「群馬・八ッ場ダム計画どうなる」(東京新聞)

2009年7月16日 東京新聞特報部より転載
「群馬・八ッ場ダム計画どうなる
  反対派 都議選で回生 推進派の自公過半数割れ 民主は総選挙で中止公約」
 

 国が群馬県長野原町で計画する八ツ場ダム。構想が浮上してから半世紀以上を経た今秋にも本体着工が予定される中、総選挙で政権獲得を視野に入れる民主党が政権公約(マニフェスト)で中止を明言、十二日の東京都議選では推進派の自民、公明両党を過半数割れに追い込んだ。反対派は「中止まであと一歩」と勢いづいている。(関口克己)

 「八ツ場ダム計画を見直し、中止させないといけないという声が都民に満ち満ちている」前橋市で二十日、計画見直しを求める市民団体「八ツ場あしたの会」主催のシンポジウム。群馬県議の関口茂樹氏がこう声を張り上げた。

 同ダムの総事業費四千六百億円のうち、都は八百七十億円を負担する予定。自民、公明両党は推進派だ。国は昨年、工期の五年間延長について都に同意を求めた。都議会で、民主党などは「水需要予測や洪水対策の検証が不十分」との理由で反対したのに対し、多数を占める推進派の賛成でこれを認めた。

 都議選を前にした今年六月、自民は再び「推進」を公約。一方、民主は「事業の再検証」を掲げて反対を宣言。鳩山由紀夫代表は党首討論で、民主政権下では、「(熊本県の)川辺川ダムとか八ッ場ダムとか、今の時世に合わない大型の公共事業は基本的にやめる」と明言、マニフェストにも明記した。
 都に公金支出差し止めを求める行政訴訟を起こしている市民団体「八ッ場ダムをストップさせる東京の会」が都議選候補を対象に行ったアンケートでは、自民党では回答した十七人全員が「建設すべきだ」としたが、民主党三十五人では推進論はゼロだった。

 そして迎えた都議選。一都五県の与党都県議二百七十人でつくる「推進議連一都五県の会」で会長を務めた自民都議が落選。与党も過半数割れした。野党が多数を占めたことで、都が同ダム関連支出を盛り込んだ予算案を提案しても、都議会が「NO」を突きつけることが確実となった。

 一都五県の住民が一斉提起した行政訴訟は五月以降、東京と前橋、水戸の各地裁で判決が出され、住民側か三連敗。反対派には重苦しい空気が漂ったが、政治での逆転劇に再び沸き立つ。「東京の会」の深沢洋子代表は「中止に向け、非常に良い条件が整った。民主は政権獲得した場合、公約を必ず実行してほしい」と話す。

 前橋でのシンポジウムは、約三百人の参加者で盛り上がった。元国土交通省防災課長の宮本博司氏が、国の河川洪水対策について「堤防の強化や遊水池などによる洪水エネルギーの分散を図るべきだ」と述べ、ダム依存体質からの転換を主張すると、参加者からは大きな拍手がわいた。

 八ツ場ダム計画地を訪ね歩いてきた歌手の加藤登紀子さんは講演で、八ッ場最大の節目になる今年を「『本当に素晴らしい年たった』と、言われるように生きないといけない」。
 それでも「一寸先は闇」なのが政治。加藤さんは政権交代が確実視される中、反対派に広がる楽観論をこう戒めた。
 「『あの時チャンスだったのに、ひどいことになった』と(将来)言われかねない危機感も持っている」

(写真)シンポジウムでは、加藤登紀子さん(右から3番目)が「09年は素晴らしい年だったと言われるようにしよう」と計画見直しを訴えた=20日、前橋市で