八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

埼玉県知事へ公開質問

 八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会では、このほど埼玉県の上田知事に公開質問書を提出しました。公開質問書の全文を転載します。
 この公開質問書に対する埼玉県の回答は、こちらに掲載しています。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=752
 

 平成21年11月9日
 埼玉県知事 上田清司様
                   八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会代表 藤永知子

事務局 〒330-0074 さいたま市浦和区北浦和5-15-41-221(大高方)
電話 048-831-4891

 10月28日の知事記者会見における八ッ場ダム問題への発言に関する公開質問書

 去る10月28日の記者会見で上田知事は八ッ場ダムに関していくつかの発言をされました。その中で、看過できない発言がありますので、それに関して下記のとおり、質問をいたします。誠意を持って文書でお答えくださるよう、お願いいたします。

1 利根川の加須等における洪水位について
『大体、地元の加須とか、大利根町の皆さんに聞くと、5、6年に1回くらいは堤防すれすれに水が来ておりますと。チャポチャポといって、時々ここに水が来る場合もありますと。」

利根川ではカスリーン台風、キティ台風のあとの大きな洪水(平成10年9月洪水や13年9月洪水など)ではいずれも最高水位は堤防の一番上から約4mより下にとどまっており(図1参照)、十分に余裕がある状態で洪水は流下しています。「5、6年に1回くらいは堤防すれすれに水が来て」いるという事実はありません。知事のこの発言はいつどこで聞いたものであるのか、発言の根拠を明らかにしてください。

[img]https://yamba-net.org/wp/doc/200911/image01.gif[/img]

2 平成10年洪水における群馬県庁の車の流出について
「それから大澤知事も言われましたが、平成10年の段階でも極めて危ない水面すれすれで、土手近くに置いてあった駐車場の車が全部流されるという、それほどスピーディーにいざ豪雨で来るときは来るという」

平成10年9月洪水では図2のとおり、前橋地点においても最高水位は堤防の一番上から4m以上も下にありました。群馬県職員の車が流出したのは、河川敷に車があったからであって、流出の原因は河川敷を駐車場代わりに使うという無防備な行為にあります。知事がそのことをご存じなかったかどうか、お答えください。

[img]https://yamba-net.org/wp/doc/200911/image02.gif[/img]

3 利根川堤防の漏水について
「平成10年からの10年間だけでも利根川流域での漏水が起きている・・・・利根川沿いで26か所、10年間で起きているんですね平成10年から20年までの間に。」

 利根川堤防の漏水は堤防とその地盤の強化によって防止すべきであり、わずかな水位低減効果しかない八ッ場ダムに堤防の漏水防止を期待するのは筋違いであり、非科学的でさえあります。知事は、八ッ場ダムが完成すれば、漏水をどの程度減らすことができると考えているのか、その具体的な数字を明らかにしてください。

4 暫定水利権について
「そういう暫定水利権ではなくて、我々は安定水利権を得るために八ッ場ダムに参加しているわけでありまして、」

 この埼玉県水道の暫定水利権について2点お聞きします。

4-1 暫定水利権による取水の状況
埼玉県の暫定水利権は農業用水転用水利権の冬期の取水に関してのものですが、私たちの調査ではこの冬期の暫定水利権が今まで取水に支障をきたしたことはありません。冬期の渇水はきわめてまれであって、過去にあったのは平成8年、9年の軽微な渇水だけですが、このときも安定水利権と比べて不利な扱いはありませんでした。もし取水に支障をきたしことがあるならば、その期間とその程度を明らかにしてください。

4-2 県民の過重負担
埼玉県水道は農業用水転用水利権を得るため、巨額の費用を負担し、一方でその冬期分の水利権を得るという理由で、さらに巨額の費用を負担しています。そのため、表1のとおり、その合計の負担額は通年の水利権を得る場合と比べると、1.5倍以上にもなっています。いわば、私たち県民は二重の負担をさせられているようなものです。本来は不要な八ッ場ダムに参加しているために県民に過重な負担を強いていることについて知事の見解を明らかにしてください。

[img]https://yamba-net.org/wp/doc/200911/image04.gif[/img]

5 付替道路等の工事進捗率と完成割合について
「実際70パーセント、80パーセント出来てる所も、共用開始の部分が2パーセント、6パーセントにもかかわらず、それが進ちょく率と言ったり」「それを言っている人がインチキまがいだということです」

私たちがマスコミに発表した資料では図3のとおり、付替道路等の工事進捗率と完成区間の割合を分けて示しています。ただし、この工事進捗率は契約締結しただけのものも含まれており、実際の工事進捗状況を表すものではありません。
そして、この図の数字は今年6月9日の政府答弁書(内閣参質171第186号)によるものです。
それにもかかわらず、知事は「それを言っている人がインチキまがいだ」と発言しています。これは知事が勝手に誤解して個人を非難しているものであって、看過できる発言ではありません。知事はどのような資料に基づいてこのような発言をしたのかを明らかにしてください。

[img]https://yamba-net.org/wp/doc/200911/image03.gif[/img]

—転載終わり—

なお、上田知事は11月10日の定例記者会見で上記公開質問所について、以下のようにコメントしています。
http://www.pref.saitama.lg.jp/room/kaiken/text091110.html#04

 八ッ場(やんば)ダムに関する市民団体からの質問について
朝日 知事の10月28日の会見のときの八ッ場ダムの御見解について、市民団体の方から追加質問状というのが届いて、いくつか何点かの知事の誤解に基づいた発言じゃないかと、そういった質問状を出されているんですけども、このことについて知事の御見解を。改めて市民団体側には御返答をされるのかという…

知事 原則、こう何て言うんでしょうかね。でたらめだとか、意味不明なものにはお答えしませんが、きちっと名乗られたものに対しては回答することにしています。
 内容的に言うと、私が誤解だというよりは、質問された方が誤解されてるきらいがあるので、どっちかと言うと担当者から答えたほうが適切かなというふうに思いますので、担当者からお答えさせていただきます。
 まあ、具体的に言えば、土手の近くの駐車場というような私の表現が河川敷じゃないかと。一般的にはそういう気分で言ったつもりなんですが、土手の近くの駐車場というのが、河川敷と違うのかと、誤っていると。私は河川敷のつもりで言ったのですが、表現が河川敷と言わずに土手の近くの駐車場と。
 正に河川敷の駐車場です。群馬県の県庁の駐車場は。そういうことについての御指摘ですので、まあ、言葉の綾をいろいろ御指摘されているので、言葉の綾に対して事務方できちっと答えればいいことだと思っています。