群馬県の大澤知事の仲介により、地元住民と国交大臣との意見交換会の可能性が出てきました。
先が見えない状況の中で、地元住民は不安と焦燥感が募っており、前原大臣と面談し、窮状を訴えたいという切実な声があるといわれます。しかしダム受け入れ以後、地元ではダムを推進するための住民組織が外部のダム推進勢力をバックに実権を握ってきた経緯があり、国交大臣と住民との意見交換会でさえ、政争の具として利用される状況にあります。
群馬県知事が仲介に乗り出したのは、ダム関連事業の予算付けを地元住民を利用して国交大臣に要望するため、という見方もあります。国土交通省はダム本体工事以外の関連事業をすべて「生活関連事業」と位置付けており、ダム推進派は前原大臣がこれらの事業の予算付けに応じなければ、地元住民の生活再建をないがしろにしていると批判する構えです。
「生活関連事業」に含まれる湖面一号橋については、こちらのページに詳細の説明を載せています。↓
https://yamba-net.org/wp/modules/genchi/index.php?content_id=17
◆2009年12月16日 毎日新聞群馬版より転載
ー八ッ場ダム・流転の行方:大澤知事、国交相会談実現に期待感 /群馬ー
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20091216ddlk10010105000c.html
◇「地元、思い伝える時期」
八ッ場ダムの建設中止問題で、地元住民が前原誠司国土交通相との会談に応じるかを17日に協議することについて、大澤正明知事は15日、記者団に「地元の方も自分の思いをしっかり伝える時期だ」と述べ、会談の実現に期待感を示した。
大澤知事は10日に国交省で前原国交相と会談したことを明らかにしたうえで、国交相から「ぜひ地元と話し合いたい」と仲介の要請を受けたと説明。県は副知事らが11日に長野原町などに国交相の意向を伝え、17日の協議につながった。
また、大澤知事は国交省の有識者会議がダムの再検証を始めたことに言及し「(建設中止を)白紙と言ってるのと同じではないか」と評価。「地元は今でも建設中止撤回に強い意思を持っているが(有識者会議の結論は)非常に先延ばしになる可能性がある。生活再建をしっかりするには話し合う必要がある」と話した。【奥山はるな】
◆2009年12月16日 読売新聞群馬版より転載
ー八ッ場ダム 対話受け入れへ期待感 知事「生活再建のため必要」ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20091216-OYT8T00127.htm
大沢知事は15日、八ッ場ダム(長野原町)問題を巡って前原国土交通相が地元住民に話し合いを申し入れていることについて、「ぜひ年内に地元と大臣が話し合えるようにしたい」と述べ、17日の地元住民による協議で、話し合い受け入れが決まることへの期待感を示した。県議会で記者団の質問に答えた。
前原国交相がダム事業の新基準を作るために設置した有識者会議の結論は、来年夏以降に出される。それを踏まえ、大沢知事は「先延ばしになる可能性がある中で、生活再建をしっかりしていくために話し合う必要がある」と述べ、住民の希望を国に伝える場が必要との認識を示した。
また、大沢知事は前原国交相と10日に会談したことを明らかにした。大沢知事によると、前原国交相から「予断を持たず虚心坦懐(たんかい)に話し合う」との発言があり、大沢知事はダム推進の立場を改めて伝えて、「生活再建をしっかり仕上げてもらいたい」と要望したという。
◆2009年12月17日 共同通信ニュースより転載
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121701000935.html
ー前原氏と意見交換会開催へ 八ツ場ダムの地元住民ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)の水没予定地の住民でつくる水没関係5地区連合対策委員会は17日夜に会合を開き、前原誠司国土交通相が求めている意見交換会開催に応じることを決めた。前原氏と地元住民との意見交換会開催は初めて。
前原氏は同日夜、記者団に「ありがたい」と述べた上で、日程については住民側に「お任せしたい」としており、住民側が希望する来年1月24日開催が有力だ。
9月の国交相就任直後のダム中止明言に反発し住民は意見交換会を拒否してきたが、やや軟化した形。ただ建設を求める地元の立場に変化はなく、前原氏が理解を得るめどは立っていない。
会合終了後に高山欣也町長は「時間的余裕がほしい。(国の)来年度予算を見て勉強し何を話すか決めたい」と説明。「生活再建事業の予算がもし削られればどうなるかわからない」と述べ、来年度の政府予算次第では再び意見交換会を拒否する可能性を示唆した。
