2009年6月28日
都議会選挙を控え、八ッ場あしたの会では八ッ場ダム事業をめぐる政策を確認するため、都議会の各政党、および連絡先を把握できた無所属の候補者に公開アンケートを発送しました(6月12日付)。
締め切りの6月25日までに、民主党、日本共産党、生活者ネットワーク、社民党、および5名の無所属候補者の方々(後藤雄一氏、小林ひろゆき氏、関口太一氏、福士敬子氏、米川大二郎氏)から回答がありました。自由民主党、公明党にもアンケートを送りましたが、現時点で回答はありません。なお、八ッ場あしたの会のサイトからアンケートをダウンロードした秋田一郎氏(自由民主党)より、個人名で回答をいただきましたので、上記の各政党、無所属候補者の回答と共に公表します。
八ッ場ダムは国の事業ですが、関係都県、とりわけ首都、東京都の動向が事業に大きな影響を及ぼします。自由民主党、公明党からは回答がありませんでしたが、八ッ場ダム推進議員連盟(2009年4月10日設立)に両党議員が多数参加していることから、両党の政策は八ッ場ダム見直しの必要性はない、と考えていると判断できます。
公開アンケートへの回答では、自由民主党の秋田氏以外のすべての回答が、「見直しが必要」となりました。このことから、東京都議会では八ッ場ダム事業の継続について、与野党で政策が大きく対立していることが明らかになりました。
今回の都議選では、「新銀行東京」、「築地移転」について、与党がYES、野党がNOと、与野党の対立軸が鮮明になっていますが、八ッ場ダム事業についても同様のアンケート結果となりました。
また、八ッ場ダムが中止となった場合、ダム事業によって破壊されてきた水没予定地域の生活再建事業・地域振興事業について、八ッ場ダムの見直しが必要と答えたすべての回答者が、「東京都は一定の負担をするべき」と回答しています。八ッ場ダムの予定地は東京から遠い場所にありますが、ダム計画により半世紀以上も東京と深い繋がりをもってきました。ダムを推進する政治・行政は地元を長年翻弄し、苦痛を強いてきました。このような悲劇が繰り返されないよう、地元民の人権が最大限に尊重されるよう、八ッ場ダム問題への真摯な取り組みを各政党、各候補者に希望します。
回答は以下の通りです。(敬称略・アイウエオ順)
1.八ッ場ダム建設の主な目的は治水、利水とされています。東京都にとって八ッ場ダムは治水、利水上必要だとお考えですか?
〇必要
秋田一郎(自由民主党)
〇必要ではない
社民党、生活者ネットワーク、日本共産党
後藤雄一、関口太一、福士敬子、米川大二郎
【意見】-米川大二郎
水需要は年々減る傾向にあります。東京都水道局のホームページでも、水道需要は「長期にわたる景気の低迷等の影響を受け、横ばいもしくは減少傾向で推移しています。」とあり、工業用水道の需要は、「国の産業立地政策や各種公害規制の強化による工場の都外への転出、オイルショックを契機とした水使用の合理化の進行等によって年々減少の一途をたどり、施設に大幅な余剰を生じさせました。」とあります。つまり、東京都の水需要は十分に賄われています。もし足りないのなら、既存のダムに堆積した土砂を浚渫するなど、機能アップ工事を行えばよいと思います。
次に洪水対策ですが、近年、下流域である東京やその近郊では、ゲリラ豪雨が多発して、住民生活に影響が出ています。ダム建設では、上流域での雨に対して効果はあるのでしょうが、多発するゲリラ豪雨には効果が少ないと思います。自然の状況も年々変わるのだから、今、必要としている対策に予算を投入する必要があると思います。
〇その他
民主党
【意見】まず、一般論として、工学的に治水・利水面での効用を考えるのであれば、ダムは「ないよりは、あった方がよい」と言わざるを得ませんが、最終的には治水・利水両面でのリスクをどこまで見込むかどうか(安全度をどこまでみるかの工学的判断、エンジニアリング・ジャッジメント)の問題です。
この点において、国や東京都は、私たちが十分に納得のいく説明を全くしていません。
例えば、国による利根川の治水計画では、現在計画中のダムをすべて造っても洪水調節施設はまだ不足しているとする一方で、5年前に東京都が利水面で不要として撤退を表明した、利根川水系の戸倉ダム事業を国は中止しました。しかし、戸倉ダムも、洪水調節機能をあわせ持つ多目的ダムであり、洪水調節専用ダムに変更して事業を継続するという道もあったはずですが、このような矛盾する行為について説明が一切ありません。
また、利水面では、都議会民主党の試算では、最新データを用いれば、現在の東京都の水需要予測量から大幅に下方修正されることが明らかであるにも関わらず、東京都は水需要予測の見直しを頑なに実施しようとしません。
