地すべり災害と八ッ場ダム

 ダム推進の旧政権下、ダムによる災害の危険性がマスコミで取り上げられることは稀でした。2009年10月25日、テレビ朝日のサンデープロジェクト「“危ないダム” ~ そして地すべり災害は起きた」では、災害を防ぐはずのダムが、逆に災害を引き起こした事例として、大滝ダム(奈良県)、太田川ダム(静岡県)、二瀬ダム(埼玉県)の問題を取り上げていました。

https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=23

 この番組に登場した専門家、奥西一夫氏(京都大学名誉教授)は、大滝ダムをはじめ全国のダムを調査した経験を踏まえ、八ッ場ダム建設によりダム湖周辺で地すべりが起こる可能性が高いとしています。
 総選挙後、前原大臣によるダム見直し政策について、様々な議論が起きている中で、奥西一夫氏は災害を引き起こしてきたダムと八ッ場ダムには共通点があるとして、ダム建設中止の必要性について述べています。

「ダム建設をひとまず中止すべきいくつかの理由」
http://hb4.seikyou.ne.jp/home/Kazuo.Okunishi/dam-test/opinion-02.pdf

~一部転載~  
(カッコ内で補足説明を付け加えてあります。)

(大滝ダムにおいては)地すべりが発生する前にも,地すべりが発生した後でも,このように不可解な言動がおこなわれたのはなぜであろうか。わたしはこれを,自らの過ちを認めれば失脚して再び回復できないという上級官僚の恐怖心が,過ちを糊塗して問題をごまかしつつ,前へ前へと物事を進行させて行く原動力になっているのではないかと考える。「公共事業は一旦決めたら後戻りできない」とよく言われるのも多くはこのような原因によっているのかも知れない。論語に「過則勿憚改」(過ちては改むるに憚ることなかれ)という警句があり,しばしば引用されるのであるが,これまでの日本社会が過ちを悔い改めた人に対して極めて非寛容であったこともこのような恐怖心をあおり立て,誤った政策や事業が止めどもなく継続されるという結果を生んでいるのかも知れない。しかし,これからの日本は,いつまでもそのような欠陥社会であり続けるとは思いたくない。ここから我々が学ぶべきことは,おかしいと思ったら引き返す勇気を持つことである。
 私は八ッ場ダムに関する訴訟(八ツ場ダム建設にかかわる利水負担金と治水負担金の支出の差し止め請求)に関わって,地すべり危険度と地すべり対策に関する鑑定意見書(http://www.yamba.jpn.org/shiryo/ikensho/ikensho_okunishi.pdf)
を提出した。事業者(国と関係都府県)は概査によって地すべり危険度が高いと考えられる22の斜面を抽出しているが,このように地すべり危険度の高い斜面が多い事例は稀である。しかし,事業者はここでも「初生地すべりは予見できないから対策もできない」と称して,自らを免罪し,過去に地すべりが起きたことがわかっている斜面についても,「すべり面となる地層を確定できなかった」として調査範囲から外したり,地すべり対策を実施したくない区域ではわざと調査をしないで,地すべり対策区域を狭く設定したりして,計画段階での事業費を低く抑えようとしている。そして,ダム計画期間中に,地すべり履歴が明確でない斜面で地すべりが発生すると,その斜面だけについて地すべり対策をおこない,それと同じ条件下にあると考えられる他の斜面は一顧だにしていない。このような状態のままダム着工に突き進むと,第2 第3 の白屋地すべり(大滝ダム周辺)が発生してしまうおそれがあって,各種の対策費のために事業費が大きく膨れあがってしまうことは避けられないのではないかと考えられる。大滝ダムでは幸いバイオントダム型の災害にはならなかったが,八ッ場ダムの湛水域ではバイオント型の地すべり性崩壊が危惧される斜面が多い。ここでも,おかしいと思ったら一旦立ち止まり,必要なら引き返す勇気を持つことが肝心である。