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ダムにたまる土砂の問題(朝日新聞)

 ダムには様々な問題がありますが、土砂がたまって用をなさなくなる堆砂の問題もその一つ。ダム事業を推進するのに都合が悪いのか、わが国では今までこうした問題はクローズアップされませんでしたが、火山性の脆い地質が多いわが国では、堆砂のスピードが想定より遥かに速いといわれます。今後、土砂で埋まった全国のダムが、将来世代にとってどれだけ大きな負の遺産になることでしょうか。

2009年06月11日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000000906110002
たまる土砂「困った」 安中市の中木ダム

 安中市の中木ダムに土砂がたまり、管理者の市が頭を悩ませている。土砂を放置しておけばダムの機能が損なわれるが、財政状況が厳しく、かき出す費用もねんしゅつしにくい。土砂の捨て場の確保も課題だ。こうした問題は、県内各地に現れ始めている。
安中市松井田町五料の「裏妙義」と呼ばれる地域にある中木ダム。妙義湖をせき止める利水専用のダムだ。

 1959年の完成から、土砂の堆積が進む。上流から川が流れ込む辺りから広範囲で中州ができている。

 市などによると、同ダムは総貯水量160万立方メートル。うち土砂堆積(たい・せき)分の容量は25万立方メートルを見込んでいたが、すでに57万立方メートルの土砂がたまっている。堆積率は230%に達する。

 県河川課ダム係によると、一般にダムは100年を寿命と設定し、100年間で土砂がたまる量を予想して設計する。だが、利水や洪水調節用のスペースにまで土砂がたまる例は少なくないという。

 担当者は「戦後のダム建設ラッシュから半世紀たち、土砂の問題に悩まされる例が全国で増えている。ただちにダムの機能が損なわれるわけではないが、早めに手を打っておく必要がある」と話す。

 中木ダムも、当初想定していた農業用水の利用がないため現状に支障はないが、放置はできないとしている。

 安中市は土砂をかき出すために07年度から「貯金」を始め、まず一般会計から1億円を繰り出して基金に積み立てた。県ダム係によると、土砂をかき出すには最低でも1立方メートルあたり3万円前後の費用がかかる。捨てる土地との距離や地形によって変わるが、すべてかき出し、捨てるには数千万円から数億円かかる見込みだ。土砂を捨てる場所も見つかっていない。

 県営ダムにも、同様の問題がある。07年の台風9号の影響で上流から大量の土砂が流れ込み、七つあるダムのうち三つで土砂の堆積率が100%を超えた。塩沢ダム(神流町)や道平川ダム(下仁田町)は土砂の撤去に国の災害補助が適用されたが、堆積率112%の霧積ダム(安中市)は、堆積量の確認前に補助申請の時期を過ぎてしまったため、自力で土砂をかき出さなければならない。

 土砂の捨て場の確保も課題だ。発電用ダムを管理する県企業局発電課によると、かつては土砂を工事に使う砂利業者が引き取ってくれることが多かった。しかし公共事業が減り、引き取り手が見つからなくなっているという。

 公共工事で出る残土を置くために市町村が確保している土地に捨てられる場合もあるが、なければ自前の土地を用意するしかない。他の活用先を探そうにも難しいのが現状だ。

 農業用のため池も土砂の堆積が問題になっている。県農村整備課が今年、593カ所のため池を管理する水利組合や農業者団体にアンケートしたところ、58カ所で「土砂をかき出してほしい」と要望があった。農家の高齢化などで受益者が費用を負担しきれなくなっているという。同課は対策に乗り出す考えだ。