「八ッ場ダム 注目集める司法判断」(上毛新聞)

2009年1月18日 上毛新聞一面より転載
「news レクチャー 注目集める司法判断 八ッ場ダム・本県住民訴訟23日結審

 国が計画する八ッ場ダム(長野原町)への建設負担金支出は違法として県を相手に前橋地裁で審理されている住民訴訟が23日結審する。事業費を負担する6都県で同様の住民訴訟が行われ、すでに結審した東京地裁を含め前橋、水戸の各地裁で年度内にも判決が出る見通し。川辺川ダム(熊本県)など計画見直しの動きを背景に、原告側は「一つでも勝てば八ッ場ダムにくさびを打ち込める」と意気込む。計画浮上から57年がたった八ッ場ダム。本体着工を控え、司法判断に注目が集まっている。

年度内にも3地裁で判決 6都県で提訴
 住民訴訟は二〇〇四年十一月、各都県知事を相手に一斉に始まった。事業費四千六百億円のうち、埼玉県九百五十二億円、東京都八百七十億円、茨城県二百六十八億円、本県二百十六億円、栃木県十億円を負担することになっており、原告側はこの負担金の差し止めを求めている。

原告「利益、効果なく危険」 県側「治水と利水で必要」
 原告が主張する主なポイントは、1人口減が予想される中、水需要予測が過大で利水上の利益がない 2治水の基準点となる利根川の八斗島地点で最大洪水流量の低減効果がほとんどない 3ダム建設予定地は地滑りの危険があるの三点だ。

 財政支出について地方自治法は「最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と規定しており、原告側はこうした点などから公金支出は違法と指摘。群馬訴訟の原告「八ッ場ダムをストップさせる群馬の会」の鈴木庸事務局長は「八ッ場ダムの負担を後世に残してはいけない」と強調する。

 これに対し、被告の県側は「すでにダム完成を前提とした暫定水利権で水が使われており、ダムが不要という議論は当たらない。治水でもダムや堤防改修など複合的に対策をとることが必要だ」(特定ダム対策課)と反論する。

反対の動き活発化
 国土交通省が〇七年十二月、工期を五年延長して十五年度にすると公表したことで計画に反対する動きが活発化。建設に慎重な六都県議が会を結成したほか、民主党も建設中止を次期衆院選のマニフェストに盛り込む方針を明らかにしている。

 六都県訴訟の原告の代表組織「八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会」の嶋津暉之代表は「一つでもダムの違法性を指摘する判決が出れば、計画にくさびを打ち込める。衆院選も行われる今年は八ッ場ダムを止める最後のチャンス」と司法判断に期待を寄せる。

早期完成望む地元
 ただ、川辺川や大戸川ダム(滋賀県)と異なるのは、関係都県が早期完成を求めている点だ。かつて建設に反対した水没地域の住民も現在ではダムを前提にした街づくりを見据えている。
 各地の住民訴訟について、八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「一刻も早く生活再建事業を進めてもらうため、住民は早期のダム完成を望んでいる。地元でない人たちがどのような思いで提訴しているのか。これ以上地元住民を苦しめないでほしい」と話し、早期完成が地元の総意だと強調している。(報道部 石垣光弘、中之条支局 入山亘)