八ッ場ダム生活再建事業 「青写真」練り直し

 2009年6月4日の朝日新聞群馬版に八ッ場ダムの生活再建事業に関する記事が掲載されました。↓
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000000906040003
八ッ場ダム生活再建事業 「青写真」練り直し  頼みの基金減額 使い道に制限も 29年前の「未来図」 更にかすむ可能性

 八ッ場ダムの三事業のうち、利根川・荒川水源地域対策基金、いわゆる基金事業は、当事者である地元住民以外の人々には殆ど実態が明らかにされてきませんでしたが、地元では生活再建の要として重視されてきました。
 この基金事業の縮小案を群馬県が公表し、地元の反発を上毛新聞が報じたのが今年の1月です。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?storytopic=2&start=30
「八ッ場ダム生活再建事業 178億円に大幅圧縮」(2009年1月27日)

 タイトルでは金額の縮小のみが取り上げられていますが、地元、特に観光業を営む川原湯地区の反発が大きかった原因は、群馬県が地元に約束した内容が反故にされたことにありました。
 1992年7月、地元が最終的にダム受け入れを了承した基本協定書を締結するに当たり、地元が群馬県に確認したのが「(仮称)水源地域振興公社」の設置と「公社」の一定の運営費を下流都県に支出してもらうという約束でした。
 当時、国や群馬県は地元に対して、ダム湖観光による地域振興をPRしましたが、地元は「ダムで栄えた町はない」事実をよく知っていたことから、はたして観光業をダム完成後も維持できるかという不安を抱えていたといわれます。公社を設置し、雇用を創出し、最初の数年は運営の赤字を下流都県からの支出で補い、新たな地域振興の基盤を築くーこの「青写真」実現に群馬県が責任を負ってくれるなら、ダム受け入れもやむをえないというのが地元の大方の住民の意見でした。
 群馬県は下流都県から支出の約束をとりつけたと地元に説明し、この説明を信用して地元は基本協定書に調印しました。
 下流都県が「公社」の維持管理費への支出に実は同意していなかったことを群馬県が長野原町に明かしたのは、それから15年後の2007年7月です。地元からは当然反発の声があがりますが、これと並行して群馬県が始めたのが「八ッ場湖周辺まちづくり講演会」です。地元でたびたび開催されてきたこの講演会では、大学教授により「下流都県からランニングコスト(維持管理費)は出ないことを前提にして、自分たちでやっていく意識を持たなければならない」と説かれ、「まちづくりはエンターテインメント」として「数打ちゃ当たる型思考」が奨励されます。(講演会配布資料より)

 「群馬県が事実を明かさないことにより地元にダムを受け入れさせたとの批判をかわすために講演会が企画された」、「地元民が自ら補償金を地域振興へ投資し、その結果は自己責任というのが群馬県の意図ではないか」と疑念を抱く住民が出てくるのも当然です。
 基金事業の観光施設は、見直し前のメニューでは観光会館、クアハウスなどが挙げられ、見直し後は大学教授が提唱する「エクササイズセンター」が挙がっています。朝日新聞の記事によれば、「下流都県側には全体像が見えずに出費がかさむことへの警戒感があった」とされていますが、これらのメニューは群馬県が提案したものです。かさむとされる出費の総額は約23億円です。基金事業についての協議が当事者の長野原町と下流都県で行われたことはなく、常に群馬県が間を取り持ち、群馬県と下流都県との会議の議事録は長野原町には公開されていません。
 長野原町当局からは、大学教授によるダイエットバレー構想、30代女性をターゲットとしたエクササイズセンターが市場ニーズに合うのかと疑問視する声があります。各地区では見直し案を具体的にまとめるための「まちづくり検討部会」が開かれていますが、これまで群馬県が描いてきた「絵に描いた餅」に懲りた住民からは、行政主導の会議に前向きに取り組むという話は聞かれません。
 2001年の補償基準の調印、2005年の分譲基準の調印を経て、水没予定地から住民が大量に流出し、地域が疲弊しきった今、基金事業の大幅縮小案が提示されました。後戻りできない状況をつくって水没予定地を追い詰めてゆくダム行政の酷薄さがここにも垣間見えます
 八ッ場ダムを考える1都5県議員の会の群馬県議らは長野原町当局からヒアリングを行い、これをもとに群馬県議会の6月議会でこの問題を初めて取り上げ、群馬県の責任を追及しました。↓
http://snipurl.com/jexg9
↑6月2日、群馬県議会本会議の一般質問、角倉邦良県議

 角倉県議は、ダム事業が進もうと止まろうと、群馬県が生活再建事業に責任を負う立場に変わりはないと訴えています。群馬県の今後の対応を注意深く見守る必要があります。