八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

ダム見直し有識者会議の行方

 総選挙の最中から、八ッ場ダム事業の見直しに対して様々なハードルが設けられてきました。関係都県知事によるダム中止に反発する動きは、その発言が従来の国交省の主張を繰り返すばかりであることからも、各都県に出向している国交省の官僚と無縁ではないといわれます。「すべては国土交通省の自作自演。地元で起こることは、地元住民の発意であることは稀で、大抵は推進派の入れ知恵」とは、長年ダム計画に翻弄され、煮え湯を飲まされてきた地元住民の言葉です。
 河川行政の転換に当たって、八ッ場ダムは象徴的な意味合いをもち、八ッ場ダム問題を長引かせることが政策転換を阻む役割を果たすという最悪の事態を招いています。こうしてダム事業の見直しも、現地住民の生活再建も膠着状態のまま時間が過ぎてゆきます。
 現在、全国143ダムの見直しにあたり、前原国交大臣が立ち上げることになった有識者会議の動向が注目されています。有識者会議立ち上げの発端、その後の反響、内容などについて、情報を時系列で追ってみます。

★第一幕一場
 2009年10月27日の大臣会見において、前原国交大臣は、「我が党がマニフェストに掲げた基本的な考え方は堅持しつつも、八ッ場ダムにつきましても他のダムと同様の検証をさせて頂きたいということを地元の方々にご提案をさせて頂きたい」と語り、同日に行われた八ッ場ダム関係1都5県知事との話し合いにおいてもこの提案を伝えました。

【大臣会見要旨】
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin091027.html

〔関連箇所一部転載〕
1つだけ私の方から申し上げたいと思います。
八ッ場ダムの問題です。
八ッ場ダムの建設予定地の住民の皆さん方に対しては是非とも話し合いの機会を持たせて頂きたいという思いを伝えて参りましたが、残念ながら今まで直接対話をすることが出来ていない状況であります。
言うまでもなく今この問題で一番困っておられる被害を受けておられる方々は地元住民の方々でございます。
ダムの中止とそしてまた推進という様々な声の中でその狭間で苦しんでおられる。
また将来が見えないという状況が続いていることを大変心苦しく思っております。
そこでこういった状況を打開するということが何よりも大切なことではないかということで、新しい提案をさせて頂こうと思っております。
それは我が党がマニフェストに掲げた基本的な考え方は堅持しつつも、八ッ場ダムにつきましても他のダムと同様の検証をさせて頂きたいということを地元の方々にご提案をさせて頂きたいと思っております。
今までは中止ということを皆さん方に申し上げてきた訳です。
他のダム143から川辺と八ッ場を除いた141については再検証を行うということを申し上げて参りましたが、八ッ場ダムにつきましても再検証のプロセスを取らせて頂きたいと考えております。
そして是非ともそういった新しい提案を受けて地元の方々との意見交換を出来るような状況を作り、我々の出来るだけダムに頼らない治水、河川整備というものにご理解を頂く、そういったきっかけを作りたいと考えております。
なお、今日私は関東知事会に伺って1都5県の知事さん達とこの旨もお話しをさせて頂きましてご理解頂くように努めて参りたいと考えております。私からは以上です。

【前原国交省大臣と八ッ場ダム関係1都5県知事との話し合い】議事録
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=86711
(群馬県ホームページ)

 
★第一幕二場
 前原大臣の発言を受けて、関係都県の知事は11月13日、「八ッ場ダム事業の再検証について」緊急の申し入れを行いました。

【「国による八ッ場ダム建設事業の再検証に対する1都5県知事の緊急申し入れ」について】
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=86607
(群馬県ホームページ)

 この中で、以下の申し入れを行っています。

3 再検証は、中立的、専門的な分析、かつ冷静な判断のもとで行われる必要がある。このため、専門家による有識者会議を行う場合、その人選については1都5県知事の意向を反映させること。

5 八ッ場ダムの再検証に基づく代替案については、関係都県知事が意見を述べられることを国土交通大臣は確約しているが、関係都県の意見を十分に反映させるため、再検証の検討過程において、随時、関係都県に情報を提供するとともに協議に応じること。

★第一幕三場
 11月20日、前原大臣は「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の設置を発表。↓
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/211120arikata.pdf

