国交省、概算要求発表

2008年8月28日 新聞各紙より転載

読売新聞群馬版
「八ッ場ダム本体着工を概算要求 国交省、225億円を計上」

 国土交通省関東地方整備局は27日、2009年度予算の概算要求の中で、八ッ場ダムについて、本体工事費を含む225億円を盛り込んだことを明らかにした。同省が本体工事費を概算要求に盛り込むのは初めて。2015年度の完成に向けてようやく本体工事が始まるメドが立ったことに対し、早期建設を求めてきた地元関係者からは「画期的なこと」と歓迎する声が上がる一方で、反対派からは「計画は止めないというメッセージを打ち出したに過ぎない」との見方が示された。
 発表された資料では、「(八ッ場ダムの)2015年度の完成を目指し、代替地造成、鉄道、道路の付け替え工事を図りつつ、本体工事に着手する」と明記された。

 国交省は昨年12月、工期を5年遅らせて2015年度に完成させるという計画変更を発表。本体工事にいつ着手するのか、注目が集まっていた。

 関係者によると、国交省はダム本体のコンクリート打設工事を2012年度から3年間で終える計画で、来年度から3年間はその前段階となる掘削工事を実施。付け替え工事が進む国・県道は2009年度末に暫定供与し、2010年度末には同じく付け替え工事中の鉄道を暫定供与する予定という。

 225億円のうち、鉄道や国・県道の付け替え工事が大半を占め、ダム本体工事は40億円弱とみられる。このほか、代替地造成、各種環境調査が来年度予算に盛り込まれる。

 概算要求について、大沢知事は「計画から56年が経過した。住民は生活再建に希望を見いだし、1日も早いダムの完成を切望している。ようやく国交省が本体着工を表明し、予算要求したことは誠に感慨深い」との談話を発表した。

 長野原町の高山欣也町長は「既に仮排水トンネルが着工し、実質的に本体工事は始まっていると考えているので特に驚きはない」としながらも、「大多数の住民は1日も早い完成を願っており、工事の遅れを心配していた。今後は代替地造成も急ぎ、生活再建のめどが立つようにしてもらいたい」とした。

 萩原昭朗・水没関係5地区連合対策委員長は「本体工事の予算が付くということは、あと1年ぐらいで道路・鉄道工事のメドが立つということだろう。そういう意味で安心感がある」と述べた。

 一方、「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」の島津暉之代表は、「本体工事着手といっても、川のバイパス工事(転流工)が来秋まで続くので、本体工事を始めるのはその後になり、川をせき止めるのは早くても2011年度以降だ。今回の概算要求は、建設計画は止めないというメッセージを打ち出したに過ぎない」と語った。

 「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」のメンバーの1人、角倉邦良県議は「総選挙前に八ッ場ダムは本体工事に入ったという既成事実を作りたいのだろう。政権交代すればいつでも建設を止められる」と述べた。

朝日新聞群馬版
「本体工事を概算要求 八ッ場ダム、国交省方針」

 国土交通省は27日、来年度予算の概算要求を発表した。長野原町の八ッ場ダム事業費として225億円(08年度300億円)を要求する方針で、本体工事分も含まれている。52年の計画浮上から半世紀余を経て、いよいよ本体工事が始まる見通しになった。

 同省関東地方整備局によると、09年度は、水没地区住民の移転先の造成、道路やJR吾妻線の付け替え工事を行うのと並行して、本体工事にも着手する予定だという。ダム本体設置場所では今年6月、本体工事の準備として、吾妻川の流れを迂回させる「仮排水トンネル」の工事を始めた。09年10月ごろに完成させる計画で、その後、本体設置場所となる川底の掘削工事などにとりかかる。

 岐阜県の徳山ダムは仮排水トンネル着工から10年近くたって本体の工事が始まり、熊本県の川辺川ダムは10年以上たっても本体は未着工。いずれも必要性を巡る議論が活発になって時間を要した。八ッ場ダムでも同様の議論は続いているが、同省は15年度の本体完成を目指し、仮排水トンネル完成後、速やかに本体工事に着手したい考えだ。

