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’09衆院選 選挙区の構図 自民王国に社民挑む 「八ッ場」是非が争点(上毛新聞)

 地元の上毛新聞では、毎日のように一面に「八ッ場ダム中止」の文字が踊っています。総選挙の争点ということなのですが、中身についての新しい情報はあまりありません。ダム推進の自民党は、生活再建・地域整備をどのように完成させる予定なのか、地元住民に納得のゆく説明をしているでしょうか? ダム反対の野党は、ダムを中止してどのように生活再建・地域振興を実現するのか、ダム予定地を抱える群馬県内では、より具体的な説明が求められています。

2009年7月27日 上毛新聞一面より転載

ー’09衆院選 選挙区の構図 自民王国に社民挑む 「八ッ場」是非が争点ー

 衆院選群馬5区は自民前職で少子化担当相の小渕優子氏が高い知名度と組織力で着実に地歩を固めている。民主は県内小選挙区で唯一、候補者擁立を見送り、社民県連合代表で新人の土屋富久氏と、幸福実現党新人の生方秀幸氏が小渕氏に挑む。衆院選で事業の是非が争点となる八ッ場ダム建設予定地の地元選挙区であり、事業推進の自民、反対の社民両陣営の論戦が注目される。

5区立候補予定者
小渕 優子(35) 少子化相 自前
土屋 富久(72) 元県議   社新
生方 秀幸(37) 会社社長 諸新

前回(2005年9月)の結果
当 144、782 小渕 優子 自前
    52,394 田島 国彦 民新
   16,234  福田 あい子 共新

◆自民・小渕氏 応援続き不在も 組織力で優位に
 「小渕が大差で当選することが、八ッ場ダム事業推進を望む地元住民の思いを明確に示すことになる」。小渕氏の陣営は今回の選挙戦の重みをそう表現する。戦う相手は土屋氏だが、陣営は視界に常に民主をとらえる。民主が八ッ場ダム中止を掲げながら5区に候補を擁立しなかったことについて、岩井賢太郎選対顧問団長(富岡市長)は取材に、こう言い放った。「候補者を立てず(事業中止を)マニフェストに盛り込むのは、地元軽視だ」

 5区は構成市町村が県内最多の16。この広いエリアを、陣営は地域単位の8の「後援会連合」と、連合会を構成する59の「単会」、単会を構成する数百の「支部」でまとめる。昨年10月に立ち上げた選対には多くの市町村長が名を連ねた。

 過去3回の選挙と違うのは、小渕氏が全国各地の同僚から応援要請を受け、選挙区入りが数日に限られること。選対の南波和憲事務長は「(本人不在は小渕氏が)党の中で重要な位置を占めるようになったということ」と引き締める。

◆社民・土屋氏 比例復活を視野 反自民票に狙い
 土屋氏は26日、社民の福島瑞穂党首を迎え高崎駅前で行われた演説会で「八ッ場ダムほど政権選択とかかわる問題はない」と、八ッ場ダム中止を前面に戦う姿勢を示した。半世紀以上にわたる曲折を経て、ダム本体着工が目前となった八ッ場。地元で「中止」を訴えれば反発が予想されるが、土屋氏は「表に出ないが、地元には事業凍結ではなく廃止を望む声すらある」と、県議時代からの主張を貫く方針だ。

 連合群馬が推薦するほか、部落解放同盟、鉄道退職者の会、仕事関連の行政書士や社会保険労務士の団体が土屋氏を支持。会員一人一人と会って支持を訴えている。渋川や安中などの大規模工場の労組票にも期待を寄せる。前回の5区は民主候補が5万2千票、共産候補が1万6千票を獲得。反自民票の受け皿になることを狙う。比例代表北関東ブロックでの復活当選を視野に社民県連合は全県での活動にも取り組む。

 生方氏は街頭演説や宣伝カーで消費税の廃止や北朝鮮のミサイル阻止など党の掲げる公約の浸透を目指す。「自民の支持層が厚いのは実感しているが、自民、民主につぐ第三極として存在感を示したい」としている。

◆社民・福島党首が政権交代呼び掛け 高崎で街頭演説
 社民党の福島瑞穂党首は26日、衆院選の同党立候補予定者の応援で来県、高崎駅前で街頭演説した。自民、公明両党による現政権を批判し、労働者派遣法の改正や消費税率の引き上げ反対などの政策を訴えた。

 福島党首は「自公政権は雇用や社会保障、地域を壊してきた。社民党の選挙スローガンは生活再建だ。次の選挙で新しい政治をつくろう」と政権交代の必要性を呼び掛けた。

 民主党との連立政権にも「前向き」とした上で「民主党にも違う立場からしっかり物を言い、新しい政治の骨格をつくっていく」と強調した。

 演説後は報道陣の質問に対し、八ッ場ダム建設事業の中止を衆院選のマニフェストに 盛り込む考えをあらためて示した。

◆論壇ぐんま 衆院解散・総選挙 県版の公約に注目を

 衆院が解散され、「8月18日公示ー30日投開票」の総選挙に向け、事実上の選挙戦が始まった。県内五つの小選挙区には、26日現在、自民、民主、共産、社民、諸派など 17人が立候補を予定している。5選挙区を独占している自民が現有勢力を維持するか、 民主が小選挙区で初の議席を獲得するかが焦点だ。政権の行方によっては、国が長野原町で進めている八ッ場ダム建設事業の動向にも影響を及ぼすことになりそうだ。

 今回の特徴は、「政権」を争う自民、民主両党が県版のマニフェスト(政権公約)を発表し、県レベルでの政策を前面に打ち出して戦う姿勢を鮮明にしていることだ。両党のマニフェストも今後発表されるが、国政選挙をより身近に感じることができるため、歓迎したい。

 有権者にとっては4年ぶりにおとずれる「意思」を示す機会だ。判断材料となるマニフェストをじっくりと読み、候補者同士の論戦に耳を傾け、納得のいく一票を決めてもらいたい。

 県版マニフェストについて自民党県連は「国政に対する県民の声を反映させるべく、党組織の要望と各県議の意向を踏まえ、各候補者と協議し、県において必要とされ、行わねばならないことをまとめた」と説明。

 具体的には、八ッ場ダムの建設促進、医療・福祉の充実、北関東道の早期完成などを挙げている。同ダムについては「治水・利水の両面から必要なダムであり、積極的に推進し、一日も早い完成を目指す」と強調している。

 民主党の1~4区総支部代表でつくる県衆院選対策本部の県版マニフェストは、八ッ場ダム建設事業の中止を争点にして戦う考えを明確化。「無駄な公共事業の象徴」として中止し、財源を少子化対策や医療福祉の充実、地方都市再生に関する公共事業に振り向けるとしている。

 同本部は「政権交代が実現した際、特に力を入れて推進したい政策の指針を示した」とし、同ダム中止は党マニフェストにも盛り込まれる見通しだ。
 衆院が解散された21日、県民からは「雇用確保の政策を」「子育ての環境整備を進めてもらいたい」「景気回復が最優先」「教育、福祉分野で新たな取り組みを」など切実な声が上がった。

 2005年9月の前回総選挙からほぼ4年。年金や医療など社会保障制度のほころびが表面化し、若者を中心に将来への不安が広がっている。山積する課題、不安にどう答えていくのか。各候補者には分かりやすく、丁寧な説明が求められる。