また高山町長は、前原氏が17日午前の会見で中止を前提に地元と生活再建の議論をする意向を示したことに「結局中止をうたっている。話の腰を折られた」と不快感を示した。
◆2009年12月19日 読売新聞群馬版より転載
ー八ッ場住民対話受け入れを回答ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20091218-OYT8T01446.htm
「予算確認の上」
長野原町の八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は18日、前原国土交通相からの意見交換会開催の申し入れに対し、「来年度予算に計上された内容を確認した上で、1月24日を軸に受けたい」とする回答書を、県を通じて国交省に届けた。
回答書では、意見交換受け入れを決めた17日の役員会の結論をふまえ、民主党内から不要論が出ている仮称・湖面1号橋を含む生活再建関連予算が来年度政府予算案に計上されたことを確認した上で、意見交換を受け入れる考えを明記。
さらに、前原国交相が17日の閣議後会見で中止の場合の生活再建策を議論したい考えを示したのに対し、「ダム湖を前提に代替地での生活再建を考えているので、『仮にダムが中止になった場合』の生活再建について議論することはできない」とした。
◆2009年12月19日 毎日新聞群馬版より転載
ー八ッ場ダム・流転の行方:湖面1号橋の入札中止要望 民主県連、国交省に /群馬ー
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20091219ddlk10010105000c.html
◇長野原町長が抗議
八ッ場ダム建設計画に伴い、長野原町川原畑、川原湯両地区の代替地を結ぶ「湖面1号橋」について、民主党県連が17日、工事入札の中止を国土交通省に要望していたことが分かった。高山欣也・長野原町長は18日、同県連に「八ッ場ダムの生活再建に必要な事業」と抗議、前原誠司国交相に、要望を受け入れないよう要請した。
同県連の中島政希会長代行は毎日新聞の取材に「ダムを中止した場合、未着工の橋梁(きょうりょう)整備は必要なく、景観も損ねる。長野原町や住民から『橋を造ってほしい』との陳情は受けていない」と話した。
これに対し、高山町長は18日、同県連に「地元住民や町の意見も聞かず、入札に反対する団体の意見のみで国交省に要望したことは、とってはならない行動」と抗議文を出した。
一方、地元住民で作る「八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会」(萩原昭朗委員長)は18日、県を通じ前原国交相に、来年1月24日を軸に意見交換会を受け入れることを正式に回答。回答書では「地元住民はダム本体工事以外の湖面橋建設をはじめ、すべてが生活再建事業だと考える」と強調し、「10年度予算に計上された内容を確認のうえ、意見交換会を受ける」とした。ダムが中止の場合の生活再建については「議論できない」とも主張した。【宍戸護、奥山はるな】
◆2009年12月19日 朝日新聞群馬版より転載
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000580912190001
ー八ツ場対話 年明けに 予算巡り駆け引き 地元「国交省誠意みて」
建設中止で揺れる八ツ場ダムの地元・長野原町の水没予定地区の住民らが、これまで3度拒絶してきた前原誠司国土交通相との対話を受け入れる方針を決めた。18日、県を通じて国交省に伝えられた。しかし、国交相側が求めた年内の意見交換会開催ではなく、年明けに先送りする形に。予算編成期に差し掛かり、地元側は対話と引き換えに生活再建事業関連の予算の「満額回答」を求めた。
「前原大臣は、まだ40代だ。ダム問題で57年も地元が苦しんできた歴史を知らない。そんな人がダム不要だと、なぜ言えるのか」
ダム湖を活用した観光振興を長年めざしてきた川原湯温泉の旅館主が、かみついた。
17日夜、JR川原湯温泉駅前の集会施設で開かれた水没関係5地区連合対策委員会の会合には、5地区の委員約35人が出席。出席者には、意見交換会の20日開催を打診する前原国交相名の文書が配られた。会合は非公開だったが、約2時間にわたる白熱した議論は、報道陣が控える階下にも響いた。
出席者によると、大沢正明知事が年内の意見交換会開催を期待したこともあり、冒頭から対話受け入れ容認の意見があったという。「何度も意見交換会を拒否したら地元が批判を受ける」といった趣旨の意見もあり、対話受け入れの方向で話は進んだ。
しかし、対話の時期をめぐって意見は二分された。