~一部転載~
「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」委員
宇野尚雄岐阜大学名誉教授
三本木健治明海大学名誉教授
鈴木雅一東京大学大学院農学生命科学研究科教授
田中淳東京大学大学院情報学環
総合防災情報研究センター長・教授
辻本哲郎名古屋大学大学院工学研究科教授
◎中川博次京都大学名誉教授
道上正?鳥取大学名誉教授
森田朗東京大学公共政策大学院教授
山田正中央大学理工学部教授
◎:座長(予定)
(敬称略、五十音順)

 記者会見において、前原大臣は有識者会議の立ち上げについて以下のように述べています。

【前原大臣会見要旨】
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin091120.html

〔関連箇所一部転載〕
就任以来出来るだけダムに頼らない河川整備をということを申し上げて参りまして、143のダム事業を見直していくということを申し上げて参りましたけれども、その基本的な考え方、見直しをするための専門家会議の構成が決まりましたので皆様方に発表させて頂きたいと思っております。
概要につきましては皆様方のお手元に配布をしたペーパーに書いてございますけど、9名の専門家の方々で構成をさせて頂きまして座長には京都大学名誉教授の中川博次先生にお願いをしようと考えております。
皆様方にお配りをしているお手元のペーパーにも書かせて頂いておりますけど、主な検討事項というのは幅広い治水対策案の立案手法、新たな評価軸の検討、総合的な評価の考え方の整理、今後の治水理念の構築ということで、今までの河川整備の根本的な考え方を見直して頂こうと考えております。
第1回の会議は12月3日木曜日6時から8時ということで国土交通省の中でやらせて頂きたいと思います。

★第一幕四場
 この有識者会議が非公開であること、メンバーに従来ダム事業推進に協力してきた学者が少なからず含まれていることについて、各方面から厳しい意見が寄せられています。

◆有識者会議委員に関する情報
http://www7b.biglobe.ne.jp/~yakkun/suigenrennnope-zi2/home/zimukyokukara/091120iinjouhou.pdf
(水源開発問題全国連絡会調べ)

◆「治水のあり方、有識者会議のあり方」
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-6333.html
(ダム日記2 by まさのあつこさん)

◆八ッ場ダムをストップさせる各都県の会より↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=759
「有識者会議の公開を求める要望書提出」(2009年12月1日)

◆九州住民ネットワーク事務局長、原豊典さん(川辺川ダム反対運動の当初からの中心メンバー)より「前原国交相への手紙」(2009年11月23日)
http://blog.goo.ne.jp/michie39/e/730341499d7b1c7b22754943c4c72c80
(佐世保便り)

◆国交省河川局のダム見直し「逆流」委員会の顔ぶれ
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/756e2ba3f59e680ebb59636426615fde
(保坂展人のどこどこ日記ー2009年11月29日)

★第二幕一場
 2009年12月3日、第一回の有識者会議が開催されました。

◆2009年12月3日 共同通信ニュースより転載
ーダム見直しで有識者会議 整備の在り方「リセット」
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120301000766.html

 国土交通省は3日、前原誠司国交相が見直しを表明した、全国で建設中か計画中の143ダム事業について、継続が妥当かどうかの判断基準などを策定する有識者会議(座長・中川博次京都大名誉教授)の初会合を都内で開いた。
 冒頭、前原氏は「今までのダムを中心とした河川整備の前提をリセットし、整備の在り方を根本的に考え直してほしい」とあいさつ。中川座長は「(ダム建設が)戦後復興や高度成長に貢献する一方で、環境への影響や多額の事業費といった欠点が見えてきた」と指摘した。

 同会議は「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換を進めるとする前原氏の考えに基づき、堤防のかさ上げや既存ダムの改良などの治水策を検討。環境や景観への影響なども重視し、河川整備事業を評価する新たな基準を来夏の中間取りまとめまでに策定する。

【第1回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議】
◇議事録
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/resource/y2010e83bebd44a8ab5b1e8d9f6252da11a9ed305abadb/%E7%AC%AC1%E5%9B%9E_%E8%AD%B0%E4%BA%8B%E9%8C%B2.pdf
(2010年2月1日公表)

◇配布資料↓
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2009e72efe45a416bd2cf6d1d7ddaf848bdcaef08ab1e.html
(↑ダウンロード↓)

議事次第(pdf,64.0KB)
資料-1_委員名簿(pdf,47.0KB)
資料-2_規約(案)(pdf,86.0KB)
資料-3_討議スケジュール(案)(pdf,107.0KB)
資料-4_主な論点 ~中間とりまとめに向けて~(pdf,94.0KB)
資料-5_治水対策案の主な例(pdf,3.0MB)
資料-6_河川整備計画・事業評価制度 等(pdf,242.0KB)
資料-7_ダム事業の推移 等(pdf,224.0KB)

