2009年9月5日
八ッ場ダムの関係都県の知事や国土交通省は、「国が八ッ場ダムを中止すれば、利水予定者(都県等)が昨年度までに負担した1460億円を返還しなければならなくなる」として、八ッ場ダムの中止を政策に掲げる民主党を牽制しています。
——————————————————————————-
2009年9月4日 毎日新聞より転載
http://mainichi.jp/select/today/news/20090905k0000m040088000c.html
「八ッ場ダム:都支出の負担金「中止なら請求」…石原知事」
石原慎太郎東京都知事は4日、国土交通省が八ッ場ダム(群馬県)本体工事の入札を延期したことについて、「国の意思で(工事が)中止になったら当然、(負担金を)返還請求する」と話した。都はダム建設事業の負担金として、08年度までに457億円を支出している。
都は八ッ場ダムについて「利水、治水の両面からぜひ必要な施設」と位置づけている。石原知事は「いつ、どんな干ばつにさらされるか分からない」と必要性を指摘したうえで、「あそこまで造ったものを放棄するっていうのはちょっと私には考えられない。政府として冷静に判断してもらいたい」と述べた。【鮎川耕史】
——————————————————————————-
特定多目的ダム及びその施行令では、国が自らダムを中止する場合は想定されていませんので、新政権が八ッ場ダムを中止した後の費用負担の問題は今後検討していく課題です。
そのことはともかくとして、昨年度までに利水予定者が支出した1460億円には、多額の国庫補助金が含まれています。水道の場合は厚生労働省から、工業用水道の場合は経済産業省から国庫補助金が支出されています。補助率は条件によって異なり、たとえば埼玉県水道は約1/2、東京都水道は約1/3です。工業用水道は約2割となっています。
この国庫補助金を除くと、昨年度までに利水予定者が実際に負担した金額は1460億円ではなく、その約6割の約890億円になります。
仮の話ですが、国が1460億円を利水予定者に返した場合は、次に利水予定者が逆に国に1460-890=約570億円を返還することになります。
記事中の石原知事の話も、東京都が昨年までに負担したのは457億円ではなく、正確には約307億円とするべきです。残りは国庫補助金です。
利水負担金について、国庫補助金も含めた数字が一人歩きしているのはおかしなことです。