八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

推進署名 揺れる心

 前原大臣が八ッ場ダム中止を表明して以後、地元では自民党県議の声かけでダム推進の住民組織が立ち上げられ、署名活動が始まりました。署名活動のあり方を巡っては、「自治会の回覧板で署名集めがされている」、「狭い村社会では踏み絵のようなもの」との声も聞かれます。以下は、署名活動に揺れる地元を伝える記事です。

2009年10月13日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000580910130001
ー推進署名 揺れる心ー

 前原誠司国土交通相が「八ツ場ダムの建設中止」を表明してから3週間。建設予定地の長野原町では、地元住民らで作る「八ツ場ダム推進吾妻住民協議会」(萩原昭朗会長)が、ダムの早期完成を求める署名を集めている。しかし、署名に応じた住民の心の内には微妙な揺れが見え隠れする。(大井穣)

 推進協議会の関係者は「署名は地元だけでなく、ダムに関係する関東地方全体まで広げて集める。目標は20万人だ」と鼻息が荒い。長野原町でも、水没5地区のなかには、全世帯が署名したところもある。

 万が一にも、中止になれば、地元は総力をあげ国及び民主党に対して法的手段も含め、あらゆる闘争を繰り広げ――。署名に記された「趣意」には、地元が徹底抗戦の構えも辞さないことが記されている。

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 だが住民の本音は、署名の趣意とは必ずしも同じとは言えないようだ。

 長野原町・林地区。5日午後7時過ぎ、国交省職員らが出席して開かれた地区住民でつくる「ダム対策委員会」の会合では、中止後の生活再建に関する質問が相次いだ。

 国交省「道路の付け替え工事のうち町道については、ダムが中止になるとすれば当初の計画を検討し直さなければいけない部分がある。地元と協議して、よい方向で考えていきたい」

 住民A「協議して、希望通りになるわけ?」

 国交省「ええ……」

 住民B「ダムの本体以外は全部(計画通りに)造ると言っていたじゃないですか」

 国交省「基本的には生活再建ですから、進めてもいいという事だと……」

 住民B「いや進めていいと思いますじゃなくて。大臣は生活再建のうち何を進めていいと言っているの?」

 国交省「私どもも、一つひとつ仕分けしたわけではないので。予算の関係する話ですから、地元の要望はしっかり伝えていきたい」

 林地区に限らず、横壁や川原湯の両地区でも同様のダム対策委員会が開かれたが、歯切れの悪い国交省側に、住民が「ダム湖がなくても生活再建ができるというならば代案を示してくれ」などと詰問する一幕もあった。

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 署名に協力したある地区の老人男性はぼやく。

 「造りかけの道路は完成させてほしいけど、ダムは別にできなくてもいい。でも狭い地域だから、署名に協力しないわけにはいかない。村八分は怖いよ」

 町の国交省に対する姿勢も、徹底抗戦の構えから軟化しつつある。

 町は当初、建設中止の白紙撤回がない限り、前原国交相には、地元住民との意見交換会はさせないと主張していた。

 だが、高山欣也町長は各地区のダム対策委員会で、こうあいさつした。

 「大臣からは再度、意見交換会の要請があると思う。その際は、皆さんにぜひ、思いの丈を語って頂きたい」」