八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「八ッ場ダム生活再建事業 178億円に大幅圧縮」(上毛新聞)

 ダム事業には、長年のダム計画の中で犠牲となってきた水没予定地の人々の生活再建の費用が含まれています。地元がダム推進といわれているのはそのためです。
 1992年、群馬県は下流都県が生活再建事業への支出に合意したと水没予定地住民に説明しました。これは同年、地元がダムを受け入れた大きな要因でした。ところが、地元と国、群馬県とのすべての交渉が終わった2005年を過ぎてから、群馬県は、下流都県の合意が得られていなかったことを地元民に明らかにします。下流都県が支出に難色を示したのは、施設の維持管理費です。ダム湖観光の施設(ハコもの)を造る費用は負担するが、ダム建設後の面倒までは見られないというわけです。
 ダム計画のために多くの住民が流出し、過疎化が進む地元では、維持管理費を負担するのはは無理だと憤りの声があがっています。行政が事実を知らせないまま、場当たり的に事業を進めた結果、地元民と都市住民(納税者)の対立がつくり出されました。
 日に日に増すダムへの風当たりは、このような国の公共事業のあり方に対する批判のはずですが、国民が望まない地元住民への皺寄せは進む一方です。

2009年1月27日 上毛新聞一面より転載
http://www.raijin.com/news/a/27/news01.htm
「八ッ場ダム生活再建事業 178億円に大幅圧縮」

 県は、八ツ場ダム(長野原町)建設に伴う水没地域の生活再建事業のうち、下流都県と共に拠出する利根川・荒川水源地域対策基金事業の総額を、当初案の二百四十九億円から百七十八億円へ大幅に圧縮する案を同町などに提示した。下流都県も大筋で合意している。県は「地元が要望する事業はすべてまかなえる」として生活再建事業を推進する考え。しかし、同町は観光施設などの維持管理費が含まれないことに反発しており、調整が難航する可能性もある。

 事業費の配分は長野原町が百七十億円、東吾妻町が八億円。主な整備事業は川原湯地区のエクササイズセンター整備に十一億五千万円、横壁地区の芝生広場等整備に十四億九千万円、林地区の道の駅整備に八億三千万円、長野原地区のJR長野原草津口駅周辺整備に十一億五千万円などとなっている。各事業の詳細は、水没地域の住民が最終的な検討作業を行っている。

 一九九二年に作成された基金事業の素案は長野原町二百四十六億円、東吾妻町(当時吾妻町)三億円とした。しかし、その後、水没地区の人口が流出したり、現地再建希望者が減少したため、二〇〇六年度から住民らが事業の見直しを進め、一部観光施設の統廃合や縮小などを決定した。

 県はこの見直しを受けて事業費を七十一億円圧縮。下流都県は従来の事業費規模に難色を示していたが、昨年末までに総枠で合意した。県特定ダム対策課は「百七十八億円で地域の要望に沿った施設は十分整備できる」と説明する。

 しかし、見直し内容に対し長野原町の高山欣也町長は「飲める内容ではない」としている。特にイベント開催などに弾力的に利用できる「水源地域活性化支援事業費」(約二十三億円)の用途から、施設の維持管理が除外された点を問題視する。

 県は「維持管理費は下流都県の理解を得られない」として自主運営を要請しているが、高山町長は「地元だけで施設運営するには限界がある。提示された案では維持管理などやっていけない。恐らく住民も同じ反応」として、県などに再考を求める方針だ。県は近く、水没地区の住民にも見直し内容を説明する。