◆今後の治水対策のあり方に関する有識者会議
http://yurika-net.sakura.ne.jp/blog/
(ジャーナリスト・高橋ユリカさんによるレポート)

◆週刊金曜日・金曜アンテナより転載
http://www.kinyobi.co.jp/backnum/antenna/antenna_kiji.php?no=912
「治水対策有識者会議開催 完全非公開、見えない審議」(by ジャーナリスト、まさのあつこさん)

「『できるだけダムにたよらない治水』への政策転換」との趣旨で前原誠司国土交通大臣が招集した「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(座長・中川博次京都大学名誉教授)が三日、国交省内で開催された。
 大臣は冒頭挨拶で、「ダムを中心とする河川整備をいったんリセットしたい」と語り、同会議で策定される「新たな物差しで、一四三のダム事業の継続、中止、凍結を議論していきたい」と意気込みを示した。辻元清美、馬淵澄夫両副大臣と三日月大造政務官も出席し、政治主導が演出されたが、早くもその骨抜きが懸念される。
 第一に、河川行政の大改革を行なうのであれば、国交省設置法に根拠を持つ社会資本整備審議会に諮問し、法改正が必要だ。それは河川局長が大臣に進言すべきことであり、私的諮問機関にとどめさせたことは改革への非協力に他ならず、局長失格である。
 第二に、行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫内閣総理大臣)の事業仕分けでは、報道・傍聴にかかわらず、録音・撮影の制限はなかった。ところがこの会議は冒頭を除き非公開。政策形成過程を公開する内閣の方針に整合性を持たせる目配りもせず後退させたことも、河川行政における大臣補佐トップたる河川局長の怠慢だ。
 第三に、肝心の中身だが、会議終了後の政務官会見の内容は、事務局を務める河川局河川計画課が事前準備した資料の域を出ていない。幅広い治水対策の立案手法、新たな評価軸、総合的な評価方法の検討、今後の治水理念の構築を目的とするという曖昧な筋書きだ。目的の絞り込みが甘く、官僚によるコントロールが容易である。「非公開にして自由闊達な議論を確保した」(政務官)と言うが、筋書きを離れる議論があっても外部からは見えない。規約には「発言者氏名を除いたものを国交省ホームページに公開する」と書き込まれ、発言の責任を持つ者がいない。
 保坂展人前衆院議員は六日、八ん場ダム集会で「委員にはダム行政を混迷させてきた戦犯とおぼしき人もいる」と委員構成を批判した。会議の最終報告は二〇一一年夏だが、大臣は骨抜きと時間の引き延ばしに気づいているのか。

●ダム日記2 「非公開で議事録公開のワケ」 by まさのさん
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-e103.html

◆2009年12月4日 読売新聞群馬版より転載
ダム見直し有識者会議初会合「八ッ場」早期決着見えず
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20091203-OYT8T01436.htm

 国土交通省は3日、「ダムによらない治水対策」を議論する有識者会議の第1回会合を開いたが、八ッ場ダム(長野原町)問題で、県や地元が求める早期決着の行方は見えないままだ。

 「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」は、前原国交相が設置、座長の中川博次・京都大名誉教授(河川工学)ら、水工学や森林科学などの専門家9人で構成される。

 前原国交相は3日の会合で、「ダムがすべて悪いとは言わないが、今までのダムを中心とする河川整備をいったんリセットし、根本的に考え直してほしい」と述べた上で、八ッ場ダムにも言及。現在の利根川整備計画が想定する最大流量について、「仮に八ッ場ダムが出来ても、さらなるダムが必要になる」と述べた。

 また、中川座長は「ダムの代替案として、流域全体で雨水を処理する方法を考えないといけない」と目標設定した。

 会議後に記者会見した三日月大造政務官によると、八ッ場ダムの議論はなかったものの、現在の河川整備計画の基準としている流量について「これまで用いてきた物差しをもう1回議論する」ことを確認した。

 会議は来夏に中間とりまとめを行って、新たな治水対策の基準を示し、2011年夏に最終提言を行う予定だ。国交省は現在進められている全国143か所のダム事業について、来年度予算編成段階で「(来夏にできる)新基準で検証する」と「検証せずに工事を続ける」に分類。新基準で検証した結果、不要と判断したダムは中止する方針だ。

