政府答弁から明らかになった八ッ場ダムの進捗状況

2009年6月24日
 八ッ場あしたの会では、昨日、群馬県庁記者クラブにおいて記者会見を行いました。これは、大河原雅子参議院議員(民主党)が5月29日に提出した「供用開始遅延ダムおよび八ッ場ダム等に関する質問主意書」(質問第一八六号)に対して、政府から6月9日に出された答弁書(内閣参質一七一第一八六号)などで主に明らかになった問題点を説明するために行ったものです。

参議院のホームページには、該当の質問主意書、政府答弁書がアップされています。

○ 質問主意書↓
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/171/syuh/s171186.htm

○ 政府答弁書↓
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/171/touh/t171186.htm

 記者会見では、以下の資料を配布しました。
◆ 八ッ場ダム関連工事の進捗状況(別紙1)↓
https://yamba-net.org/wp/doc/200906/chart1.pdf

◆八ッ場ダム建設事業の事業費執行状況(別紙2)↓
https://yamba-net.org/wp/doc/200906/chart2.pdf

 八ッ場ダムの進捗状況を分析した結果、工期の再度の延長、事業費の再度の増額の可能性がきわめて高いことが明らかになりました。記者会見での配布文書から抜粋して以下に転載します。

1 八ッ場ダムの工事進捗状況と今後の見通しについて
    (政府答弁書 二の1)

① 付替国道、付替県道の工事の大幅な遅れ
 付替の国道、鉄道、県道の工事および代替地造成の進捗状況は
別表1のとおりです。今回の質問主意書では、着手済み区間と完了区間とに分けて質問を行いました。その結果、進捗率として公表されている数字と実際の完成区間の割合には大きな開きがあって、工事の進捗が大幅に遅れていることが明らかになりました

 すなわち、平成20年度末の着手済み区間(完成区間を含む)の割合は付替国道75%、付替県道のうち、林岩下線68%、林長野原線76%、川原畑大戸線21%であるのに対して、完成区間の割合は付替国道6%、付替県道のうち、林岩下線と林長野原線は0%、川原畑大戸線18%と、実際の完成区間はわずかな割合にとどまっています。このうち、川原畑大戸線は完成後の全延長が1.1kmしかないので、完成区間の割合が見かけ上、他の付替県道より高くなっています。

工事進捗率として公表されているのは、着手済み区間の割合であり、その中には契約のみの区間も含まれていて、実際の完成区間の割合はそれよりも一桁以上小さいことが明らかになりました。付替国道については完成区間の割合が平成19年度末(今年2月6日の政府答弁書 内閣参質一七一第一九号)と同じ6%にとどまっています。
また、用地買収に関しては今回の答弁書は「それぞれ、それまでに(完成までに)必要となる用地の買収を進めることとしている。」と答えており、これからの用地買収がまだ少なからず残されていることを示唆しています。

国土交通省は付替国道、付替県道林岩下線の完成予定を平成22年度末としていますが、あと2年足らずで完成させることはきわめて困難であると考えられます。

① 付替鉄道の工事の状況
付替鉄道の完成予定年度も平成22年度末です。付替鉄道に関しては平成20年度末の完成区間の割合が別表1のとおり、75%になっていますが、問題はほとんど手付かずになっている新川原湯温泉駅周辺の工事があと2年足らずで完了するかどうかです。今年2月13日の群馬県議による現地視察でも、八ッ場ダム工事事務所の藤田浩副所長(当時)が、駅周辺の用地買収が終っておらず、遅くとも今年夏までに買収が終らないと、予定通りに付替鉄道を完成させることが困難となることを認めていました。
今回の質問主意書で新川原湯温泉駅の工事進捗率を問うたところ、答弁書は「新たに設置される駅については、現在、用地買収と造成工事を進めているところである。」と答えています。数字を示さなかったことからも、用地買収が難航している状況に変化はないとみられます。

② 代替地の造成の遅れ
平成20年度末で分譲を開始した面積は別表1のとおり、川原畑地区と川原湯地区10%、横壁地区20%、林地区7%、長野原地区9%であり、平成19年度末より分譲開始面積が増えているのは、長野原地区の1%のみとなっています。代替地は平成21年度末までに概ね造成が完了することになっていますが、あと1年足らずで完成させるのはやはり困難であると考えられます。

