八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場生活再建をテーマに高崎で緊急集会

 八ッ場あしたの会、議員の会主催による高崎での緊急集会に関する記事を転載します。

◆2009年12月15日 朝日新聞群馬版より転載
ー八ツ場シンポ 生活再建へ専門家提言ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000600912150001

 八ツ場ダムの建設中止問題を受け、中止後の地元の生活再建の課題などを考える集会が13日、高崎市内で開かれた。まちづくりや自治体財政の専門家らが、家屋などの建築費用への助成や国有地の有効活用を提言したり、ダムが出来ても出来なくても町の財政が危ぶまれることを指摘したりした。

 ダム見直しを訴えてきた市民団体「八ツ場あしたの会」と「八ツ場ダムを考える1都5県議会議員の会」が開き、約250人が参加した。

 ●現状の生活再建計画

 あしたの会の嶋津暉之さんは、1992年の用地補償調査の調印の際、94年度には代替地の造成工事に着手して97年度後半には移転の準備が始まるよう整備を進めると国が約束していたと指摘。しかし今年9月末時点で代替地への移転は17%で、造成はいまだ終わらず、坪約11万~17万円という高い分譲価格が町外移転を促し、急速な人口減をもたらしたと説明した。

 さらにダム周辺の環境整備のため下流都県が拠出する地域振興策についても、当初249億円とされた事業費が178億円に減額▽観光施設などの維持管理費として使えない▽県公社の運営だったはずが株式会社の設立に――といった地元に「自己責任」を求めるプランに変質している現状を紹介した。

 ●中止後の検討課題

 街づくりプランナーの西田穣さんは「ダム中止後の地域像は住民が決めるべきで、国はその判断材料や支援の枠組みを提示する必要がある」と前置きした。

 その上で、必要不可欠な事業や自然回復事業などに計画を見直す▽買収され国有地となった土地は、旧地権者への払い下げのルール作りや計画的な利用方法を考える▽未造成の移転代替地は盛り土で造成しているため安全性に関する情報を開示▽建物の新築・改築や荒廃した農地や山林の再生などへの全額または一部の補助――といった検討課題を挙げた。

 都市計画コンサルタントの司波寛さんは、日本は人口減少と経済の縮小で、既存施設の維持管理さえ難しく、町をコンパクトにして必要な施設を大事に使う暮らし方が求められると述べ、「八ツ場の再生は全国のモデルになる」と話した。

 ●町財政の今後の展望

 長野原町の財政状況について、NPO多摩住民自治研究所の大和田一紘理事長は「無理に肥満にさせられた」と述べた。本来は35億~40億円程度の財政規模のはずが、ダム事業が本格化した93年以降はダム関連で下流都県が拠出した負担金などで70億~80億円規模となった。

 ダムが完成しても、国有資産等所在市町村交付金が入る一方で地方交付税が減ることで相殺され、プラス効果がさほどでもないと説明。完成しても中止しても、ダム事業が終わると下流都県の負担金が止まり、小中学校や公共下水道など身の丈に合わない施設の維持管理費の増大などによって「膨大な支出を抱えることになる」と話した。

 解決のためには、国による財政的援助を含めた特別立法の早期制定などが必要になると訴えた。

 このほか、国内最大の徳山ダム(岐阜県)など、全国のダム予定地で暮らす人々を追い続けてきた映画監督・写真家の大西暢夫さんが「ダム御殿が建った20年後に訪ねると、恩恵を受けたはずの村人が『友達がいなくなり、家に鍵をかける生活になった』と悔やんでいた」と紹介した。