ツ場ダムは利水や治水の面で必要がなく、ダムの建設によって地滑りなどの危険を引き起こす」と主張。専門家による証人尋問を求めていた。
日程などは6月上旬に正式に決まる。
◆2008年5月31日 毎日新聞群馬版より転載
「仮排水トンネル工事 来月から本格着工」
国土交通省八ッ場ダム工事事務所は30日、6月からダム本体の準備工となる仮排水トンネル工事に本格着手すると発表した。ダム本体予定地での準備工は初めてで、来年九月の完成を目指す。仮排水トンネル工事は、本体工事の前に吾妻川の水を左岸に迂回させるもの。完成すれば本体工事に一歩近づくことになるが、JR吾妻線の付け替えが完了しないなどの理由で本体着工の見通しは立っていないという。
一方、ダム反対運動を展開する水源開発問題全国連絡会は同日、仮排水路トンネル工事の中止を求める抗議文を冬柴鉄三・国土交通相あてに提出した。抗議文では、同ダム事業が改正河川法で策定が求められている河川整備計画が示されないまま進んでいると主張している。【伊澤拓也】
◆2008年5月31日 上毛新聞より転載
「来月から八ツ場ダム本体準備工事に着手 」
国土交通省八ツ場ダム工事事務所は三十日、ダム本体の準備工事である仮排水トンネルの工事に六月から本格的に着手することを明らかにした。
ダム建設場所から一時的に川の水を迂回(うかい)させる工事。同事務所によると、すでに測量や立木伐採などの作業を開始、六月から工事進入路の工事に着手する。来年九月をめどに完成する予定という。
発表によると、トンネルは左岸に建設され、長さ三百九十メートル、高さ八メートル、工事費は約七億五千万円。
ダム本体の準備工事が始まることについて、同ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「地元としては、ダムが完成して、早く安心して生活できるようになることを願っている」と話した。
一方、全国でダム建設に反対する市民グループのネットワーク「水源開発問題全国連絡会」は同日、同ダムの本体工事について「流域住民の意見を反映させる法的な手続きを踏んでいない」などとして、着工の中止を求める抗議文を国土交通大臣に送付した。
同省は昨年十二月、代替地計画の見直しやダム本体工事の騒音・振動対策のため、当初二〇一〇年度としていた八ツ場ダムの完成年度を五年延長し、一五年度とする基本計画の変更を打ち出している。