「国の予算案編成の前に大臣と会い、心証をよくしたほうが、生活再建事業の予算をつけてくれるのではないか」。そんな趣旨で、年内対話を支持する意見が出たことに対し、温泉旅館の経営者らから「出てきた予算案をみて、大臣の誠意をみてから対話しても遅くない」などという異論が出た。観光振興を必要とする地区と、そうでない地区で、温度差があったという。
最終的に、連合対策委の萩原昭朗委員長(78)が議論を引き取り、予算案編成後の1月24日の対話に向けて調整することを決めた。
樋田洋二・川原湯地区八ツ場ダム対策委員長(62)は「20日に会って住民が意見を言ったところで、来年度予算には反映されないだろう。我々も勉強して、主張を統一させていきたい」。
別の出席者は「住民の思いを無視して、いきなりダム中止を表明した大臣を、地元は信用していない。地元から頭を下げて、予算をつけてもらう形にする必要はない。予算案をみて、大臣が(生活再建はしっかりやるなどと)言っていることが本当か、判断するということだ」と話した。
高山欣也町長は「生活再建関連の予算が切られたら、1月24日も開催できるかどうかわからない」と述べた。
湖面1号橋「踏み絵」 地元 建設費盛り込み要望
八ツ場ダム完成後に、ダム湖で隔たる川原湯・川原畑両地区の移転代替地を結ぶ「湖面1号橋」の建設費が来年度予算に計上されるかどうかが対話実現のための「踏み絵」に位置づけられている。
18日午後6時すぎ、町と国の仲介役の茂原璋男副知事が東京・霞が関の国交省を訪れ、「来年度予算に計上された内容を確認した上で、年明けの1月24日を軸に意見交換会を受けたい」との連合対策委の回答文を三日月大造政務官に手渡した。併せて、長野原町から民主党県連に対する抗議文と、前原国交相への要請文も渡した。
抗議文は、17日に民主党県連が国交省に1号橋の工事入札の中止を要望したことに対し、「生活再建に資する重要な事業」として「地元の意見も聞かずに要望したことは、地域主権を掲げる民主党としてはとってはならない行動」などとした。要請文では、この要望を国交相が受け入れないよう求めた。
1号橋は現在、4本の橋脚のうち1本が発注済みで、2本について県が来年2月の入札を公告している。事業費は約52億円で大半が国費。民主党の一部やダム反対派から
「ダムが中止になれば不必要な事業。造れば景観が悪化する」と不要論が出ている。
民主党県連の中島政希会長代行によると、「県連から国交省に地元の要望を伝える機会があるので、何でも言ってください」と県東京事務所に伝えたが、「民主党を通じてお願いすることは何もない」と返事があったという。中島氏は「地元の要望を聞いていないというが、長野原町も東吾妻町も何も言ってこない。地元の声を無視したわけではない」と述べた。
◆2009年12月23日 読売新聞群馬版より転載
ー湖面1号橋予算 国交相「3月末までに決定」ー
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20091222-OYT8T01559.htm
住民との対話実現に影響も
前原国土交通相は22日の閣議後記者会見で、八ッ場ダム(長野原町)関連事業の仮称・湖面1号橋の予算について、「(住民との意見交換が予定される)1月24日をめどに決定するのではなく、3月末の実施計画決定時までに具体的に決定する」と述べ、年末の政府予算案決定の段階では明示しない考えを示した。地元住民は、前原国交相との意見交換の受け入れを決めた際、1号橋を含む生活再建事業の予算計上を条件に掲げ、年末の政府予算案を注視する構えを見せており、対話実現に影響する可能性もある。
前原国交相は「個別のダムについての具体的内容は実施計画決定時までにその姿を示す」と述べた。さらに、本体工事中止後も継続することを表明した生活再建関連事業について、「公共事業について全国的に抑制傾向にある中、できる事業とできない事業がある」として、個別事業の内容次第で中止もあり得るとの考えを示した。
1号橋は、水没予定地の住民が移転する代替地2か所を結ぶ県道が通る。総事業費約52億円で2014年の完成を予定。今月1日、橋脚4本のうち2本の工事入札を公告した。事業を行うのは県だが、費用は国のダム事業費から拠出されている。
一方で、県関係の民主党国会議員は先月、生活再建事業について、同橋の凍結を念頭に「未着工の橋梁(きょうりょう)の建設凍結など柔軟な見直しを」と要望。同党県連も今月、「ダム湖ができなければ橋は不要」(同党衆院議員)として、建設凍結を国交省に求めた。
こうした動きに対して、高山欣也・長野原町長は18日、「断固抗議すると共に工事入札中止の要望を受け入れないよう要請する」とした文書を前原国交相に送っており、1号橋の扱いが今後の焦点に浮上している。