群馬県議会では八ッ場ダムについて審議を深めるとの理由で八ッ場ダム対策特別委員会が設置されることになりました。
12月11日に開催された第一回特別委員会では、多数派の自民党の要望により、八ッ場ダム推進派の御用学者らの意見聴取に殆どの時間がさかれました。群馬県議会の議会運営委員会では、特別委員会に付託された案件は常任委員会の審議対象からは外れる、との委員長判断が下され、八ッ場ダムに関する審議は特別委員会の設置により、むしろ封じられる方向で動いています。
八ッ場ダム見直し派の八ッ場ダムを考える群馬県議会議員の会では今春、八ッ場ダム推進議連に公開討論会を申し入れましたが、いまだに返答はありません。
◇八ッ場ダム対策特別委員会 腰塚誠委員長報告(平成21年12月15日)
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=87883
八ッ場ダム対策特別委員会の審査経過についてご報告申し上げます。
閉会中の11月17日に行われた委員会では、執行部から八ッ場ダム事業の進ちょく状況、要望書の提出等、これまでの取り組みについて説明を受けた後、質疑が行われました。
まず、10月27日に前橋市で前原国土交通大臣が1都5県知事と懇談を持ち、八ッ場ダムの必要性について予断を持たず再検証を行うとの考えを明らかにしたことを踏まえて、再検証に係わる国土交通省からの情報提供やスケジュール提示の有無の質疑がなされました。
また、再検証については期限を切って示すよう委員会として要望すべきではないか、本委員会の治水・利水の議論は国の再検証の結果を受けてから進めるべきではないかなど意見が述べられました。
続いて、八ッ場ダム事業の再検証に対する1都5県知事の緊急申し入れのうち、「専門家による有識者会議を行う場合、その人選に1都5県知事の意向を反映させること」に関して、その「意向」とは何か、考え方が質されました。
また、付け替え道路や付け替え鉄道の本体工事との関連、全体事業費に占める生活再建事業費の割合、来年度の事業執行見込みが質疑されました。
その他、10月9日に前原大臣がダム事業の進め方などに関するコメントを発表したことに関連して、吾妻川上流総合開発事業の次年度予算の見通し及び県の対応が質疑されました。
質疑終了後に行った、今後の委員会運営の協議では、ダムの治水効果に関して大学教授など専門家等を招聘し、意見を聞くことを決定いたしました。
12月11日に開催された専門家等による意見聴取では、関東学院大学宮村忠教授から河川工学の専門家として、治水面からみた八ッ場ダムの必要性に関する意見を伺ったほか、館林市長からは、五県連合利根川上流改修促進期成同盟会長の立場として、また、江戸川区土木部長は利根川下流域自治体の立場から、さらに、加須市水防団元副団長は水防活動の実体験の視点から、それぞれ意見聴取を行いました。
また、同日行った委員会では、利水に関しても、専門家等の意見を聞く機会を設けてはどうかとの提案があり、協議した結果、利水に関わる専門家等を招聘し、意見を聞くことを決定したほか、委員からダム建設に慎重な立場の専門家等からも意見も聞くべきはないかとの意見が述べられ、次回委員会において協議することを決定いたしました。
なお、閉会中の特定事件につきましては、別途議長あて申し出ておきました。
以上、申し上げて委員長報告といたします。
◆2009年12月11日 毎日新聞群馬版より転載
ー八ッ場ダム・流転の行方:参考人が中止批判 治水面で意見聴取--県会特別委 /群馬ー
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20091212ddlk10010204000c.html
県議会の「八ッ場ダム対策特別委員会」は11日、第2回会合を開き、有識者や下流域の関係者らに治水面で意見を聞いた。
参考人として出席したのは▽関東学院大の宮村忠教授(河川工学)▽東京都江戸川区の土屋信行土木部長▽埼玉県加須市水防団の野中信男元副団長▽館林市の安楽岡一雄市長--の4人。土屋氏は「八ッ場ダム下流域の治水は、ダム建設を前提に考えられている」と訴え、安楽岡氏は「治水や利水に対する説明や根拠がない限り、中止には絶対に応じられない」と、政府の建設中止方針を批判した。
同委は25日、利水面で虫明功臣東京大学名誉教授や藤岡市の新井利明市長らを招致し、意見を聞く。
一方、ダム建設に慎重なリベラル群馬の委員から、参考人の人選がいずれも建設推進派だったとして「多様な意見を聞くべきだ」との意見が出たため、次回以降は推進派以外の有識者も選ぶことにした。【奥山はるな】
2009年12月12日 東京新聞群馬版より転載
ー八ッ場ダム 治水面で必要性主張 県議会特別委 下流域の自治体などー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20091212/CK2009121202000135.html
八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設中止問題を集中的に議論する県議会の「八ッ場ダム対策特別委員会」は十一日、治水面から同ダム建設の是非を検証するための意見聴取を行った。ダム下流域の自治体関係者や河川工学の専門家らが出席し、予測困難な水害の発生に備える「危機管理」の観点から、ダムの必要性を強く訴えた。
東京都江戸川区の土屋信行土木部長は、八ッ場ダム建設の根拠となった一九四七年のカスリーン台風と同規模の水害が起きた場合の被害額が三十四兆円に上るとの試算を提示した。
さらに、同ダムを建設しない場合、利根川流域で必要となる堤防工事などの河川改修に二兆五百億円もの巨額な費用がかかるとも主張。「未来に起こりうる水害の可能性を否定できない限り、非常事態に備えることが行政の責任」として、ダム建設による洪水調節機能の強化が必要との考えを示した。
河川工学に詳しい関東学院大の宮村忠教授も「流域面積の広い利根川の水流を制御し水害を防ぐには、八ッ場ダム建設を含むあらゆる手段を否定するべきではない」と強調。前原誠司国土交通相が、コンクリート製のダムに代わる治水の手法として主張する“緑のダム”について「森林の保水力が実体的に証明された事例はない。データがなければ、治水効果の有無はどうにでも説明がつく」と否定的な見解を示した。
次回の特別委は二十五日に開かれ、利水面で八ッ場ダムの是非を判断するための意見聴取を行う。 (中根政人)
◆2009年12月19日 関口茂樹群馬県議(八ッ場ダムを考える1都5県議員の会代表世話人)のブログ↓
http://sekiguchi.blogzine.jp/diary/2009/12/post_1363.html
「八ッ場ダム対策特別委員会」