2009年5月27日
今朝の上毛新聞一面に、八ッ場ダム事業に関連して東京電力と国交省が導水路建設を協議するとの記事が掲載されました。
この導水路建設については理解に苦しむところがあります。
吾妻川には東電の発電所がいくつも張り付いていて、吾妻川の流量の多くが発電に使われています。
八ッ場ダムが出来た場合、発電所に送られている水量の大半をダムに入れないと、ダムに水がたまりません。そうすると、東電の発電量が大幅に減りますので、その減電量の補償をしなければなりません。この減電補償の額は大きく、数百億円になると予想され、建設事業費4,600億円の増額が必要と考えられます。
この減電補償の額を減らすために、八ッ場ダムに併設される予定の群馬県の八ッ場発電所の放流水を導水管で東電の発電所に送水しようというのが今回の記事の内容です。
しかし、八ッ場発電所は従属発電といって、流量維持や利水補給などのためにダムから放流した水を発電にも使うというものです。八ッ場ダムから放流される水量は通常は流量維持の毎秒2.4トンだけですが、この毎秒2.4トンは吾妻渓谷など、吾妻川の流量維持のために流すべきものですから、東電の発電所に送ることはできません。
渇水時にダムから利水補給のある場合、またはダムが満水の場合は、八ッ場発電所に毎秒2.4トンを上回る流量が流れますので、上回る分を東電の発電所に送ることにできますが、そのような条件がなければ、八ッ場発電所から東電の発電所への送水はないということになります。したがって、導水路を建設しても、水が流れていないことが多いのであって、導水路を建設する意味がないと考えられます。
記事を転載します。
2009年5月27日 上毛新聞一面より転載
「発電量確保へ前進 八ツ場ダムで東電と国交省 導水路建設を協議 」
国が八ツ場ダムの水量を確保するため、東京電力のダム上流からの発電用水の取水を制限する代わりに、ダムの放流水を発電所に運ぶ導水路を建設し、減少分の一部を補てんする方向で本格的な協議に入ることが二十六日分かった。導水路整備により地元の東吾妻町には年間数千万円規模の固定資産税などの収入が見込まれる。東電の水利権を制限するこの「減電補償問題」は十七年前から解決に向けた検討が行われてきただけに、関係自治体などは合意に期待を寄せている。
協議するのは、県企業局が同ダム直下に設置する八ツ場発電所と同町の東電・松谷発電所をつなぐ長さ約二キロの導水路を国が建設し、八ツ場発電所で発電に使用した水を松谷、原町など下流の六発電所に供給する案。今後、規模や費用など詳細を協議する。
国土交通省関東地方整備局によると、建設する場合、その費用は現計画のダム事業費内で賄うという。
東電は現在、各発電所を導水路で結び、ダム予定地上流で取水した発電用水を順番に供給している。国はダム完成後、水量確保のためにダム上流の吾妻川からの取水を制限する方針で、東電が持つ水利権の補償について一九九二年から継続的に協議を重ねてきた。
六発電所の最大出力は計約十八万キロ㍗。単純計算で一般家庭六万軒分の電力に相当する。吾妻川からの取水が主力のため、導水路が実現すればかなりの発電量が維持されるとみられる。
東吾妻町は財源確保などの観点から長年にわたり導水路の建設を要望してきた。茂木伸一町長は本格的な協議が始まることについて「多くの関係者に感謝したい。三年間町長をやっていて一番大きな仕事」と合意を待ち望んでいる。
一方、関東地方整備局河川部は「あくまでも方向性が見えてきた段階。詳細は交渉中だが、少しでも早く決めたい思いはある」とコメント。東京電力群馬支店は「関係者で協議中であり、コメントは差し控えたい」としている。