ダム事業中止後も継続される暫定水利権

2009年9月5日
 八ッ場ダムが中止されると、群馬県水道や埼玉県水道、藤岡市水道などが現在使っている暫定水利権が消失してしまうとされ、県知事、藤岡市長などが、八ッ場ダムを中止するとの民主党の政権公約を批判しています。しかし、これらの批判は、事実に基づいたものではありません。

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2009年9月5日付 毎日新聞群馬版より転載
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20090905ddlk10010264000c.html 
「八ッ場ダム建設:入札延期 藤岡市長が国交省に早期完成を要望」

 八ッ場ダム(長野原町)の本体工事入札延期を受け、藤岡市の新井利明市長は4日、国土交通省河川局長に、同ダムの早期完成と同市の毎秒0・25立方メートルの参画水量を安定水利権として認めてもらえるよう要望した。
 市上下水道部経営課によると、同市は91年3月、八ッ場ダムの完成(15年予定)を前提に神流川から毎秒0・235立方メートルの暫定水利権を得ている。同ダム建設で市は23億円を負担することになっていて、87~08年度に約16億円が支払い済み。今年度は1億913万円を支払う予定。

 神流川にある下久保ダムに水利権を持っている東京都が八ッ場ダムに参画していることから、八ッ場ダム完成後に都の下久保ダムの水利権と振り替える。

 同市の水道水の全体取水量は現在井戸からのくみ上げが45%、神流川からの取水が55%。暫定水利権は1年更新で、安定水利権に比べて、渇水時の取水に責任が持てなくなるという。【畑広志】
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 わが国では、今までに数多くのダムが中止されてきています。その中には、利水を目的としたダムもあり、八ッ場ダム事業における利水予定者(各都県、藤岡市など)に対するのと同様、ダムが完成する前に、そのダムの利水予定者にダムの完成を前提とした暫定水利権が許可されていたケースがあります。しかし、ダム中止後にその暫定水利権が消失することはなく、そのままの使用が認められてきました。二つの例をみてみましょう。

 徳島県の細川内ダム(国土交通省)は2000年に中止されました。那賀町工業用水道事業が同ダムの暫定水利権を使用していました。この暫定水利権の許可はダム中止後も継続され、現在も使用されています。国土交通省から水源措置は求められていますが、実際にそれができないため、許可が継続されています。

 新潟県の清津川ダム(国土交通省)は2002年に中止されました。周辺9市町村の水道が同ダムの暫定水利権を使っていて、ダム中止後も暫定水利権の許可が継続されました。その後、市町村合併等により、余裕水源が融通され、2006年度までに清津川ダムの暫定水利権は解消されましたが、ダム中止によって消失したのではありませんでした。
 このように、実際に使用されている暫定水利権がダム中止とともに消失することはありません。水源措置は求められますが、実際にそれができなければ、細川内ダムのように許可が継続されることになります。

 ダム建設を前提としていた筈の暫定水利権が、ダム中止後も継続されるのは、実際にはダムを建設しなくとも、河川からの取水に余裕があるからです。群馬県水道や埼玉県水道、藤岡市水道の暫定水利権も、長年、何の支障もなく、河川から取水し続けることができた水利権であり、暫定水利権として扱うこと自体に問題があるといえます。ダム建設を推進するために維持されてきた、このように不合理な国土交通省の水利権許可行政を根本から改めなければなりません。それは今後、政府が取り組まなければならない課題ですが、八ッ場ダム事業における暫定水利権の問題を考える場合、現行制度においても、暫定水利権がダム中止によって消失することはないという事実を踏まえる必要があります。

* 暫定水利権の問題全般については、こちらをご覧下さい。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/tinyd2/index.php?id=23