 大沢知事は同日、取材に対し、「日本国というあり方を考えてダムがどうなのかという議論をするのは大いにいい」と会議自体は評価する一方、「八ッ場をそのままずっと引きずっていいのか」と述べ、同ダムの再検証作業については、早急に行うことを求める考えを示した。

★第二幕二場
 有識者会議の公開を求めて、全国の31市民団体が要望書を提出しました。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=792

★第二幕三場
 上記要望書への回答は届かず、国交省は第二回有識者会議を2010年1月15日に開催することを二日前の1月13日に発表しました。
 ↓
http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000213.html

 市民団体では再度、有識者会議の公開を求めて要望書を前原大臣に提出しました。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=799

◆第三幕一場
 第二回有識者会議が開かれました。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=808

 意見聴取を受けた嶋津?之氏(当会運営委員)による配布資料が国土交通省のホームページに掲載されています。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=807

 有識者会議の意見聴取に応じた嶋津氏の見解をこちらに掲載します。↓

 ~会議の非公開~
 この有識者会議の問題は何と言っても、非公開で会議が進められていることです。この会議はダムにたよらない治水へと、従来の河川行政を根本から変えていくことを目的とするものであるから、国民とともに議論を進めていく姿勢がなければ、その答申は国民の共感を得るものになりません。公開はその目的を達成するための必須の条件なのです。会議の冒頭で、座長から、会議の中で出てくる特定の河川名、ダム名が公開されると、関係住民に不安を与えるので、非公開にするという説明がありましたが、それは非公開の理由になるようなものではありません。これからも会議の公開を強く求めていかなければなりません。

会議は非公開であるけれども、ダムの問題点、ダムにたよらない治水へ河川行政を変える具体的な手順を有識者会議の委員、政務三役に伝えなければならないと考え、私は出席することにしました。委員は9人のうち、8人が出席し、前原大臣、馬渕副大臣、三日月政務官も出席しました。

 ~意見陳述のポイント~
 私の意見陳述で使った配布資料は、国交省のホームページをご参照ください。私としては概念的な話ではなく、データに基づく確かな事実を伝えるように心がけました。

 30分の陳述で述べたポイントは次のとおりです。

1 ダムは次の根本的な問題があるので、ダムによらない治水を進めなければならない。

 ① ダムの集水面積は小さく、もともと、あまり大きな効果を持ち得ない。
 ② 雨の降り方によって治水効果が大きく変動するギャンブル的治水対策である。

 ③ ダム地点から下流に行くほど、洪水ピークの削減効果が減衰する。
 ④ ダム地点の洪水が想定を超えると、ダムは治水機能が急減する

2 新規ダムを治水計画から除くためには、次のステップを踏んで検証していく必要がある。

 第1ステップ 治水計画の目標流量を近年の最大観測流量に近い数字に再設定する。

 第2ステップ 河川整備基本方針で定められている河道整備を優先して進める治水計画に変更する。

 第3ステップ 現況河道で流下が可能な洪水流量および河床掘削や堤防の一部嵩上げで流下が可能となる洪水流量を徹底追求する。

 第4ステップ 想定規模を超える洪水がきても、壊滅的な被害を受けないように、越流があって直ちに決壊しない耐越水堤防に強化するとともに、豊川霞堤地区の事例を参考にして流域への洪水の受容の方策を追求する。

3 ダムの費用便益比(B/C)の正しい再計算を実施する必要がある。

 新規ダム事業のB/Cを現実に即して正しく再計算すれば、いずれのダムも1を大きく下回り、ダム中止の理由が明確になるので、その再計算を実施する。

 ~有識者会議の印象~
 ダム推進派の委員が多数を占めると思われる有識者会議でしたが、質疑で最初に発言した一委員の意見は意外にも「私も基本的に同じ意見だ」というものでした。30分の質疑の間で、6人の委員から質問、意見があり、そのうち、1人は敵意むき出しのものでしたが、4人の意見は方向性としては私の意見と共通するところもありました。特に座長は、前原大臣の意向を受けて、ダムによらない治水のあり方を何とかまとめたいと考えているようでした。

 しかし、問題は、方向性がたとえよくても、ダムによらない治水の具体的な手順、基準をこの有識者会議が本当につくることができるかです。答申が抽象的な文言の羅列だけで、実際にダムの中止に結びつかないもので終ってしまうことも予想されます。やはり、会議の公開を求めて、会議の進行状況を国民がしっかりチェックしていかなければなりません。