毎日新聞群馬版
「八ッ場ダム 来年度、本体着工へ 計画から56年 歓迎、懸念の声交錯」

 国土交通省は27日、長野原町に建設中の八ッ場ダムの本体工事に09年度中に着工することを明らかにした。同省関東地方整備局が09年度予算の概算要求で、八ッ場ダムについて代替地造成など生活再建事業を進めつつ本体工事に着工することを初めて明記した。計画浮上から56年。2015年度の完成に向けてようやく最終段階に入っているが、県や町は「一日も早い完成を」と歓迎する一方、代替地整備が遅れている地区の住民からは「生活再建を優先してほしい」との声も上がった。

 概算要求では同ダム建設事業費として今年度の300億円を下回る225億円を計上。これまでの繰り越し分を合わせ、十分な予算を確保したという。同局河川計画課などによると、09年度中に堤体部分の基礎掘削工事を始め、12年度に堤体となるコンクリートの打設工事を行う予定。

 本体工事と同時に、代替地整備など生活再建事業も並行して進める。国道145号の付け替え道路「八ッ場バイパス」の一部を09年度に、JR吾妻線の付け替え線路を10年度に供用開始するという。

 2度の工期延長があっただけに、県や町の関係者からは安堵の声が漏れた。大澤正明知事は「計画から56年という年月が経過し、誠に感慨深いものがある」とコメント。高山欣也町長は「今度こそ延長せずに、15年度に間に合わせてほしい」と語った。

 一方、代替地分譲の進捗率は07年度末で約1割と遅れている。川原湯地区の豊田武夫区長(56)は「国が約束した生活再建が本体工事と同時並行じゃ困る。住民の気持ちを無視した計画は容認できない」と懸念を示した。

 また、ダム建設の見直しを求めている「八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会」代表世話人の関口茂樹県議(リベラル群馬)は「本体工事といっても基礎掘削は準備工と変わらない。八ッ場の工事は順調だというアナウンス効果を狙ったのではないか」と語った。(伊澤拓也)

上毛新聞
「合同庁舎12階建てに 国交省概算要求 前橋の国出先機関集約」

 国土交通省関東地方整備局は二十七日、関東甲信一都八県の二〇〇九年度予算の概算要求を発表、新規事業として国の出先機関が入る前橋地方合同庁舎(前橋市大手町)の建て替えを盛り込んだ。八ッ場ダム(長野原町)は、ダムサイト上部となる天端掘削や、基礎掘削のための進入路工事など本体関連工事二百二十五億円を要求した。

 (以下、合同庁舎関連部分を省略)

 八ッ場ダムは、今年六月にダム本体の準備工事となる仮排水トンネルの工事を本格的に開始した。二〇一二年度にダム本体のコンクリート打設工事を行う方針で、〇九年度はこの工事の前段となる基礎掘削に向けた準備工事に着手。一五年度のダム完成を目指す。 (以下、別事業の説明のため省略)

東京新聞群馬版
「八ッ場ダム 09年度に本体工事へ 国交省 概算要求で225億円」

 国土交通省が二十七日に発表した二〇〇九年度予算の概算要求で、長野原町で建設を進めている八ッ場ダムについて、〇九年度からダムの本体工事を開始することが初めて明記された。関係事業費の要求額は二百二十五億円。最初に計画が示されてから半世紀以上の歳月を経て、八ッ場ダムの建設事業は大きな節目を迎えることになる。

 八ッ場ダムは、水害防止や水道用水・工業用水の確保などを目的に一九五二年に計画が出されたが、地元の反対運動により長期間棚上げとなった。八六年に基本計画が示され、九四年から現地工事が始まったが、昨年、完成予定時期が二〇一〇年度から一五年度に延期されている。

 概算要求では、〇九年度は本体工事の初期段階として、ダム建設予定地の掘削などに着手するとしており、水没地区の代替地の造成をはじめ、国道145号やJR吾妻線の付け替え工事なども同時に進めるとしている。

 ダムの工事スケジュールが明確になったことで、大沢正明知事は「これまで早期のダム完成を望み、さまざまな苦難に耐えてきた関係住民の気持ちを思うと、胸が詰まる思い。今後も全力で現地の生活再建支援に取り組みたい」とコメント。長野原町の高山欣也町長も「これ以上の完成延期は望ましくない。現在のスケジュール通りに着実に工事が進行することを切望する」と訴えた。

 一方、水没地区の住民感情は複雑。同町川原湯地区の豊田武夫区長は「代替地の分譲のあり方をどうするかなど、水没地区住民の生活再建問題は解決の道筋が見えないままだ。ダム本体の完成を急ぐ前に決着すべき課題はあまりにも多すぎる」と率直な心情を語った。 (中根政人)