③ 関連工事の遅れに伴うダム本体工事の遅れ―――工期の再延長は必至
 国土交通省によれば、ダム完成までの予定は下表のとおりです。

国土交通省の予定
平成21年度後半から ダム本体工事に着手
平成22年度末まで  付替国道、付替鉄道、付替県道等の関連工事を完成。
平成23年度から   本格的なダムサイト岩盤掘削工事 
(現国道と現鉄道の廃止)
平成23年度末まで  代替地を完成させて、水没予定地の住民の移転を終了
平成24年度から  ダム本体コンクリート打設を開始
平成27年秋     ダム本体完成、試験湛水を開始
平成27年度末   八ッ場ダム完成

ダム本体工事は今年度後半から着手することになっています。本格的な本体工事は平成23年度からであって、それまでにダムサイトを通過する現国道と現鉄道を廃止しなければなりません。そのためには、それまでに付替国道、付替鉄道を完成させる必要がありますが、①、②のとおり、これらの工事は大幅に遅れており、平成22年度末までの完成は困難です。
その前段階として、ダム本体工事の関連工事を進めるためには、現国道を工事用道路として使用しなければなりません。代替となるはずの付替国道、付替県道林岩下線の工事が遅れている状況では、地域の幹線道路である現国道の交通に支障をきたさずに本体工事を進めることは困難です。
また、ダム本体コンクリート打設を開始する平成24年度の前に、まず代替地を平成21年度末までに完成させ、次に水没予定地住民の移転を平成23年度末までに終了する必要がありますが、③のとおり、代替地の造成も大幅に遅れており、それに伴って住民の移転終了も大きくずれ込むと予想されます。
このように、付替国道、代替地造成などの関連工事の大幅な遅れにより、ダム本体工事も大幅に遅れることになりますので、平成27年度での八ッ場ダムの完成はとても無理であって、工期の再延長は必至と考えられます。

④ 付替国道等の事業費の執行率から見て事業費の再増額も必至
 平成20年度までの八ッ場ダム建設事業の事業費執行率は別表2のとおりであって、付替国道・付替県道の事業費執行率はすでに84%に達しています。一方、完成区間の割合は①のとおり、わずかなものですから、残り16%の事業費だけで付替国道・付替県道を完成させることは至難のことです。
その他に、東京電力㈱への巨額の減電補償など、八ッ場ダムの事業費を増加させる要因がありますので、総事業費4,600億円の再増額は必至と考えられます。

 昨年の八ッ場ダム基本計画第3回変更に関する国土交通大臣への回答で、各都県知事は別紙1の例のとおり、工期の再延長と事業の再増額がないことを条件にして、同意の意見を述べていますので、工期の再延長と事業の再増額が行われることになれば、各都県とも八ッ場ダム事業への参加を見直さなければならなくなります。

2 地すべりの発生により、工期が大幅に遅れ、事業費が再増額される可能性
  (大滝ダムと滝沢ダムの実例から見て) (政府答弁書 一の1)
 今回の質問主意書では、ダム本体が完成したものの、地すべりの発生により、供用開始が大幅に遅れているダムとして、奈良県の大滝ダム(国土交通省)と埼玉県の滝沢ダム(水資源機構)を取り上げ、政府答弁書でその事実関係が明らかになりました。
 「大滝ダムは平成14年8月にダム本体が完成したが、その後の試験湛水で地すべりが発生したため、その対策工事に308億円もかかり、完成予定が平成24年度末になっていること」、「滝沢ダムは平成17年10月にダム本体が完成したが、その後の試験湛水で地すべりが発生したため、その対策工事に145億円もかかり、完成予定が平成22年度末になっていること」が明らかになりました。

 八ッ場ダムの貯水池予定地周辺は地質が非常に脆弱ですので、ダム本体が完成して試験湛水をはじめれば、大滝ダムや滝沢ダム以上の規模で貯水池周辺において地すべりが発生する可能性が十分にあります。
 今回の答弁書でも「八ッ場ダムの貯水池周辺における地滑りに関しては、これまでの調査・検討に加え、現在、地滑りに関する専門家の助言を受けながらより精度の高い調査を実施しているところであり、今後、これらの調査結果を基に更に検討を行い、地滑りの可能性のある箇所については、必要な対策を講じることとしている。」と答えており、今後、地すべり対策の追加が必要となることを認めています。

 国土交通省による八ッ場ダムの工事予定では試験湛水の期間を半年しか見ていませんが、地すべりが発生すれば、その対策工事で完成までの期間が大きく延長されることになります。大滝ダムの場合は今の予定でも試験湛水開始からダム完成まで9年半、滝沢ダムの場合は4年半もかかることになっていますから、八ッ場ダムの場合も工期の大幅延長が必要となります。さらに、地すべり対策工事に何百億円という事業費も必要となります。
 このように、地すべり問題から見ても、八ッ場ダムは工期が再延長され、事業費が再増額される可能性が高いと考えられます。