【国土交通省ホームページに掲載された議事要旨】
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010ea4cb8e09f25a701abe7fb4a3fc9bdabec5a8728d.html

 第2回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議 議事要旨
 平成22 年1 月15 日(木)15:00~17:00 中央合同庁舎3 号館 4階特別会議室
【出席者】
中川座長、宇野委員、三本木委員、鈴木委員、辻本委員、道上委員、森田委
員、山田委員、前原大臣、馬淵副大臣、三日月政務官、中原政策官、佐藤河
川局長
【委員以外からのヒアリング】
○嶋津暉之氏より、ダム建設の問題点、治水、利水の観点からダム建設の必
要性が喪失していることについて提起がなされ、4つのステップにより新規ダムを治水計画から除く提案がなされた。

その後、
・目標流量のあり方について
 実測流量と推定流量の取り扱い、タイムスパン、河川の重要度のとらえ方など
・治水対策の平等性、公平性について
 憲法で保障される生存権との関係、訴訟に耐えられるのかなど
・堤防の強度について
 越水を容認するに当たって、堤防の強度を技術的にどう担保するか等について委員との間で質疑応答があった。
【今後の討議に向けての主な論点】
○第1回有識者会議後に、委員がそれぞれの専門分野の観点等から作成した
論点メモをもとに、座長が作成した「今後の討議に向けての主な論点」「当
面のテーマ」について討議が行われた。
○主な意見は以下のとおり。
・対策案を検討する前に治水目標はどうあるべきか、治水対策というのは
どこまでどういうもので守るかという議論をしておく必要があるのではないか。
・河川整備計画レベルを念頭において議論することでよいのではないか。
・評価軸は、例えば治水上と利水上の必要性、実現可能性、全国的に見た公平性、災害ポテンシャルの高さ、技術的な可能性、財政的な可能性、時間軸などが考えられる。
・ダムを単独で評価するのではなく、河川整備計画の中でダムというプロジェクトがあるため、堤防等を含め、流域全体として様々な治水対策を取り上げ、代替案として提示し、適応性などの基本となるインフォメーションに基づき総合的に評価するということではないか。
・地方にダムを作ることが、地域経済の発展と日本経済の成長に寄与するという論理が通ってきた。地域に人を集めて雇用をつくり、そしてお金を回すという仕組みが、推進する側のメカニズムとして働いてきた。上流のダムを中止して下流の堤防を強化すれば、コストは低くなるかも知れないが、地域経済の問題は残る。個々のダムについて検証するときには、その要素を無視したら、かなりの反発・批判が出てくるのではないか。
・具体的なサンプルの検討については、同じ直轄でも大流域と小流域の河川では異なるため、ある程度カテゴリを分けて考えるべきかも知れない。
・水害の保険について、最終的に制度化するかどうかは別として、検討する必要があるのではないか。スイスでは国家賠償という考え方は無く、すべて保険で対応している。水害で河川管理者が訴えられ、敗訴して賠償する方が良いのか、保険で担保する方が良いのか。時間はかかるが、そのようなことも根底から考える良い機会ではないか。
○今後、本会議とは別に、委員による打合せを行っていくこととなった。

【今後の治水対策のあり方に関する意見募集について】
○意見募集については案のとおり了承され、できるだけ速やかに意見募集が
行われることとなった。

◇第三幕二場
 国土交通省河川局より、今後の治水対策のあり方についての意見募集が始まりました。
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010e2c8c5390f95e1227cb5ba09aee4232e0456377e0.html

■2010年1月20日 共同通信ニュースより転載↓
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010012001000592.html

ダム以外の治水策を募集 国交省の有識者会議
 ダム事業を継続するかどうかの判断基準を策定する国土交通省の有識者会議は20日、堤防のかさ上げや森林保全などダム建設以外の治水対策を進める方法などについて意見募集を始めた。期間は2月19日まで。

 有識者会議は「できるだけダムに頼らない治水」への転換を実現するため、昨年12月に前原誠司国交相が設置。夏ごろにも中間とりまとめをする予定。意見は会議での検討の参考に使う。

 募集するのは(1)堤防の強化や遊水地の整備などの対策はどのような場所で行うのが適しているか(2)洪水が起きたときに情報をどう迅速に住民に提供するか―など被害を軽減する方策について。