こうしたことから、八ッ場ダムについては、治水・利水の両面から必要性そのものに疑義があり、その必要性から再検証すべきと考えます。
小林ひろゆき
【意見】必要か必要でないかは、今後調査研究する必要があるが、少なくとも数10年も滞っている今、見直しは必要ではないか。
2.計画発表から半世紀以上を経過している八ッ場ダム事業について、お考えをお示し下さい。
〇見直しが必要
社民党、生活者ネットワーク、日本共産党、民主党
後藤雄一、小林ひろゆき、関口太一、福士敬子、米川大二郎
【意見】-日本共産党
八ッ場ダムは過大な水需給計画にもとづくもので、東京にとって必要ありません。また、自然破壊や住民の立ち退きなど、その影響も多大です。ただちに計画を中止すべきです。
〇このまま進めてよい
秋田一郎(自由民主党)
3.2で「このまま進めてよい」と回答された場合は、次の質問にお答え下さい。2001年、八ッ場ダムの工期は2000年度から2010年度に延長されました。2004年、八ッ場ダムの事業費は倍増し、全国のダム事業中トップの4600億円に増額することが決定しました。また、2008年には工期が2015年度に延長されました。国土交通省は今後の計画変更はないとしていますが、工事の進捗状況などから、工期の再々延長、事業費の再増額などの問題が浮上しています。このことについて、お考えをお示し下さい。
〇今後、工期延長、事業費増額などの可能性はない
秋田一郎(自由民主党)
(注:他の選択肢は、「工期延長、事業費増額などがあった場合は、八ッ場ダム事業の見直しが必要」「その他」でした。他の回答者は、2で「見直しが必要」としているため、この問いへの回答はありません。)
4.ダム予定地では、ダム建設が中止されると、現在進められている生活再建・地域振興事業にもストップがかかり、下流都県は地元に対して一切協力しないのではないか、と心配する声が聞かれます。今後、国の政策により、八ッ場ダム事業の見直しが行われた場合、長年犠牲となってきた地元に対して、東京都はどうするべきだとお考えになりますか。
〇ダム建設が中止されれば、生活再建・地域振興事業に支出する必要はない
なし
〇ダム建設が中止されても、生活再建・地域振興事業に一定の費用を負担するべき
社民党、生活者ネットワーク、日本共産党、民主党
後藤雄一、小林ひろゆき、関口太一、福士敬子、米川大二郎
【意見】-米川大二郎
公共事業を中止した際は、関係する国、自治体が事業の負担割合に基づいて必要な補償を行う。
〇その他
秋田一郎(自由民主党)
【意見】ダムは必要であり、引き続き進めていくべき。
5.わが国では、一旦始まった公共事業が中止となることは想定されておらず、そのための法整備も今まで行われてきませんでした。この点についてお尋ねします。
〇ダム事業見直し後の生活再建・地域振興を可能にする法整備が必要
社民党、生活者ネットワーク、日本共産党、民主党
後藤雄一、小林ひろゆき、関口太一、福士敬子、米川大二郎
〇法整備の必要はない
なし
〇その他
秋田一郎(自由民主党)
【意見】ダムは必要であり、引き続き進めていくべき。
その他、八ッ場ダム問題についてご意見がありましたら、お書き下さい。
【意見】
◇社民党―
すでに、治水、利水の上から必要がなくなっている八ッ場ダム事業は速やかに中止すべきです。
◇生活者ネットワーク
生活者ネットワークは大河原さん(現参議院議員)をはじめ、歴代八ッ場ダムには反対を貫いていますが、事業を止めることはできていません。政策にもダムや高速道路などのムダな公共事業を中止すると掲げました。これからも皆様と共に活動してまいりたいと思います。
◇小林ひろゆき
数年前、現地を直接訪問し、見て来ました。あの豊かな自然と温泉はぜひ残していただきたい。そのためには見直しが必要だと思う。
◇福士敬子
東京の給水可能な量は使用量をはるかに上回っている。洗濯機やトイレ等の節水対策が進み、かつて言われていた少人数家庭は水道量が割高になるという事実は覆された。今や家庭内人数の減少や、都内の人口増にもかかわらず、使用量は低下の一途をたどっている。また、多摩地域では、35万トン以上の地下水を利用しながら、水源量に組み込まれないなど、データ上の論理にも整合性がないまま、ダムの必要性のみが強調されるのは大いに問題だ。
◇米川大二郎
私が東京都職員時代の平成7年、世界都市博覧会の中止に伴う補償を担当しました。一旦始まった公共事業が中止になった事例のひとつです。この時は、できるだけ早く対応するため、条例は作りませんでした。(※都市博中止に伴う補償基準と都市博中止に伴う補償基準実施要領を作成し、これをもとに作業を行いました。)