 ダム建設と堤防強化などを比較して治水策を決める際、費用以外にどのような項目を考慮すべきかについても聞く。

 意見は郵送またはFAX、電子メールで受け付ける。問い合わせは国交省河川計画課、電話03(5253)8445。

◇第三幕三場
 2010年1月29日、宮村忠氏への意見聴取が行われました。宮村氏は従来、ダム推進の立場の論客として知られてきましたが、今回の有識者会議における報告では、ダムの必要性については言及しなかったと報道されています。

■2010年1月30日 上毛新聞より転載
 ー洪水の歴史など主題に意見聴取 国交省が有識者会議ー

 国土交通省は29日、八ッ場ダムなど全国のダム事業の継続が妥当かどうか判断基準などを策定する「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の第3回会合を開き、関東学院大の宮村忠教授(河川工学)から利根川流域の洪水の歴史や水防への取り組みなどをテーマに意見を聴取した。委員から治水を扱う行政の専門組織の必要性を指摘する意見などが出た。
 宮村教授はダムの有用性を認めながら、治水について研究している。会議後に記者会見した同省の三日月大造政務官によると、宮村教授は治水上のダムの必要性については言及しなかったものの、河口堰は有効との考え方を示したという。

 第三回有識者会議の配布資料が国土交通省のホームページに掲載されています。↓
http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010e38985c1df4932f7cb28755c31746b9128cad91f0.html

議事次第
http://tinyurl.com/yf78yrm
委員名簿
http://tinyurl.com/ygpu54x
資料1-1
http://tinyurl.com/ykv626f
資料1-2治水と水防の構図 ~利根川を例にして~
http://tinyurl.com/yklqyjp
資料1-3
http://tinyurl.com/yk3fvwb
参考資料1資料2今後の討議に向けての主な論点
http://tinyurl.com/yzmd7kw

第三回有識者会議の議事要旨が国交省のホームページに掲載されました。↓
http://snipurl.com/ub8oo

第3回 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議 議事要旨
 平成22年1月29日(金)18:00~20:00 中央合同庁舎3号館 4階特別会議室
【出席者】
中川座長、三本木委員、鈴木委員、田中委員、辻本委員、道上委員、森田委員、山田委員、前原大臣、馬淵副大臣、辻元副大臣、三日月政務官、中原政策官、佐藤河川局長

【委員以外からのヒアリング】
○宮村忠氏より、利根川を例として治水と水防の構図に関して、
・利根川にある中条堤の特徴、歴史、経過や上下流対立の問題
・ 近年の洪水における利根川での取り組みとして、堤防の漏水に対する水防の取り組みと、住居での対応としての水塚等の特徴や構造等について発表があった。その後、
・水防組織の維持
・水防活動の体験の集約 
 等について委員との間で質疑応答があった。

【今後の討議に向けての主な論点】
○委員がそれぞれの専門分野の観点等から作成した論点メモをもとに、座長が作成した「今後の討議に向けての主な論点」について討議が行われた。

○主な意見は以下のとおり。
・検討の対象に関して、流域の規模や重要度などの特性に応じて議論してはどうか。
・対策としてすぐにできるものは、すぐにでも取り組むという提案があってもよいのではないか。そのようなものは、今後の検証の論点からはずしてもよいのではないか。
・技術的信頼性や実現可能性に差がある個々の治水対策を並べて評価する方策の確立を考えるべきではないか。
・流域全体のソフト対策も含めて、時間的、財政的な見地を入れながら検証すべきではないか。
・ダム事業を中止した場合に、河川局だけでなく、国土交通省の関係部局や関係省庁と連携して対応することが重要ではないか。
・治水対策を議論するためには住民合意、社会合意を図っていく必要がある。そのためには、技術的な専門用語をわかりやすく表現するとともに、どのくらいの雨が降り、どこの地域にどのような被害が発生するのかということをできる限りわかりやすく示していく必要があるのではないか。
・これまで提案されてきている治水対策が、十分に進んでこなかった理由などについて、検証が必要ではないか。

【その他】
○今後のスケジュールについて、次回は「委員からの発表」を行うこととなった。

◇第三幕第四場
 2010年2月8、第四回有識者会議が開催され、有識者会議の委員より各専門分野についての報告がありました。宇野尚雄委員、鈴木雅一委員、田中淳委員、辻元哲郎委員による配布資料などがアップされています。

http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/y2010e59a80ccdc9e4f1de84753fe2bc18f9dc64af9f21.html